【法人節税まとめ】中小企業におすすめの節税対策34選
節税対策にはさまざまな方法がありますが、手段を誤るとかえって税負担を増やしてしまうことになってしまいます。また、節税のしすぎは資金繰りの悪化を招くことにもつながります。
大切なのは、その企業にあった正しい節税対策を無理なく行うことです。リスクを犯さなくても、漏れなく経費を計上したり、各種税制を利用したりするだけで十分な節税効果が得られる場合もあります。この記事では、中小企業におすすめな節税対策をメインに紹介します。
目次
節税対策の基礎知識
具体的な節税対策の前に、まずは知っておくべき基本的な知識について解説します。
経費になるもの・ならないもの
基本的に、事業のために支出した費用はすべて経費になります。売上獲得のために直接必要になった費用以外に、事業を維持管理するための費用も対象です。
当然、社長や従業員の個人的支出は経費として認められませんが、ケースによって経費にできるか迷うものもあるでしょう。また、会計上で経費になっても、税務上は経費にならないもの(損金不算入)もあるので、迷った場合は税理士に確認しましょう。
領収書がなくても経費にできる
領収書を紛失してしまったり、もらい忘れてしまったりというケースがあるかと思いますが、領収書がなくても経費にすることが可能な場合もあります。
法人税法では、領収書などの証憑書類(帳簿書類)は7年間保存しなければならないとされていますが、もし失くしても、クレジットカードの明細やレシートなどの「日付、支払先、支払金額、支払内容」がわかるものであれば、領収書の代わりとすることができます。
「中小法人」と「中小企業者」の違い
「中小法人」や「中小企業者」という言葉は、どちらも耳にする機会が多いと思いますが、税法上では大きな違いがあります。これにより、税制優遇の適用の有無が変わるため、ふたつの違いを把握しておきましょう。
まず、中小法人は「法人税法66条・104条」に以下のように定義されています。
- 資本金の額が1億円以下である
- 資本金が5億円以上の法人(大法人)による完全支配関係がない
対して、中小企業者は「租税特別措置法42条の4」に以下のように定義されています。
- 資本金または出資金の額が1億円以下である
- 中小企業者以外の法人(大規模法人)に発行済株式の2分の1以上を直接所有されていない、または、複数の大規模法人に発行株式の3分の2以上が所有されていない
- 資本金または出資を有しない法人のうち、常時使用する従業員の数が1000人以下
そして、それぞれの優遇措置には以下のようなものがあります。
▼中小法人
└法人税の軽減税率
└特定同族会社の留保金課税の適用除外
└貸倒引当金の繰入
└接待交際費の損金算入
└欠損金の繰越控除
└欠損金の繰戻し還付 など
▼中小企業者
└少額減価償却資産の特例
└中小企業投資促進税制
└中小企業経営強化税制
└所得拡大促進税制
└オフィス減税(雇用促進税制) など
それぞれの定義について、制度によって多少異なる部分はありますので、優遇制度を利用する際は適用要件をよく確認してください。
見落としがちな経費の確認
節税において、まず第一にすべきなのは経費の計上漏れを無くすことです。
単純な会計ソフトなどへの入力漏れから、計上できるものを計上していないなど、理由はさまざまですが、意外とこのチェックを忘れている方が多いのです。
計上が漏れやすい項目としては、以下のような費用が挙げられます。
1.開業費・創立費の償却
会社を設立するためにかかった創立費や、事業開始までにかかった開業費など、会社を設立する前に支出したものも経費として計上することが可能です。
基本的には設立初年度の費用として計上しますが、繰延資産として計上することもできます。繰延資産は任意で償却できるので、初年度はそのまま資産として残しておき、黒字になったときに償却(費用化)することで節税につなげることができます。
2.接待交際費・会議費
取引先との会食以外にも、慶弔禍福に伴うお祝いや香典、お中元やお歳暮などの経費も「接待交際費」として計上することが可能です。何気なく行った取引先との食事代や、お土産代などがあれば計上できる可能性があるので、税理士に確認してみましょう。
ただし、交際費は以下のとおり計上できる上限金額が定められています。
- 資本金1億円超の大企業:「飲食費の50%」まで
