内縁の妻(夫)には相続権は認められない!?内縁でも遺産を受け取るための3つの方法とは?
内閣府の調べによると、日本の未婚化は年々進行しているようです。
2015年の国勢調査によれば、30~34歳の方の場合、男性でおよそ2人に1人、女性でおよそ3人に1人が未婚だそうです。この若者の未婚率の上昇は、少子高齢化の一因と言えるかもしれません。
ただ、世の中には結婚はしていなくても、同居同棲していて、夫婦同然に暮らしている方たちも大勢います。例えば良くあるケースが、人気ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」でも話題になった「事実婚」です。
事実婚については、「内縁の夫」や「内縁の妻」などとも呼ばれ、正式な夫婦ではないものの、それに準じた扱いを受けることができます。
では、もしも事実婚の相手方が死亡した場合、その財産を「内縁の妻(夫)」が相続することはできるのでしょうか?
目次
結婚しないと、相続権は認められない
結論から言うと、残念ながら婚姻関係のない間柄の男女間においては、いくら事実婚として周りから認められていても、相続に関してだけは他人と同じ扱いを受けてしまいます。
事実婚で住民票も同一世帯に移している場合、住民票を取得すると「妻(未届)」などと記載されることから、婚姻届は提出していないものの、妻としての相続権があるのでは?またはそれに準じた取り分があるのでは?と思ってしまいますが、残念ながら相続はできません。
内縁の妻が家を追い出される恐れも、、、
相続権がないということは、一切の財産を相続する権利がないということになります。
ですから、例えば内縁の夫との間に子供がいない場合、相続人として内縁の夫の両親や兄弟が該当してくることになります。もしも家の所有権が内縁の夫名義だった場合、その親族たちと内縁の妻との関係が良好でないと、最悪の場合相続人に家を追い出されてしまう恐れもあります。
また、家だけではなく、預金や株式など財産価値のあるものについては、すべて相続人のもとへと渡ってしまうのです。
これではあまりにも内縁の妻がかわいそうですよね。ご安心ください。実は内縁の妻(夫)でも、事前の対策次第では、一定の遺産を受け取る手段が残されています。
内縁の妻(夫)でも遺産を受け取るための3つの方法とは
内縁関係では相続権はありませんが、次の3つの方法を使えば内縁の妻(夫)でも、一定の遺産を受け取ることができます。
方法その1:生前贈与しておく
相続権がない場合は、もしもの時に備えて、生きているうちに一定の財産をパートナーに生前贈与するという方法があります。これであれば誰にも文句は言われません。
また、生前贈与については、年間110万円までの基礎控除を利用できるため、その範囲内で毎年少しずつ贈与をすれば、贈与税もかかりません。
ただ、この方法は高齢の事実婚にはある程度有効ですが、若者の事実婚において、突発的な事故による死亡に備えることは難しくなります。その場合については、次の方法が有効です。
方法その2:遺言書を書いておく
生前に遺言書を書くことで、事実婚の相手方に対しても一定の財産を残すことができます。有効な遺言書を書いておけば、その内容は法定相続分よりも優先されるため、たとえ他に相続人がいたとしても、遺産を受け取ることが可能です。この方法を相続に対し「遺贈」と言います。
ただし、相続人には「遺留分」という法律によって保護されている取り分があるため、「すべての財産を内縁の妻(夫)の〇〇に遺贈する」との遺言書を残したとしても、相続人がそれに納得しなければ、遺留分については最低限相続人が相続することになりますので注意しましょう。
方法その3:生命保険金の受取人に指定する
生命保険に加入する際に、死亡保険金の受取人を内縁の妻(夫)に指定しておけば、相続人に取られてしまうことを防げます。
死亡保険金については、受取人固有の財産として扱われ、そもそも遺産分割の対象にならないため、内縁関係でも問題なく取得できます。ただし、相続税が発生する場合、納税義務は発生しますので注意しましょう。
これらの対策を事前に講じておけば、事実婚でも万が一の際にパートナーの生活を守ることができます。
相続人が誰もいなければ、事実婚でも遺産がもらえる可能性あり
なお、これらの対策をとっていないときでも、事実婚の相手方に相続人が一人もいない場合は、遺産がもらえる可能性があります。
通常、相続人がいない方の財産については、法律で「国庫に帰属する」つまり国のものになると記載されていますが、実はそうなる前に家庭裁判所に対して「特別縁故者の財産分与の申立て」をすることで、一定の遺産を受け取ることができる可能性があります。
特別縁故者とは、以下のいずれかに該当する人のことを言います。
- 被相続人と生計を同じくしていた人
- 被相続人の療養看護に努めた人
- 被相続人と特別の縁故があった人
このうち、事実婚は1に該当するため、特別縁故者として認められる可能性があります。どの程度の財産がもらえるかについては、家庭裁判所が様々な事情を考慮して判断しますので、全財産をもらえる場合もあれば、一定の財産のみとなる場合もあります。
ただ、特別縁故者については、こちらから申立てをしなければ、遺産をもらうことができませんので注意しましょう。
事実婚はもしもの時への備えが重要
婚姻届を出している夫婦の場合は、突然の事故で配偶者が死亡しても必ず相続人となるため安心です。けれども、事実婚の場合は何の相続権もないため、今回ご紹介したような方法で万が一の場合に備えておくことが、パートナーに対する最大の愛情表現と言えるのではないでしょうか。
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