上場しているかいないかで大きく違う! 知っておきたい株式の相続
遺産相続で相続する財産と言えば、現預金や不動産などが思い浮かぶことと思います。 ですが、それらの財産よりも相続する際に専門知識が求められるのが「株式」です。
株式は普段扱い慣れていない人にとっては、株式の相続と言われてもピンとこないことと思います。そこで今回は、株式を相続する際のポイントや注意点などについて解説します。
目次
相続する株式は、大きく分けて2種類ある
株式投資に興味がない人にとっては、株式と言われてもピンとこないかもしれません。昔は株券と言って紙切れがありましたのでまだ実感があったのですが、今では株式は電子化されているため、実態がない分わかり難いというイメージが付きまといやすくなっています。
そこで、まずは相続の対象となる株式の種類を大きく2つに分けてみます。
上場株式
東京証券取引所などに上場している会社の株式のことを言います。
市場で自由に取引が可能で、証券会社に専用口座を開設するだけで、すぐに取引をすることが可能です。
非上場株式
上場していない中小企業などの会社の株式は、すべて非上場株式にあたります。
実家が会社経営をしている場合、社長である父親が亡くなると、子供が実家の会社の非上場株式を相続して会社を引き継ぐことができます。
上場株式と非上場株式は、様々な面で取り扱い方が異なりますので注意が必要です。
上場株式を相続する際の注意点
最近では、20代でも株式投資をする人が増えてきて、昔よりも身近になりつつあります。もしも被相続人が上場株式を保有していた場合、相続人はその上場株式を相続して引き継ぐことができます。
ただし、上場株式を相続する場合は、相続人もその証券会社に口座を持っている必要があります。仮に上場株式を相続後すぐに売却するつもりだったとしても、一旦は相続人の口座に入れなければ、売却することができません。
口座の開設方法は比較的簡単で、証券会社のホームページからでも申し込みができます。 なお、この際は原則として被相続人と同じ証券会社に口座を開設した方が、手続きの流れがスムーズです。
仮に、すでに相続人が他の証券会社で口座を持っていれば、そちらに相続した上場株式を移すことも可能です。ただ、この場合に取引できるのは単元株のため、一部移管できないものもありますので事前に証券会社に確認しましょう。
このように、上場株式の相続については、口座さえ開設すれば、後の手続きはそこまで難しくはありません。
これに対し、非上場株式の相続はちょっと複雑な問題が絡んできます。
非上場株式は、「事業承継」でもある点に注意
上場株式については、投資としての意味合いがほとんどです。買った金額よりも値段が上がった時に高く売ったり、または株主配当や株主優待などを利益とするのが一般的です。
これに対し、非上場株式の相続となると、その意味が投資ではなく、「事業承継」の問題になってきます。
中小企業の経営者が死亡した場合、経営者の後を継いで会社を守る責任を負うのは、株式の相続人です。つまり、株式を相続する人が経営者として後を継ぐことになるため、誰が相続するのかは、株価の価値以上に重要なことなのです。
相続する人が決まらないと、会社が危機に陥ることも
生前に事業承継を終えていたり、遺言書ではっきりと後継者が指定されていれば良いのですが、必ずしもそうとは限りません。
なんの対策もないまま経営者が死亡してしまうと、株式をめぐって相続人間で争いが起きることとなります。
次の経営者がはっきり決まらないと、会社の意思決定機関がストップしてしまうため大変危険です。
相続税評価額の算出方法にも大きな違いあり
また、非上場株式の相続におけるもう一つの注意点が相続税です。
上場企業の株式の場合は、以下のように死亡した時点を中心に、いずれかの株価を採用して評価額を算出します。
- 課税時期の月の毎日の最終価格の平均額
- 課税時期の月の前月の毎日の最終価格の平均額
- 課税時期の月の前々月の毎日の最終価格の平均額
これに対し非上場企業の株式については、会社の規模ごとに一定の計算方法のもと算出します。内容が少々複雑なので詳しくは触れませんが、簡単に言うと会社のその時の業績によって評価額が左右されます。
つまり、業績が悪い時に相続が発生すれば、相続税は安くなり、業績が絶好調の時に相続が発生すれば、高額な相続税を後継者が負担することになるのです。
そのため、非上場株式については、できる限り相続という形で継承するのではなく、税理士と相談して株価の引き下げ対策を事前に講じた上で、生前贈与によって株式を継承した方が良いでしょう。
そうすることで、運悪く高額な相続税負担が後継者にのしかかるリスクを回避できます。
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おわりに
このように、株式相続は、上場株式と非上場株式とで手続きのコツやポイントが変わってきます。特に非上場株式については、事業承継とセットで事前対策を講じていくことが重要です。できれば、早いうちから税理士に相談して、適切なタイミングで株式を移転して承継することをおすすめします。
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