- 資本金1億円以下の中小法人:「飲食費の50%」または「年間800万円以下」まで
そのため、打ち合わせの場合は「会議費」、従業員との飲み会は「福利厚生費」とするなど、適切な項目を使って計上するようにしましょう。
3.旅費交通費
出張や研修旅行などの移動費は、「旅費交通費」として計上します。このとき、現地で使ったタクシー代や駐車場代、車を利用した場合は高速代や有料道路代も忘れずに計上しましょう。
なお、交通系電子マネーにチャージしてから精算した場合は、一度「仮払金」として計上するなどの処理が必要になるので注意してください。
また、この際に発生した食費などは、旅費交通費に含めずに、それぞれ会議費や福利厚生費などの適切な項目で処理をしましょう。
4.未払金・未払費用
支払い予定が翌期になる費用でも、期中に債務が確定した費用であれば「未払金」や「未払費用」として計上することができます。
たとえば保険料や水道光熱費など、使用期間が決算日をまたいでいる場合には、決算日までの分を日割りにして未払計上することができます。
ただし、計上時期をずらしているだけなので、根本的な節税にはつながりません。予想外に利益がでてしまって、節税対策が間に合わないなどのケースでは検討しても良いでしょう。
損金を増やして課税所得を減らす
損金が増えれば課税対象となる所得が減るため、その分の税負担も減ります。経費を増やせば良いだけなので簡単ですが、キャッシュフローを悪化させる可能性があるということを理解し、過剰にやりすぎないようにしましょう。
以下で紹介する方法の中には、損金算入が認められるために条件が定められているものもあるため、事前に税理士と相談しましょう。
5.消耗品など備品のまとめ買い
消耗品のうち、期末に残った未使用の分は資産計上しなければなりませんが、使用可能期間が1年未満で取得価額が10万円未満の消耗品は、購入年度の費用として認められることになっています。
そこで、決算前に当面必要となる数量をまとめて購入しておくことで、支出のタイミングはさほど変わらない一方で、期中の利益を圧縮することができます。
決算対策として通常の購入量よりも多く買った場合は、認められない場合がありますので注意しましょう。
6.社用車の購入・リース
社用車を購入すると節税になると聞いたことがある方も多いかと思います。購入するなら新車と考える人も多いかもしれませんが、節税の観点で考えると新車よりも4年落ちの中古車がおすすめです。
また、社用車を保有する方法としてリースもあります。リースすることで、資金計画が立てやすいというメリットがありますが、初年度に経費となるのは1年分のリース料のみとなります。1回に節税できる金額は少なくなりますが、タイミングによっては効果的な節税対策となるでしょう。
7.福利厚生制度の導入
福利厚生制度で使った費用は、「福利厚生費」として計上することができます。従業員は経済的利益を非課税で得ることができ、企業は社会保険料の負担が少なくなるというメリットがあります。
ただし、福利厚生費として認められるにはいくつかの要件があります。特に社宅や社員旅行については細かい規定があるので、判断が難しい場合は税理士に相談しましょう。
具体的な例として、以下のような福利厚生制度があります。
従業員や役員のための社宅
社宅を用意した場合、適正な家賃を受け取らないと家賃相当額を現物支給したとみなされてしまうので注意が必要です。
住宅手当としては「家賃補助」もありますが、この場合は給与とみなされて社会保険料の負担が発生するなどの違いがあるため、どちらが良いかはよく検討して決めましょう。
忘年会や新年会などの社内行事
忘年会や新年会などの社内行事にかかった費用について、一部の社員のみが対象のものや、常識の範囲内の金額でない場合は認められません。
社員旅行や慰安旅行
社員旅行や慰安旅行は、たとえ支払いが翌期になっても、支払いが確定した日の年度分の費用として処理することができます。そのため、決算前の節税対策としても効果的です。
社員食堂やまかないなど食事手当
食事手当が福利厚生費として認められるためには、社員は代金の半分以上を負担しており、食事代から負担額を差し引いた額が3,500円(税抜)以下でなければなりません。残業や宿日直時の食事代に関してはこのような規定に関わらず、全額が福利厚生費として認められます。
通勤手当や出張手当など各種手当て
