美味しく割安な「置き社食」で健康経営を促進! 一方、税制上の落とし穴も・・・税理士が解説
経理・決算
健康総合企業のタニタは2月5日に、冷蔵庫を設置して、弁当や総菜を提供する置き社食サービス「タニタカフェ at OFFICE」の開始を発表した。初期導入費は6万円(税別)、月額利用料金は4万5000円(税別)で、商品代金は別途必要。初年度100社の導入を目指しているという。
置き社食サービス「OFFICE DE YASAI(オフィスで野菜)」を運営するKOMPEITOは、サービス開始から10周年を迎えた2024年8月に、累計導入拠点数が13,000拠点を突破したと発表。初期導入費は7万円(税別)、月額利用料金は150個プランで6万8000円(税別)となっている。
置き社食サービスは一般的に、食事代の一部を会社側が負担するしくみのため、従業員は割安な価格で食事を楽しむことができるのだ。
このように、企業で「置き社食サービス」の活用が広がりを見せている。その理由はリモートワークからオフィス回帰への流れを促すため、また採用活動において、従業員への魅力的な福利厚生として、同サービスを捉えているようだ。
特に首都圏では、物価高により外食代が高騰していることから、従業員は置き社食を利用することでランチ代を節約できる。
企業側にとっても、従業員の健康管理につながることから、健康経営に取り組むことが可能だ。さらに、社員食堂を設置するよりも低コスト・省スペースで実現できるというメリットがある。
食事補助を福利厚生として取り入れると、企業や従業員にさまざまなメリットがあるが、一方で従業員にかかる税金については注意が必要だ。三宅 伸税理士に聞いた。
●食事を支給しても、要件を満たせば給与所得の対象外に
ーー昼食の食事補助を福利厚生として取り入れる場合、支給した分が従業員の給与として課税されないようにするためには、どのような条件を満たす必要があるのでしょうか。
「昼食の食事補助を福利厚生として取り入れる場合、次の2つの要件をどちらも満たしていれば、『置き社食』や『社員食堂』での食事の支給は給与として課税されません。
・従業員が食事の価額の半分以上を負担している
・『食事の価額ー従業員が負担している金額』が、1か月あたり3,500円(消費税抜き)以下
もし条件を超えてしまった場合は、会社負担分の『食事の価額ー従業員が負担している金額』が本来の給与に加算され、給与所得として課税されます。
●食事代を現金で支給した場合はどうなる?
ーー昼食の食事補助を現金で支給した場合は、どうなるのでしょうか。
「食事代を現金で支給すると、従業員にとっては現金を自由に使えるというメリットがあります。ただし、その場合、1か月当たりの補助額が3,500円以下であっても、全額が給与として課税されてしまいます。
なお、現金支給が給与課税の対象となることで、社会保険料も上がる可能性があり、会社・従業員双方の負担が増える場合があります。
例外としては、深夜勤務に伴い支給される夜食で、現物支給できない場合は、1回の支給額が300円以下のものは、給与として課税しなくても良いことになっています。
●無料で使える社員食堂は、食事代=給与所得に該当するので注意
ーー企業によっては、従業員が無料で利用できる社員食堂を備えているところもありますが、その場合は福利厚生として認められるのでしょうか。
「社員食堂で昼食を提供する場合も、同様の規定が当てはまります。そのため、従業員の負担がない場合は、『食事の価額全額が給与所得として課税される』ことになります。従業員としては、食事代=給与所得にかかる税金分の手取り額が減ってしまいます。
福利厚生の一環として食事の補助をする場合は、会社の費用負担を増やさず、従業員も税金を気にせず利用できるように、適正価格での社員食堂や置き社食の提供を考えてはいかがでしょうか。」
【取材協力税理士】
三宅伸(みやけ・しん)税理士
大阪府立大学経済学部卒業後大手リース会社勤務。クラウド会計の導入をすすめ、インボイス制度や電帳法にも対応できるストレスフリーな事務環境を提供。常にお客様の立場に立って考え共に成長していくことをモットーに法人及び個人の会計税務、起業支援、相続等と幅広く活動している。また、無申告や税務調査のサポート対応も行っている。
事務所名 :三宅伸税理士事務所
事務所URL:https://miyake-tax.jp/