一般社団法人はどんな税金がかかる?非営利型法人の条件や税務をわかりやすく解説
一般社団法人には、「非営利型法人」と「非営利型法人以外の法人」があります。非営利型法人と認められれば、一部の収益には税金がかからなくなるなど、税制上の優遇制度が適用されます。この記事では、一般社団法人にかかる税金と非営利型法人の条件などをわかりやすく解説します。
目次
一般社団法人にかかる税金
まず、一般社団法人は「非営利型法人」と「非営利型法人以外の法人」に分けられ、それぞれで課税対象が異なります。
非営利型法人以外の法人は、税務上では基本的に株式会社など他の普通法人と同じ扱いで、会費や寄付金も含めたすべての所得が課税対象です。
一方で非営利型法人は、法人税法上の「公益法人等」として扱われ、収益事業から生じた所得のみが課税対象となり、会費や寄付金に対しては課税されません(※非営利型法人については後述します)。
課税対象にかかる主な税金は「法人税、地方法人税、法人事業税、法人住民税、消費税」で、所得金額や事業所の所在地に応じて納税額が変わります。法人住民税については、所得金額がゼロ円でも(赤字で利益がなくても)均等割が課されることになっており、東京都であれば最低でも7万円が課税されます。
そのほか、建物や土地などの不動産を所有している場合は「固定資産税」もかかります。
消費税はどうなる?
消費税については、売上が1000万円以下であれば免税事業者となり、消費税の納税義務が免除されます。
また、非営利型法人・非営利型法人以外の法人にかかわらず、消費税法第60条(国、地方公共団体に対する特例)に規定する特例の一部が適用されます(消費税法別表第三)。
具体的には、簡易課税制度を適用せず本則課税により消費税額を計算する場合、寄付金や補助金、助成金など特定収入割合が5%以上だと、「仕入税額控除の計算の特例」が適用されます。
そのほかは、原則として営利法人と同じ扱いになります。
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- 【保存版】簡易課税制度とは?計算方法や事業区分の判定などわかりやすく解説
- 消費税の免税事業者とは?課税事業者との違いや届出について解説
一般社団法人の会計や決算
一般社団法人の会計は、どの会計基準を採用するかは義務付けられていません。一般的には、「企業会計基準」を非営利型法人を目指す場合は「公益法人会計基準」を採用します。
決算については、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」で細かくルールが決められおり、詳しくは以下の記事で解説しています。
税制上のメリットがある非営利型法人について
非営利型法人とは、営利を目的とせず共益活動を主な目的とする一般社団法人または一般財団法人のことです(法人税法2条9号の2)。
非営利型法人として認められるには諸要件を満たす必要がありますが、先述のように、収益事業のみが課税対象になるといった税制上の優遇措置が受けられます。
また、法人税は年800万円以下の部分に軽減税率が適用されます。
区分 | 税率 |
---|---|
中小法人、公益社団法人、公益財団法人又は非営利型法人、人格のない社団等 | 年800万円以下の部分:15% |
年800万円超の部分:23.2% |
ほかにも税目ごとに以下のよう優遇制度が設けられています。
- 法人住民税(均等割):通常どおり課税されるが、都道府県によっては免除される
- 法人住民税(法人税割):収益事業で得た所得に対してのみ課税される
- 法人事業税:収益事業で得た所得に対してのみ課税される
みなし寄付金の制度は適用されない
収益事業から生じた利益を非収益事業のために使った場合は、その分を収益事業に係る寄付金とみなして損金算入できる「みなし寄付金の制度」があります。
しかしこの制度は公益社団法人、公益財団法人のみの適用なので、一般社団法人の非営利型法人では適用できません。
課税対象となる収益事業
非営利型法人の課税対象となる収益事業は、法人税法によって「34事業」が定められています。
たとえば、販売業、製造業、通信業、運搬業、請負業などがあり、その事業に付随して行われる行為も含みます(法人税法2条13号、法人税法施行令5条)。
34の収益事業
物品販売業/不動産販売業/金銭貸付業/物品貸付業/不動産貸付業/製造業/通信業/運送業/倉庫業/請負業/印刷業/出版業/写真業/席貸業/旅館業/料理店業他/周旋業/代理業/仲立業/問屋業/鉱業/土石採取業/浴場業/理容業/美容業/興行業/遊戯所業/遊覧所業/医療保険業/技芸教授業/駐車場業/信用保証業/無体財産権提供/労働者派遣業
非営利型法人の条件
非営利型法人として認められるには、「非営利性が徹底された法人」または「共益的活動を目的とする法人」のどちらかに当てはまらなければいけません。
まず「非営利性が徹底された法人」とは「事業によって収益を得ること」または「得た利益を分配すること」を目的としない法人のことです。認められるには、以下の4つの要件を満たす必要があります。
- 「剰余金の分配を行わない」旨を定款に定めている
- 解散時に「残余財産を国や地方公共団体などに贈与する」旨を定款に定めている
- 「理事及びその親族である理事の合計数が理事の総数の3分の1以下」である
- 「上記(1)~(2)の定款の定めに違反する行為」や「上記(1)〜(3)の要件に該当する期間に特定の個人や団体に特別の利益を与えること」を行っていない
一方で「共益的活動を目的とする法人」とは「会員に共通する利益を達成すること」を目的としている法人のことです。認められるには、以下の7つの要件を満たす必要があります。
- 「会員に共通する利益」を図るための活動を行っている
- 定款等に「会費の定め」がある
- 主たる事業として収益事業を行っていない
- 「特定の個人や団体に余剰金の分配を行う」旨を定款に定めていない
- 解散時に「残余財産を特定の個人や団体に帰属させる」旨を定款に定めていない
- 「理事及びその親族である理事の合計数が理事の総数の3分の1以下」である
- 「上記(1)~(6)の要件に該当する期間に、特定の個人や団体に特別の利益を与えること」を行っていない
税務上の手続き
前述した要件を満たせば、行政の認定など特別な手続きは必要ありません。
収益事業を行わない場合は確定申告(法人税申告)も不要なので、設立時に税務署へ「法人設立届出書」を提出する必要もありません。
ただし、設立時から収益事業を行う場合は税務署へ「収益事業開始届出書」の提出が必要です。
また、普通法人が条件を満たして非営利型法人となるとき、または非営利型法人としての条件を満たさなくなり普通法人になるときは、速やかに「異動届出書」を所轄税務署に提出する必要があります。
おわりに
一般社団法人は特有の税制があり、消費税の部分は特に複雑です。
顧問税理士を選ぶときは、非営利法人の顧問実績があるなど一般社団法人に強い税理士を選びましょう。特に設立時から非営利型法人を目指しているのであれば、定款を作成する段階から相談すると良いでしょう。
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