原則として、手当は所得税の課税対象となりますが、通勤手当や出張手当など課税対象とならない手当もあります。ただし、出張手当は出張旅費規程作成が必要になったりと、手当によって条件が異なりますのでよく確認するようにしましょう。
健康診断や人間ドック
健康診断や人間ドックなどは、全社員を対象とすること、費用は会社が負担し直接診療機関に支払うことといった要件があります。また、費用は常識の範囲内の金額で、診療内容も年齢によって規定していなければなりません。
役員や従業員の冠婚葬祭費用
ご祝儀や香典などは、役員や従業員に対するものであれば福利厚生費として計上できます。その際は、「慶弔費支給規定」などを作成するようにしましょう。取引先など会社の関係先への冠婚葬祭費用は交際費となるので注意してください。
ただし、あまりに高額な費用は贈与や寄附とみなされてしまいます。
退職金の支給
退職金制度は福利厚生のひとつで、支給した退職金は全額損金算入可能です。また、退職金には退職所得控除があり社会保険料も対象外なので、給料として支給するよりも受け取った本人の負担は少なく済みます。
損金算入時期については、「支給が確定した日」か「実際に支払った日」の属する年度のどちらか選べるため、タイミングによっては決算前の節税対策にもなります。
もし、退職金の用意が困難なときは、共済制度を利用して退職金を用意することもできます。詳細は「共済制度に加入する」を参照してください。
功績者の葬儀費用(社葬費用)
社葬費用は、社葬を行うことが社会通念上相当であり、必要と認められた費用であれば福利厚生費とすることができます。
遺族が役員の場合は役員賞与、遺族が社外の関係者だった場合は寄附金として処理することになります。
葬儀場や祭壇等の費用は認められますが、密葬の費用や仏具、仏壇の費用等は基本的に遺族が負担する費用なので、ほとんどの場合は認められません。
8.研修旅行や視察旅行
研修旅行や視察旅行は、業務上必要な知識の獲得や調査を目的としている旅行なので、かかった費用は「旅費交通費」として計上することができます。
ただし、旅行中の食事代は旅費交通費には含まれず、福利厚生費などとして計上することになります。また、取引先との接待があった場合は接待交際費として計上します。
9.役員への給与(役員報酬)
役員への給与は原則損金不算入ですが、「定額同額給与」として支給するなどの一定の条件を満たすことで損金算入が可能になります。
役員報酬の変更は、事業年度開始の日から3か月以内であれば認められるので、期初に売上の向上が予想される場合は、増額を検討してもよいでしょう。
ただし役員報酬が過大すぎると、個人の税負担が増えてしまうのはもちろん、税務調査で指摘される可能性があります。支給金額を決める際は、法人の利益と個人の税負担のバランスなどを考慮しましょう。
4か月目以降の金額変更は、「臨時改定事由」または「業績悪化改定事由」に該当する場合にのみ認められます。
10.分掌変更での役員退職金
分掌変更とは、代表取締役や取締役が非常勤取締役や監査役になり、引き続き在職することをいいます。実質的に退職したと同様の事情があると認められれば、分掌変更のタイミングで退職金を支給することが可能です。
ただし、役員に対する退職金の場合、不当に高額と認められる金額については損金不算入となるため、金額の決め方には注意が必要です。
11.人件費や設備などへの投資
備品などを購入する方法も良いですが、利益を人件費や設備投資に回すという選択肢もあります。さらに、一定の条件を満たせば税額控除の適用が受けられる可能性もあり、節税対策をしつつ将来の売上に繋げることができます。
たとえば、従業員の給料をアップすれば「所得拡大促進税制」が、設備投資をした場合は「中小企業投資促進税制」の適用が受けられます。
中小企業にはこのような優遇制度が多数設けられているので、利益を何に使うのかをよく考えましょう。詳細は「優遇制度(特別償却・特別税額控除)を利用」で解説します。
12.短期前払費用(年払い)
効果が1年以内の費用の支払いであれば、「短期前払費用」として、その全額を計上した日の属する年度の損金にすることができます。
家賃や保険料、サーバー代など継続的な支払いを契約しているものが対象で、具体的には、決算前に元々月払いにしていたものを年払いに変更し、まとまった金額を計上することで節税に繋げるという方法です。
このとき、一度年払いにしてしまうと月払いに戻せなくなる可能性があることや、1回の支払い金額が増えるということに注意してください。
