決算期の変更方法は?手続きや届出の期限、注意点をわかりやすく解説
一般的に決算期というと、日系企業では3月末、外資系企業では12月末というイメージを持っている方も多いでしょう。実は決算期は、一定のルールはありつつも各企業が自ら設定するものであり、変更することも可能です。そこでこの記事では、決算・決算期とはなにか、決算期を変更する際にポイントとなる決算期の決め方や変更手続き、決算期を変更するメリット・デメリットなどを解説します。
目次
決算期は変更できる?
一般的に決算期は、会社を設立する際、会社の基本的規則を定める「定款」に、諸々の基本的事項と一緒に定めます。
つまり、決算期というのはあくまでも会社自身が定めるものであり、会社の都合で後からでも変更することができます。業務提携や合併等といった要因により、決算期を変更するケースもあるでしょう。
ただし、いずれにせよ法人税法等で定められた一定のルールを守る必要があるため、その点には留意が必要です。
たとえば法人税法では、事業年度について、法人の財産及び損益の計算の単位となる期間で、法令または法人の定款等に定めるものと定義しており、事業年度の期間は1年以内という区切りを設けています。
決算期を変更するメリット
決算期を変更するメリットのひとつに、繁忙期や多額の売上が発生する時期と決算時期が重なっている場合、これを解決できる点が挙げられます。
決算時期は決算業務という通常とは異なったタスクが発生します。経理等の管理部門はもちろん、現場でも今期の売上の確定や来期の予算作成等が必要となるでしょう。これが、忙しい繁忙期と重なってしまうと、会社全体への負担が増加することになります。
決算期を変更することで閑散期に決算業務を実施することができれば、会社として業務負担の平準化ができるでしょう。
また、繁忙期は売上高・仕入高・経費ともに増加します。現金商売は別として、通常は売上から実際の入金まではタイムラグが出てきます。その一方で納税という面では、決算日から2か月以内には税金を納付する必要があります。
そのため、繁忙期と決算時期が重なっていると、売上高としては上がっているものの、まだ現金が入ってきていない状態で納税というキャッシュアウトが発生する可能性があり、これでは資金繰りとしてはよくありません。決算期の変更により、繁忙期と納税時期を適切に調整できれば、資金繰りの面ではメリットとなるでしょう。
さらに、繁忙期に計上した利益について効果的な節税対策を検討する場合も同様です。
決算期と繁忙期が重なっていると有効な節税対策を取るのは時間的に難しくなりますが、決算期を変更すれば、節税対策を検討する期間を取れるようになるでしょう。
決算期を変更する手続きと期限
決算期(事業年度)は定款の任意的記載事項ですが、記載している会社がほとんどでしょう。そのため、決算期を変更するときには定款の変更も必要になります。
定款は企業の基本的な規則を定めたものですので、変更する場合には株主総会を開催して定款変更の決議が必要となります。具体的には、次の手順を踏んで決算期を変更します。
STEP1)株主総会を開催・決議する
株主総会決議は、「普通決議、特別決議、特殊決議」の3種類がありますが、会社法により定款を変更する場合は、特別決議が必要であると定められています。
特別決議の場合、原則として発行済株式総数の過半数にあたる株式を有する株主が出席して株主総会を開催し、その議決権の3分の2以上の賛成により決議が成立します。
決算期の変更は過去に遡及して行うことはできません。そのため、株主総会の決議は変更後の決算年度末までに実施する必要があります。
STEP2)議事録の作成と定款の変更
決議が成立すれば速やかに定款を修正し、社内に保管するとともに、株主総会議事録を必ず作成し、保管します。
また、定款の修正・株主総会議事録の作成について具体的な期限について明文化された規定は特にありませんが、会社にとって非常に重要な事項であるため、通常は株主総会決議後すぐに作成しましょう。
議事録の例
議案 定款変更の件
議長は、現行定款の事業年度を変更したい旨を詳細に説明し、
その賛否を議場に諮ったところ、満場一致をもってこれに賛成したため、
次のとおり承認可決された。
定款第x条を次のとおり変更すること。
(事業年度)
第X条 当会社の事業年度は、毎年XX月XX日から同年XX月末日までの年1期とする。
STEP3)変更に関する各種の届出
事業年度は登記事項ではありませんので、登記に関連した法務局への届け出等の手続きは不要です。
しかし、所轄税務署・都道府県税事務所・市区町村の役所等へは届出が必要となります。この届出は、変更があった際に速やかに行ってください。届出の際には、定款変更の決議に関する株主総会議事録のコピーも添付します。
また、公的機関以外では、銀行などの金融機関に決算期変更の連絡をします。そのほか、たとえば許認可事業などを行っている場合には、管轄する省庁等への届け出が必要となるケースがあります。
株主総会決議後速やかに提出するということ以外、具体的な期限について規定はされていませんが、一般的には遅くとも変更後の事業年度の確定申告書提出期限までには提出します。
決算期を変更するときの注意点
決算期の変更を検討する際は、以下の点に留意しましょう。
変更の年は決算期のスパンが短くなる
決算期を変更すると、1年未満の事業年度が発生することになります。これは、先述のとおり法人税法により税務申告の期間は1年以内と定められているためです。
たとえば、「12月決算の法人が3月決算に変更する場合」を考えてみましょう。税務申告の期間は1年以内とする必要があるため、1月から同じ年の3月までの3か月間が変更した初年度の事業年度となり、翌事業年度は4月から翌年3月までとなります。
注意するべきこととして、税務の規定は1年間の事業年度を前提としているものが多いため、1年に満たない事業年度の場合は、たとえば減価償却の計算などにおいて月割計算が必要となります。
そのほか、事業年度が短くても、決算業務におけるやるべきことが減少するわけではありません。
また、通常とは異なる処理が必要になる場合もあるため、ミスが起こらないよう、より一層の注意が必要となります。
経営分析において比較が難しくなる
自社の経営状況を判断していく場合、対前年等で比較していくことが基本となりますが、事業年度が一時的に短くなると、この比較が難しくなります。経営分析の際の繁忙期の取り扱いや予算との比較について、経営判断に悪影響が出ないよう注意を払うことが必要です。
おわりに
事業を行っていると設立当初とは環境が変わり、決算期を変更したほうが良い場合を迎えることもあります。そんな時でも冷静にメリットとデメリットを判断できるよう、常日頃から備えておくことが重要です。
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