ペットに幸せな将来を遺せる「ペット信託」ってどんな仕組み?

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ペットに幸せな将来を遺せる「ペット信託」ってどんな仕組み?

監修: 蝦名 和広 税理士

身体的にも精神的にもいい影響を与えてくれるペットたち。家族の一員として愛されている家庭も多いのではないでしょうか。いつまでも一緒にいたいという思いが実ったのか、人間の高齢化とともにペットの高齢化も進んでおり、特に犬の寿命はここ30年間で約2倍になったとも言われています。

もし、自分に万が一のことがあったらペットたちはどうなるのだろう、と考えたことはありませんか?果たして幸せな一生を送れるのでしょうか。引越しとともに大好きなペットを他人にお願いしたら、食べられてしまったなんて話もあります。

自分にもしものことがあってもペットには幸せに過ごして欲しいという要望から、最近「ペット信託」という新しいサービスが始まっています。愛するペットの将来が気になる方、ぜひ目を通してみてください。

目次

ペットに遺産は残せるの?

犬や猫をはじめとしたペットを飼っている方は多いですが、飼い主に万一のことがあった場合、残されたペットがどうなるのか心配したことはありませんか?例えば、大切なペットに遺産は残せるのでしょうか?

日本の法律では、ペットに財産を相続させることはできません。ペットは法律上は「物」(動物愛護法等の特別法を除く。)であり、財産を相続できるのは人または法人のみとされています。よって、ペットに直接遺産を相続することはできません。

しかしながら、飼い主さん(遺贈者)が負担付遺贈という遺言書を作り、受遺者に対して「財産の見返りに、一定の義務を負担してもらう」という条件で、その人に遺産を相続することは可能です。

ただし、大きな遺産が絡む場合はトラブルになりがちです。なぜならば、受遺者は必ず遺贈を受けなければならない訳ではありませんし、遺贈は自由に放棄できてしまうのです。このため、結局のところペットが放置されたりしてしまうこともあるかもしれません。

ペット信託で遺産を残そう

このような問題を解決する方法として「ペット信託(FA信託)」が注目されています。

ペット信託とは、ペットのために確実に財産を残し、飼い主さんとペットを守る。簡単にいえば、「ペットのための保険」のようなものなのです。

信託とはわかりやすく言うと、信じて託せる相手に、財産を管理してもらう仕組みのことです。

しかし、「ペット信託」は一般的にイメージされる上記のような資産運用などではなく、飼い主にもしもの事があった時に、用意しておいたペットのためのお金で、残されたペットが不自由なく幸せな生涯を送るための資金と場所を準備しておく仕組みです。

このため、ペット信託契約をしておくことで、自分が最後まで面倒を見ることができなくなってしまった場合でも、その後の生活、命を守る事ができます。

ペット信託は、信託法の民事信託に基づいて手続きされます。

監督人がいるから飼育環境も安心

信託では受託者に課される義務があり、例えば以下のようなことを遵守する必要があります。

  • 「善管注意義務」(善良な管理者の注意を怠らない)
  • 「忠実義務」(受益者のため忠実に事務にあたる)
  • 「分別管理義務」(信託財産とその他を分別して管理する)

弁護士や行政書士などが信託監督人となり、管理会社に移された財産の管理や、次の飼い主によるペットの飼育状況を監督します。

ペット信託のはじめかた

まずはじめに、以下のことを先に決めておくと良いでしょう。

  • ペットとお金を預ける人(委託者、通常であれば飼い主)
  • ペットとお金を預けられる人(受益者・受託者)
  • 預けるペットやお金、お世話の内容(遺言書・信託契約書)
  • 受益者や次の飼い主を管理する人(信託監督人)
  • ペットが亡くなったあと余ったお金を受け取る人

そして「自分で会社を設立する」または「ペット信託専門業者に依頼する」どちらかの方法を選びます。

飼い主を代表にした管理会社を設立する場合

まず、飼い主を代表にした管理会社を設立し、ペットに残したい財産を事前に会社へ移しておきます。(相続財産から切り離すことができるので、確実にペットにお金を残せます。)次の飼い主を受益者とし、信託契約を結びます。

そして、ペットを育てていくために必要な費用の計算や支払い方法・謝礼金や、ペットの死後に残った場合の活用方法などをあらかじめ決めておきます。

その決まり事の中には、『信託管理人』という、飼い主が亡くなった後も新しい飼い主がきちんと世話をしているかを管理する人を決めておく必要があります。(※飼い主の状況により、相続人などを考慮して同時に遺言書などを作成する必要もあります。その場合は、弁護士などに依頼した方が良いでしょう)

ペット信託専門業者に依頼する場合

専門のNPO法人があり、そこには専門の信託機関が存在しています。まず飼い主と信託会社で信託契約を結びます。

次に、弁護士などに遺言書の作成を依頼し、その遺言書には飼い主が契約したNPO法人に財産を残すという内容を記載してもらいます。

飼い主に万が一のことがあった場合は、NPO法人に信託の権利が移り、信託会社とNPO法人の連携によって、次の飼い主への引き渡しや病院代の支払い、次の飼い主の元へ行った後の管理も行われる仕組みになっています。

ペット信託の仕組み【図解】と費用

ご説明してきたペット信託の仕組みをまとめると、以下のようなイメージとなります。

管理会社の場合の費用

上記の手順でペット信託を行う場合の費用としては、一般的には、信託の契約締結時に、以下のような費用で約25万円が必要になります。(※依頼する専門家や手続き方法などによって異なります。)

  • 合同会社設立費用
  • 契約書作成費用
  • 遺言書作成費用

次に合同会社の運営費として月に1~4万円程度と、飼育費は、1年間にかかるエサ代等の費用の合計額を算出し、いざという場合のための医療費などを、ペットの推定余命から計算すると、約100~400万円程度が必要になります。

専門業者の場合の費用

業者によって異なるようですが、事例としては、獣医師の診断などから余命10年と判断された犬で約230万円だったり、余命を12年と判断された猫は約300万円だったりと、信託する動物の種類や大きさや、飼育条件などでも異なるようです。これらの例を見ると、ペットの余命1年あたり数十万円準備すれば安心かもしれません。

これらは比較的新しい仕組みのため、利用時には、ペット信託に詳しい、行政書士・一般社団法人などへの相談しながら進めると良いでしょう。

おわりに

飼い主がいなくなったあとのペットたちの生活を保証してくれるペット信託。ご興味がある場合は、ぜひ一度専門家に相談してみるとよいでしょう。

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