13.決算賞与の未払計上
決算賞与は原則として、賞与を支払った年度の損金として処理されますが、一定の要件を満たすことで「未払計上」が認められます。決算前に多額の損金を計上できるので、節税のみで考えると効果的な対策となります。
また、役員に対する賞与に関しては、そもそも損金不算入となっていますが、「事前確定届出給与に関する届出」をあらかじめ提出することで損金算入が認められます。ただし、役員賞与の場合は未払計上は認められていません。
14.企業版ふるさと納税
企業版ふるさと納税は、正式名称を「地方創生応援税制」といい、企業が各自治体に対して寄附を行う際に利用できる制度です。返礼品などはないため、個人のふるさと納税とは少し異なります。
寄附できる団体は、一定の条件を満たした地方版総合戦略を策定する地方公共団体で、節税効果は寄附金額の6割となっています。CSR活動をPRできるメリットがあるので、CSRに取り組んでいる企業にはおすすめです。
キャッシュアウトのない節税
節税対策といえば、上記のような方法を思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、キャッシュアウトの多い節税ばかりしていると、資金繰りが悪化してしまう可能性があるので、以下のような対策も積極的に取り入れましょう。
15.少額減価償却資産の特例
原則として、10万円を超える金額のものを購入する際は、資産計上してから減価償却して費用化する必要がありますが、青色申告者の場合は「少額減価償却資産の特例」を利用することができます。
少額減価償却資産の特例とは、10万円以上30万円未満の減価償却資産を一括で償却できる制度のことです。30万円未満の減価償却資産がある場合は、特例を適用できないか確認してみるとよいでしょう。
16.棚卸資産の評価替え
売上原価は期末の在庫によって変わります。そこで、棚卸資産を適切な方法で評価することで、売上原価が多くなり利益が圧縮できる可能性があります。つまり、棚卸しは節税のチャンスなのです。
また、値崩れしている商品や流行が過ぎてしまっているアパレル商品などがある場合は、評価損を計上しましょう。ただし、損金として認められるには厳しい条件があるので、税理士に確認してみましょう。
17.不良在庫を処分
棚卸資産については、評価の見直しだけでなく処分するという方法もあります。倉庫などに長期間売れ残ってしまっている不良在庫がある際には、放置せずに廃棄処分することで、でた損失を廃棄損として計上できます。また、保管にかかる不要なコストを減らすこともできます。
税務調査がなされた場合に、実際に廃棄されたことを証明する書類が必要になるので、ただ捨てるということはしないようにしましょう。
18.不要な固定資産(遊休資産)を処分
使わなくなって放置されている機械などの固定資産(遊休資産)がある場合は、放置せずに処分してしまいましょう。
廃棄する場合の損失は「固定資産廃棄損」として計上できます。もし廃棄費用が膨大ですぐには処分できない場合は、「有姿除却」という方法で、実際には処分せずに「固定資産除却損」を計上することができます。また、撤去にかかる費用も経費として計上することができます。
19.貸倒引当金・貸倒損失の計上
取引先の倒産などにより債権が焦げ付いてしまった場合は、「貸倒損失」として計上することができます。しかし、貸倒れかどうかの税務上の判定は、比較的基準が厳しくなっていますので慎重な判断が必要です。
また、実際に貸倒れる前でも、回収できなくなるリスクに備えて損失になりそうな金額を「貸倒引当金」として計上することができます。ただし、貸倒引当金が計上できるのは、資本金1億円以下の中小法人に限定されています。
発生しなかった損失については、翌期に「貸倒引当金戻入」として収入に計上する必要があるため、節税効果が見込めるのは1年目に限定されます。そのため、大きく利益がでた年や、売上が右肩上がりで伸びているときには有効となる方法と覚えておきましょう。
20.欠損金の繰越控除(赤字の繰越)
赤字から黒字に転じたときに、前年度以前の赤字を当期の黒字から控除できる制度があります。これを「欠損金の繰越控除」といい、赤字は10年間繰り越すことができます。
