領収書をなくしたり、もらい忘れたらどうする?経費を自腹で切らないための対処法
お金を支払ったり、受け取ったことの証明になるのが「領収書」です。会計上でいえば、経費計上や従業員の経費精算などのときに必要になります。
領収書がないと経費として認められない・・・なんて話も聞きますが本当でしょうか?もし、もらい忘れたり、なくしてしまったらどうすればよいのでしょうか?
目次
領収書のもらい方と保管方法
領収書は、事業に関わる経費を支払ったときに、発行してもらうようお願いするものです。店舗での買い物の際は決済時に、インターネットなどで物品を購入する場合は発行が可能か、あらかじめ確認しましょう。
領収書をもらうときは、宛名とお品書きを必ず伝えましょう。会社などの宛名とお品書きがあることで、この領収書が事業経費に当たると判断されやすくなります。
もらった領収書は、封筒などに入れておくか、ノートなどに貼り付けて管理するようにしましょう。封筒に入れる場合は、月別に分けて保管するのがおすすめです。また、領収書は、7年間の保存義務があるため、無くさないように工夫することが重要です。
なぜレシートではなく領収書なの?
領収書が重要視されるのは、主に2つ考えられます。
一つは、領収書には宛名があるのに対して、レシートにはないことです。宛名がないと、税務署の監査が入った時に、この経費が会社や事業の経費に当たるのか証明することが難しい場合があります。特に、高額商品を購入した際は、宛名が入った領収書の方が無難でしょう。
もう一つは、慣習の問題です。経費はレシートではなく、領収書をもらうことという慣習が社会的に残っています。このため、レシートではなく、領収書をもらうのが一般的になっていると言えます。
領収書をなくしたときの対処法
それでは、領収書を無くしてしまったら、その費用は経費として申告することができないのでしょうか。
ここでは、そんな領収書を無くした時の対処法について、7つの方法をお伝えします。これから確定申告を控える方、会社員で経費申請を行う方は、ぜひ参考にしてください。
レシートでも可
先ほど、レシートより領収書が望ましいとお伝えしましたが、必ずしも領収書である必要はありません。
領収書が好ましいのは、高額商品を購入した時に、金額や日付だけでなく、宛名が入っていることです。レシートでも、明らかに購入した製品やサービスが事業のために必要と分かれば問題ありません。場合によっては、レシートは、日付や金額が機械で印字されますので、その点は領収書と変わらない信憑性があります。
また、会社員でも、レシートでも経費の申請ができることがあります。領収書を無くしても、レシートを取っておけば何とかなるかもしれません。
再発行をしてもらう
製品やサービスを購入したお店に、後日再発行のお願いをすることも方法の一つです。
領収書の再発行を認めていないお店もありますが、ダメもとで頼んでみるのは一つの手です。もし、購入した証明になるものがあれば、それを持ってお願いしてみましょう。
購入証明書や支払証明書をもらう
領収書がもらえない時は、「購入証明書」や「支払証明書」を受け取って、領収書の代わりにすることも可能です。
ただし、発行に当たっては、有料になることもあるので、その点は注意しましょう。
カード明細で確認する
クレジットカードで支払いを行った場合は、その際に受け取れるカード明細が領収書の代わりになります。
カード明細にも、日付や金額が記載されているため、申告する時に利用できるかもしれません。万が一の時に備えて、捨てずにとっておきましょう。
メールや招待状を証拠とする
事業に関係するパーティーや祝賀会などに参加した時、領収書を受け取れない場合があります。そんな時は、イベントの招待状や招待メールを保存して、お金を支払った証明書にしましょう。これで、経費として申告できるようになります。
また、会社員の場合は、事前に経理担当者に対応方法を確認しておきましょう。場合によっては、あらかじめ領収書を発行してもらうよう、先方に依頼するよう言われるかもしれません。
出金伝票を作成する
奥の手にはなりますが、領収書の代わりにお金を支払った証明書として、出金伝票を作成することも可能です。
日付や金額、何に使ったかなど正確に記入するようにしましょう。くれぐれも、不正には利用しないようにしてください。
そもそも領収書がでないとき
公共交通機関に乗車した時など、領収書が発行されない場合があります。その時は、どの交通機関を利用して、どの区間で乗車して、いくら支払ったかなどノートなどに記録しておくようにしましょう。これも、申告の際に費用として認められる手段の一つです。
会社員であれば、企業の交通費精算システムで行うことがほとんどかと思います。過去のスケジュールなどを確認して、抜け漏れがないよう申請を行いましょう。
領収書はスマホ撮影でOK!
