【まとめ】損金処理ができる社葬費用とできない社葬費用の一覧
社葬とは、創業者や役員、功績者などの企業に貢献をした人物の葬儀を、会社を挙げて行う社会的行事のことです。
一般的な個人葬では、喪主と費用を負担する施主が同一であることが多いですが、社葬の場合は、喪主は遺族の代表者で、施主は企業となります。つまり、社葬にかかった費用は会社の経費となり、損金として処理をします。
ただし、社葬費用のすべてが損金計上できるわけではありません。そこで、「損金算入できる費用とできない費用」と「社葬費用の会計処理」について解説いたします。
目次
社葬費用は「福利厚生費」になる
社葬費用は、以下の2つの条件を満たすと、「福利厚生費」として損金計上することができます。
- 社葬を行うことが社会通念上相当である
- 社葬のために通常要すると認められる費用
社会通念上相当であるとは?
社葬費用を損金計上する上でポイントになるのは、「社会通念上相当」という概念です。社葬に関しては、以下の条件を満たすと、社会通念上相当であるといえます。
- 故人が生前に会社へどれくらい貢献しているか(会社での経歴や役職など)
- 死亡事情
これらを照らし合わせ、会社が社葬費用を負担することに十分な理由があれば損金として認められます。したがって、経営層の親族という理由だけでは、社会通念上相当認められない可能性が高くなります。
損金算入できる社葬費用
「社葬のために通常要すると認められる費用」とは、主に以下のような費用が挙げられます。
葬儀場、周辺駐車場の使用料
葬儀場の費用はもちろん対象です。また、会葬者が自動車で来訪する場合は臨時で駐車場を借りる必要が出てきますので、こちらも対象です。
送迎費用
遺族や来賓、遺骨の送迎にかかる費用も対象です。
祭壇、祭具にかかる費用
祭壇・祭具にかかわる使用料も対象です。
警備員の費用
来場者が多く、交通整理などが必要な場合は警備員を雇うことも想定されます。その際にかかる費用も対象です。
供花、供物の費用
供物や花輪、樒の費用や運転手、葬儀委員への心付けなども対象です。
葬儀場で使用する受付テント・照明器具の利用料
葬儀場の外で使用する受付テント・照明器具などの機材も対象です。
飲食代、備品の費用
遺族、葬儀委員への飲食代、受付備品などを揃えるのにかかった費用も対象です。
礼状・粗品代
会葬者に対する礼状・粗品代も対象です。
社葬の通知にかかった費用
社葬の広告に関する費用も対象です。故人が社内外で活躍した方であれば、多方面に通知する必要があるため、その費用も大きくなることでしょう。
お布施
僧侶の方へ納めるお布施も損金として算入できます。
損金不算入の社葬費用
一方で、損金に算入できない費用もあります。基本的には、遺族が負担することが前提になっているため、社葬の費用として認められないことがほとんどです。
密葬にかかった費用
密葬の場合、基本的に遺族のみで行う場合がほとんどです。会社がかかわることがないため、対象外です。
仏具、仏壇の購入費用
仏具、仏壇は、遺族が取り揃えるものとして考えられているため、対象外です。
初七日や四十九日の費用
初七日や四十九日も、遺族が行うものとして考えられているため対象外です。
その他の費用
その他にも、墓地霊園、納骨にかかる費用や戒名料も対象外です。また、会葬者(弔問客)が持参した香典などは法人の収入ではなく、遺族の収入として計上されますので、香典返しの費用も対象外です。
社葬費用の仕訳例
社葬を行った際の費用の仕訳例を紹介します。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
福利厚生費 | 500,000 | 現金預金 | 500,000 |
社葬費用は、福利厚生費として処理されますので、借方に「福利厚生費」、貸方に「現金預金」と計上します。
また、社葬費用として認められないものも、法人が負担する場合には、法人と遺族の関係によっては以下のように処理することができる費用もあります。
遺族が役員だった場合
遺族が役員だった場合は、役員賞与として取り扱われます。借方に「役員賞与」を、貸方に相当金額を「現金預金」と計上します。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
役員賞与 | 500,000 | 現金預金 | 500,000 |
遺族が社外の関係者だった場合
遺族が社外の関係者だった場合は、寄付金として取り扱われます。借方に「寄付金」、貸方に相当金額を「現金預金」と計上します。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
寄付金 | 500,000 | 現金預金 | 500,000 |
社葬を行うときに知っておきたい豆知識
社葬費用に関する基本的な考え方はご理解いただけたかと思いますが、これだけでは対応できない場合もあります。以下に、その代表的な例を紹介します。
合同葬のときの損金処理
合同葬とは、故人が勤めていた会社と、遺族が共同で行う葬儀のことをいいます。
この際は、社葬として費用を負担することに対して、相当の理由があり、その費用が適切かどうかが税務上の焦点になります。法令などで明確に按分基準が示されているわけではないので、企業規模や役職、故人が残した会社への貢献度を踏まえて判断することになります。
弔慰金の取り扱い
弔慰金に関しては、各社の弔慰金規定などの基準に合致し、かつ社会通念上相当な金額の範囲であれば、福利厚生費として損金として計上することができます。 ただ、適正金額を超える場合は、死亡退職金とみなされる可能性もあるので、事前に税理士などへの確認が必要です。
領収書がない寺院への支払い
僧侶の読経料など領収書がもらいづらいこともあります。これについても、福利厚生費に含まれるものですが、領収書かそれに準ずる支払証明書がないと処理が難しくなります。
その場合は、僧侶の読経を行った証明や出金伝票を作成して保管しておきましょう。
精進落としの費用
精進落としは、葬儀とは切り離して法要の一環として行われるものであるため、基本的には遺族が負担することになります。
しかし、会葬者に関連企業や取引先企業が多く含まれている場合は、その分が交際費として認められることがあります。
おわりに
社葬に関しては、常に発生するイベントではありません。そのため、その損金処理などは経理担当者でも判断がつかないことがあります。実務上困ったことがあれば、税理士など専門家へ相談することをおすすめします。
無料で税理士に相談ができる「みんなの税務相談」 も活用してみてください。
もっと記事を読みたい方はこちら
無料会員登録でメルマガをお届け!