反対に、黒字から赤字になったときは「欠損金の繰戻し還付」という制度によって、黒字のときに納めた法人税の還付を受けることができます。これは、利益が減ってしまって資金繰りに窮する法人を救済するためのもので、適用は中小法人のみとなっています。
21.内金や手付金は前受金として計上
原則として、売上の計上時期は「商品の引き渡し」や「サービスの提供」を行った事業年度とされています。
そのため、もし事前に受け取っている分の代金を当期に「売上」として処理していたら、「前受金」として計上し直しましょう。そのままにしておくと、本来ならば翌期に課税される分が、当期に課税されてしまうので納税のタイミングを早めることになってしまいます。
共済制度に加入する
現在日本の中小企業の割合は99%を占めており、中小企業の成長は日本経済の成長にも繋がります。そのため、国は中小企業の経営を支援するために退職金制度や借入制度などの様々な制度を整えています。
22.中退共制度(中小企業退職金共済制度)
中退共制度は、退職金制度を設けることが難しい中小企業に対して作られた制度です。
この制度を利用して積立する場合の掛け金は、全額損金として計上することができるので、節税対策をしながら退職金制度を設けることができます。一方で、退職金の額を減額するのに手間がかかるなどのデメリットもありますので、導入前によく検討しましょう。
23.特退共制度(特定退職金共済制度)
特退共制度は、中退共とは運営主体が異なり、月々1000円から積み立てられるなどの特徴があります。中退共制度の補足的なイメージで特退共制度を併用すると、両方のメリットを受けられるためおすすめです。
24.経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)
経営セーフティ共済を利用すると、取引先が倒産してしまったときに、掛金に応じた一定の共済金を借り入れることができます。連鎖倒産のリスクヘッジだけでなく、掛金はすべて損金処理できるので一定の節税効果も期待できます。
優遇制度(特別償却・特別税額控除)を利用
「所得拡大促進税制」や「中小企業投資促進税制」などの特別償却や特別税額控除といった制度は、適用要件が複雑ですが、その分節税効果が大きいため積極的に活用することをおすすめします。
基本的に、中小企業者向けに時限措置として設けられている制度が多いため、利用は早めに検討しましょう。
25.雇用促進税制(地方拠点強化税制)
雇用促進税制は、新しく人を雇用した際に税制優遇が受けられる制度です。たとえば、1人採用するごとに最大90万円の税額控除を受けることができます。
雇用促進税制は、「同意雇用開発促進地域」または「地方拠点強化税制」に係るものがありますが、2018年度税制改正で同意雇用開発促進地域に係る措置が廃止されたので、改めて適用要件等を確認する必要があります。
26.所得拡大促進税制
所得拡大促進税制は、従業員の給与額を増やすことで税制優遇が受けられる制度です。節税効果が得られると同時に従業員の満足度も向上されることができます。
2018年度税制改正で、適用期間が2021年3月までに延長されたのと同時に、適用要件が緩和されました。
所得拡大促進税制が利用できるのは、中小企業者に限定されており、大企業の場合は「賃上げ・生産性向上のための税制」が適用できます。
27.中小企業投資促進税制
機械装置などの設備を取得した際は、「中小企業投資促進税制」により、取得価額の「7%の税額控除」または「30%の特別償却」が選択適用できます。
2019年6月時点の税制では、2021年3月31日までに対象の設備を取得して、指定事業の用に供した場合が対象となります。
28.中小企業経営強化税制
生産性や収益性が認められた設備等を取得した際は、「中小企業経営強化税制」の取得価額の「最大10%の税額控除」または「即時償却」が選択適用できます。
節税効果は中小企業投資促進税制よりも大きいですが、経営力向上計画の認可を受ける必要があるため、事前準備に手間がかかります。
2019年6月時点の税制では、2021年3月31日までに対象の設備を取得して、指定事業の用に供した場合が対象となります。
29.コネクテッド・インダストリーズ税制
企業が生産性向上のためにIoT投資をした場合、「情報連携投資促進税制」の取得価額の「3%の税額控除」または「30%の特別控除」が選択適用できます。
2019年6月時点の税制では、2021年3月31日までに対象の設備を取得して、指定事業の用に供した場合が対象となります。
