遺産を孫に相続させたい!その方法と注意点とは

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遺産を孫に相続させたい!その方法と注意点とは

著者: 棚田 健大郎 行政書士・ファイナンシャルプランナー・相続アドバイザー

相続人は配偶者や子どもが一般的ですが、なかには「孫に相続させたい」というケースもあるでしょう。法律的に「孫への相続」は可能ですが、実は相続税に関して気をつけるべきポイントがあります。そこで「遺産を孫に相続させる」ときの条件と方法、その注意点を解説します。

目次

孫を相続人にできるケース

相続において、遺産を残す人を「被相続人」、遺産を相続する権利がある人を「相続人」といいます。法律的に孫が相続人となるケースは、主に3つの方法が考えられます。

代襲相続・・・子どもがすでに亡くなっている場合

被相続人の子どもがすでに亡くなっている場合、その子ども、つまり被相続人から見て孫が相続人となります。これを「代襲相続」といいます。

通常、相続権がある法定相続人の優先順位は「第一順位:子ども」「第二順位:父母・祖父母(直系尊属)」です。 しかし、第一順位の子どもが亡くなっているけれども孫がいる場合、代襲相続によって「第一順位:孫」となり、第二順位の父母・祖父母には相続権が移りません。

また、子どもが生きていても、「欠格」または「廃除」により相続権を失っている場合も同じく代襲相続が発生します。相続権の欠格とは、相続人が犯罪を犯すなどの理由により民法に従って相続権を失うこと を指し、相続権の廃除とは、被相続人が家庭裁判所に申し出ることにより相続人の相続権を失わせること を指します。

一方、子どもが「相続放棄」により相続権を失っている場合は、孫に相続させることができません。相続放棄とは、相続発生後3か月以内に、相続人が自ら手続きをすることで相続権を失うこと を指します。相続放棄の場合は代襲相続も発生しなくなってしまうため、孫は相続人になれなくなってしまいます。

養子縁組・・・孫を法定上の子どもにする

上記で説明した代襲相続が発生するのは、あくまで子どもがすでに死亡しているなど「第一順位の法定相続人がいない」場合ですので、「廃除」以外の方法で意図的に発生させることはできません。そのときに有効となるのは、養子縁組をすることで「孫を法定上の子どもにする」という方法です。

養子縁組には、親子関係が実親と養親の二重親子となる「普通養子縁組」と、完全に養親のみとの親子関係になる「特別養子縁組」の2種類がありますが、ここでの場合は前者の「普通養子縁組」となります。

養子縁組をすることで、法定相続上、実子と養子は同じく第一順位となり、ほかの第一順位の法定相続人がいる場合でも孫に相続させることができます。また、相続できる財産の割合(相続分)も実子と養子は等しくなります。

また、養子は「相続税の基礎控除」の計算に含めることができるため、相続税を節税できるというメリットがあります(※実子がいる場合:1人まで、養子のみの場合:2人までという上限があります)。

相続税の基礎控除の計算は「 3000万円 + (600万円 × 法定相続人の人数)」となり、この計算で出た金額分、課税金額より差し引かれます。つまり、孫と養子縁組をすることで法定相続人が1人増えれば、その分基礎控除額が600万円増えるということになります。

さらに、生命保険金を受け取るときの非課税枠も同様に「 500万円 × 法定相続人の人数 」なので、非課税枠が500万円増えることになります。

遺言・・・遺言書で相続人を孫に指定する

ここまでで紹介した「代襲相続」や「養子縁組」よりもっと簡単な方法があります。

それは「遺言書で相続人を孫に指定する」という方法です。

遺言書に孫に遺産を譲る旨を書いておけば、たとえ孫が法定相続人ではなくても、任意の財産を孫に残すことができます。

この方法の場合、厳密には孫は相続人ではなく、遺言によって相続財産を贈られた「受遺者」という位置付けになるため「相続税の基礎控除」は適用されませんが、遺産を受け取ることができるという意味ではそこまで大きな違いはありません。

ただし、法定相続人が親や祖父母などの直系尊属のみの場合や、受遺者のほかに配偶者や子どもがいる場合、その法定相続人たちには法律で定められた最低限の取り分(遺留分)があるため、いくら「遺産の全額を受遺者の取り分とする」と書いたとしても、必ずしも遺言書どおりにならないこともあります。

そのため、遺言書で孫を受遺者に指定して相続させたいときは、ほかの相続人の遺留分に配慮した取り分を定めた方が無難かもしれません。

「生前贈与」という方法も効果的

「相続」という形に捉われなければ、「生前贈与」という方法で財産を孫に譲ることもできます。 生前のうちに、孫に少しずつ財産を贈与しておけば、亡くなった後の相続発生時に揉めることがなくなります。

生前贈与には贈与税が課されますが、贈与税には基礎控除が年間110万円まで ありますので、その範囲で贈与するように、たとえば財産を110万円以下に分割して毎年贈与するという形であれば、贈与税が非課税のまま孫に財産を渡すことができます。

また、贈与の名目が「大学などの入学資金」「結婚・子育て資金」であると認められた場合も非課税になるので、これらをうまく活用して孫に生前贈与すると効果的でしょう。

税金が割高に?孫に相続させるときの注意点

孫が遺産を受け取る場合、注意しなければならないのが相続税の加算です。

国税庁によると、次のような場合は相続税が通常の2割加算される とされています。

(1)被相続人の配偶者・子ども・父母ではない人が財産を受け取った場合
(2)被相続人と養子となった人が被相続人の孫でもあり、かつ代襲相続人ではない場合

つまり、「遺言書で相続人を孫に指定する」ときや「生前贈与で孫に遺産を相続させる」ときは(1)に相当するため、孫にとって相続税の負担が通常より増えてしまうのです。

一方で、孫に遺産を相続させる場合でも「代襲相続」となるときには相続税は通常どおりになります。

「養子縁組で孫を法定上の子どもにする」ときには場合により異なり、実子である孫の親が生存している場合には(2)に相当するため相続税の負担が増えますが、一方で、実子である孫の親が亡くなっている場合には養子であると同時に代襲相続人でもあるため(2)には相当せず、通常どおりの相続税負担となります。

これには理由があり、相続のセオリーから考えると本来は「被相続人→子ども→孫」となるところ、「被相続人→孫」となり、1世代飛ばすことでその分の相続税が免れてしまうため、代わりに相続税を2割加算しますよ、ということなのです。

おわりに

このように、養子縁組や遺言書、生前贈与などを活用すれば、たとえ子どもが生存している状況でも孫に財産を譲ることができます。しかし、そうなるとほかの相続人の取り分が減ることにもなるため、トラブルが起きないよう配慮が必要かもしれません。

また、孫にどのように遺産を譲るかによって、相続税額が変わってきますので、できれば事前に税理士に相談して、相続税をシミュレーションして比べてみることをおすすめします。

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