わたしが好んで引用する言葉に、アルベルト・マングェルの理想の読者像がある。「理想の読者は、すべての文学作品を匿名作家のものとして読む」、というのがそれで、じつはこれはインターネットをうろちょろしていたときに、英語でもスペイン語でもなく、フランス語で見かけたものだった。フランスではBabel(バベル、いい名前だ)という出版社がマングェルの翻訳にとても積極的で、もとが英語の作品もスペイン語の作品も訳出されているのだが、このボルヘスの友人の知名度は、日本ではちょっと不遇の感が拭えない。とはいえ、かつてここで紹介したことのある『図書館』以外にも、『読書礼讃』や『奇想の美術館』といった書物が、近年やはり野中邦子氏によって翻訳刊行されているので、遠からぬうちにこれらの訳書も読んでみたいな、と思っている。 さて、そんな出典のわからないままに愛用していた引用句なのだが、今日、書店をふらふらしていた折に、つ