30.研究開発税制
研究開発税制は、ものづくりやビッグデータなどの新サービスの開発をする企業対象に、研究費やサービス開発費用の一定割合が税額控除できる制度です。控除割合は6~14%で、2020年度3月31日までの時限措置として中小企業者のみ12~17%となっています。
他にもある節税テクニック
次からは、一般的にはあまり使われませんが、正しく行うことで効果的な節税につながる手法を紹介します。
31.子会社・分社化で節税
子会社の設立や分社化など複数の会社を持つことで、税務上のメリットが得られる場合があります。
たとえば、事業内容ごとに分社することで売上高が1000万円以下になれば、消費税の納税義務が免除になる場合があり、計上できる交際費の枠がその分増えることになります。
ただし、事業実態のない会社を作ってしまうと、税務調査で租税回避行為を指摘されることになるので、節税目的のみで複数の会社を持つのはやめましょう。
32.決算期(事業年度)の変更
決算月に予想以上の売上が見込める場合、決算期を変更するという方法があります。
決算期を前倒しにすれば、本来であれば期中の売上となるものが翌期の売上になるため、その分、課税される所得を減らすことができます。ただし、納税のタイミングを後ろにずらしているだけで、根本的な節税にはなっていません。また、決算期を前倒しにすれば納税の時期や支払いも前倒しにするということなので、事業計画などに影響が出ないよう十分に検討しましょう。
33.売上計上基準の見直し
売上計上のタイミングについては、原則として5つあるうちのひとつの基準が採用されます。自社の取引プロセスと使用する基準がマッチしていない場合、売上の計上基準を見直すことで、税負担を減らすことができる可能性があります。
ただし、この基準は継続して適用することを前提としているので、合理的な理由がない限りは変更が認められません。変更を希望する際は、適切であるという理由を明確に説明できるようにしましょう。
34.資本金を減額(減資)する
法人税法上、資本金の額は会社の規模を図る判断基準となっており、その額により異なる税制が適用されることになります。
まず、資本金が3,000万円以下の場合は中小企業投資促進税制(税額控除)が適用できるようになります。また、1億円以下の中小法人の場合は軽減税率が適用されるなど、資本金額によってさまざまな税制優遇が用意されています。
これらの優遇を受けるために減資を検討するのも良いですが、取引先などへの影響も考えながら慎重に検討しましょう。
節税対策をするタイミング
節税対策は通年で行い、決算3か月前あたりで最終利益を予想しつつ、最後にできる節税対策を行うという流れが理想です。
もし、決算直前に思ったよりも利益がでて節税対策が間に合わない、という場合は以下にまとめた節税対策を行ってみてください。
【決算直前にできる節税対策】
節税対策の中で、決算日後にできる対策は以下のとおりです。
【決算日後にできる節税対策】
この記事で挙げた以外にも、以下のような方法があります。
- 仮払金の精算
- 最終仕入単価の引き下げ
- 各種税制の対象となる費用の支出
やってはいけない節税
「節税」は合法的に税負担を軽くすることをいい、違法な手段で納税を逃れようとする行為は「脱税」となります。
税法は複雑で、毎年改正されているため、節税のつもりで実施したことも、実は脱税行為だったということがあるかもしれません。租税回避行為や脱税行為が税務調査で指摘されれば、ペナルティが課せられ、本来は負担しなくて良い税金を納めなくてはいけなくなります。節税対策を行う際は、それが正しい行為なのか、良く確認しながら行うようにしましょう。
おわりに
節税することに固執してしまって、キャッシュ不足による資金繰りの悪化を招いたり、逆に不適切な方法で税金を多く払うことになってしまっては本末転倒です。そうならないためにも、税理士と相談しながら自分の会社に適した節税するように心がけましょう。
ただし、税理士によっては経営者の視点から考えず、さらには、節税対策をまったくしてくれない人もいます。顧問料は安いけれど何も節税対策をしてくれない税理士と、多少顧問料が高くても経営者視点で節税対策をしてくれる税理士を比較したときに、後者のほうが結果的に得する可能性もあるのです。
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