領収書は、紙で保存しなければならないと考えている方もいるようですが、2017年からスマートフォンで撮影して保存している領収書も認められるようになりました。
7年間の保存義務がある領収書ですが、電子データとして保存できることで、管理が大幅に楽になります。500万画素以上のカメラで撮影して保存する必要がありますが、今のスマートフォンの性能であれば問題ないでしょう。
また、この制度(電子帳簿保存)を利用するには、利用を開始する3か月前に「国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等の承認申請書」の提出、承認が必要です。
なおフリーランスなど個人事業主で、領収書など経費管理の手間が気になる方は、会計ソフトの利用を検討するとよいでしょう。
最近の会計ソフトには、銀行口座を連携したり、スマホで領収書の写真を撮って読み込んだりすることで、経費の管理や記帳の手間を大きく削減できるものもあります。こういった会計ソフトをうまく活用すれば、確定申告の手間も大きく削減できます。
消費税上は領収書が必要
領収書をなくしても、その支払いを証明することができれば、経費として計上することが可能です。ただし、それは所得税・法人税における経費計上の話です。消費税においては、扱いが別となっています。
インボイス制度導入後は、消費税の課税事業者が仕入税額控除を行う要件として、インボイス発行事業者が交付する「適格請求書」の保存と、帳簿への保存が必要です。
仕入税額控除は、消費税の納税額を計算する際に、売上にかかる消費税額から、外注費や経費などにかかる消費税を差し引くことができるというものです。
つまり、適格請求書を受け取り、保存しておかなければ、仕入税額控除を行うことができず、消費税の納税額が増えてしまいます。
そのため、会社員の方で、勤めている会社が課税事業者の場合は、必ず適格請求書を受け取るように言われるでしょう。
なお、ここでいう適格請求書とは、取引内容を証明する書類の総称であるため、請求書のほか、領収書やレシート、見積書、納品書なども含まれます。
領収書(適格請求書)の記載事項
領収書が適格請求書として認められるには、以下の記載事項を満たしている必要があります。領収書を受け取る際には、よく確認するようにしましょう。
- 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
- 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
- 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称(宛名)
なお、不特定多数の人に対して販売等を行う小売業、飲食店業、タクシー業等は、上記記載事項のうち、宛名が不要となっています。
領収書がなくても仕入税額控除が適用される要件とは
このように、課税事業者が仕入税額控除の適用を受けるためには、支払った金額に関わらず、領収書(適格請求書)の受領が必須となります。
ただし、以下のようなケースでは、発行が困難だとして、例外的に領収書(適格請求書)の発行が免除されます。つまり、帳簿へ正しく記載してあれば、領収書がなくても仕入税額控除が適用されます。
- 公共交通機関である船舶、バス又は鉄道による旅客の運送(3万円未満)
- 自動販売機・自動サービス機からの商品の購入等(3万円未満)
- 郵便切手を対価とする郵便サービス( 郵便ポストに差し出されたもの)
- 使用の際に回収される入場券等
- 古物営業や質屋、宅地建物取引業が、インボイス登録をしていない者から古物、質者、建物の購入等
- 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費、宿泊費、日当および通勤手当
また、一定規模以下の事業者が、1万円未満の商品やサービスを購入する際にも、帳簿へ記載することで、仕入税額控除が認められます。
一定規模以下の事業者とは、基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者のことです。
なお、1万円未満の少額取引でインボイスが不要となるのは、2029年9月30日までの経過措置となっています。
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おわりに
領収書を紛失した際の対応方法について紹介しました。領収書を無くした時は、どうしても焦ってしまったり、落ち込んだりしますが、ここで紹介した方法である程度対応できるはずです。ぜひ覚えておいてください。
くれぐれも気をつけていただきたいのは、高額商品やサービスを経費で計上したい場合です。税務調査でもよく見られる部分ですので、領収書をとっておくのが望ましいです。高額な領収書なら、そうそう無くすことはないと思いますが、保管方法など注意しておきましょう。
ただし、消費税の仕入税額控除を行う際には、領収書(適格請求書)の保存・帳簿の保存が必須となりますので、注意が必要です。
経費の申請・申告がスムーズに進むように、日頃から領収書などの書類はしっかり管理しておきましょう。
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