青色申告で経費になるものとは?知っておくべき特例を詳しく解説
青色申告制度を利用している方にはさまざなメリットがあります。最大65万円の所得控除が受けられる「青色申告特別控除」や、赤字を3年間繰り越せる「純損失の繰越控除」など、さまざまな「所得計算上の特例」が利用できます。
このページでは、青色申告で認められる経費など、所得計算上の特例について解説します。
目次
「所得計算上の特例」とは?
所得税額を計算するには、所得額を計算してそれに所得税率を乗じる必要があります。そして、所得額は「収入」と「支出」の差によって算出されます。すなわち、収入が少なくなる、もしくは支出が多くなれば、納める所得税額は少なく済ますことができます。
ただし、納税者が自分勝手に収支額を増減させることはできません。仮に行うのであれば、税法に基づいた正しい手続きのもとに実施する必要があります。このように法律で認められた手続きとして、青色申告者に認められた所得計算上の各種特例があるのです。
たとえば、よく耳にするもので言うと「青色申告特別控除」があります。その他には家事関連費や貸倒引当金の必要経費算入といったものや、評価方法に関するものもあります。
青色申告で必要経費に算入できるようになるもの
青色申告者になると、白色申告時には認められなかった経費も損金算入できるようになります。たとえば、「貸倒引当金」や「青色事業専従者給与」などがあるので、これらについて確認してみましょう。
貸倒引当金は「一括貸倒引当金」が算入できる
貸倒引当金には大きく「個別貸倒引当金」と「一括貸倒引当金」の2種類があります。
- 個別評価貸倒引当金:取引相手が倒産などして生じた不良債権に対する引当金
- 一括評価貸倒引当金:不良債権に該当しない金銭債権に対する引当金
このうち白色申告者の場合は「個別評価貸倒引当金」しか計上できません。しかし、青色申告者であれば「一括評価貸倒引当金」も必要経費に算入できます。具体的には売掛金や未収金、受取手形などに関する引当金です。
なお、これらの貸倒引当金は「年末時点における帳簿価格での貸金合計額×5.5%」まで認められています。
青色事業専従者給与を算入できる
生計を一にする配偶者や親族が事業に従事していれば、一般的にはその方たちにも給与を支払うことになるでしょう。
本来であれば、この給与は必要経費に算入できません。ただし、青色申告者で一定の要件を満たせば「青色事業専従者給与の特例」として、必要経費として算入して良い決まりになっています。
- 青色申告者と生計を一にする配偶者や親族が給与を受けていること
- その年の12月31日時点で満15歳以上であること
- その年を通じて6か月超の期間、青色申告者の事業に従事していること など
なお、青色事業専従者給与を必要経費に算入する場合、配偶者控除や扶養控除などの該当する控除は適用できなくなります。
家事関連費用も事業に直接必要なものは算入できる
通常、生活費などの家事関連費用は必要経費に算入できません。
家事関連費用とは水道光熱費や電話料金、家賃などです。ただし、青色申告者で一定の条件を満たしている場合には、必要経費に算入できることもあります。その条件とは以下のとおりです。
- 青色申告者の取引等の記録に基づいていること
- 業務の遂行上必要であったことが明らかにされていること
以上の2つが成立する場合は家事関連費用を必要経費として算入できます。なお、業務の遂行上必要であるかは業務内容や経費内容、家族構成などを総合的に勘案した結果によって判断されます。
青色申告者が利用できる評価方法や会計手続き
青色申告者の場合は棚卸資産の評価方法に「低価法」を使えます。また、小規模事業者として認められれば「現金主義」による手続きも行えます。それぞれについて確認します。
棚卸資産を低価法によって評価できる
棚卸資産とは、簡単に言えば「販売用の商品や製品など」の総称です。個人事業主の場合は年末時点に棚卸資産を評価しなければなりません。この評価には一般的に「原価法(最終仕入原価法)」が使われます。
ただし、青色申告をしていると「低価法」も利用できます。低価法というのは取得原価と年末時点の時価を比較して、いずれか低い単価で棚卸資産を評価できる方法です。低価法を利用できると棚卸資産の値下がり部分を損失として計上できるようになります。結果として、損失部分が大きくなるので節税効果が期待できるのです。
小規模事業者であれば現金主義による所得計算を使える
通常は青色申告者であれば複式簿記(または簡易帳簿)によって記帳しなければなりません。ですが、青色申告者のうち小規模事業者として認められると「現金主義」によって所得計算を行えるようになります。
現金主義とは実際にキャッシュの出入りが発生した際に会計処理を行う方法です。お金の出入りが生じたときに記帳をすればよく、記帳が簡単な点にメリットがあります。
ただし、「65万円の青色申告特別控除」は受けられなくなる点には注意が必要です。
小規模事業者として認められるには、以下の2つを満たす必要があります。
- その年の前々年分の事業所得と不動産所得の合計額が300万円以下であること
- 確定申告の提出期限(その年の3月15日)までに所定の手続きを終えていること
これらを満たすと小規模事業者として認められ、現金主義によって会計手続きを行えるようになります。
青色申告者が使える減価償却費の特例について
青色申告者には「少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例」も認められています。これは30万円未満の減価償却資産を事業のために取得した場合に、その取得金額を一括して損金算入できる特例です(年300万円まで)。
通常は10万円の資産までしか計上できませんが、特例を使うと高額な資産でも経費にできます。
なお、この特例を受けるには確定申告時に「少額減価償却資産の取得価額に関する明細書」を添付・提出しなければなりません。また、固定資産台帳に記帳する必要もあるので覚えておきましょう。
おわりに
このように、青色申告者は「青色申告特別控除」だけでなく、各種必要経費の計上や通常とは異なる評価方法、手続きも行えるようになります。
各条件を満たす必要はありますが、健全な資金繰りのためにも利用できる特例制度はきちんと把握し、正しく賢く節税しましょう。
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