ホテル側に直接取材した。結論は映画公開に何の異議も唱えていない。それなのに誰がこの映像の使用に怒っているのか? ジャーナリスト伊藤詩織記者の歩みは、生存の物語だ。ただ起きるべきでなかった性暴力を生き延びたというだけではなく、彼女の存在そのものを抹消しようと仕組まれたシステム全体に立ち向かった物語でもある。彼女のドキュメンタリー『ブラックボックス・ダイアリーズ』は、アカデミー賞にノミネートされた。日本人が制作したドキュメンタリーとしては史上初の快挙だ。世界が彼女の勇気を称賛する中、日本ではくだらなく悪意に満ちた攻撃が伊藤さんに向けられている。その背景を知れば、その理由も理解できる。 簡潔にこの酷い事件を振り返ろう。2015年、伊藤さんは東京のシェラトン都ホテルで、当時TBSワシントン支局長だった山口敬之氏にレイプされた。山口氏は安倍晋三元首相の伝記作家でもあった。警察に届け出た彼女は、最初は