トルコの産業界では、シリアのアサド政権の崩壊により、トルコ国内のシリア人難民の帰還の行方を注視する動きが出ている。シリアで期待される新政権の成立は、両国間の自由貿易協定(FTA、2007年発効、2011年一時停止)の一時停止により14年近く停滞してきた(2024年12月19日記事参照)両国のビジネス関係を回復させることだけでなく、長期にわたりトルコに廉価な労働力を提供してきたシリア人の帰国が、トルコの労働市場に悪影響を与えるという懸念もある。ただ、トルコで生活基盤を築き、帰国を望まないシリア人も多く、難民問題の行方は不透明だ。 トルコ政府によると、シリア内戦によってトルコに流入したシリア難民は約370万人(注)に達する。その対応を巡っては、当初の同情から負担へと変わり、トルコ国民の間では排斥の動きすらみられるようになっていた。他方、トルコにくすぶる高インフレと最低賃金上昇による人件費コスト