オレンジページ不適切広告で「ネット広告への誤解と意外な仕組み」が話題
今月、料理などの生活情報誌「オレンジページ」のウェブサイト「オレンジページnet」に不適切な広告が表示されると指摘されていた問題で、運営会社が謝罪コメントを発表。そのなかで「弊サイトでは複数の広告ネットワークを利用しており、各広告ネットワーク側の審査やフィルタリングにより、不適切な広告は自動的に排除される設定となっておりますが、今回、その審査をかいくぐった広告が掲載される事態となりました」と説明。この件がきっかけとなり、ネットユーザが普段から目にするネットワーク広告に関する実態や誤解についてSNS上ではさまざまな声があがり、議論を呼んでいる。業界関係者は「普段から頻繁に不適切なコンテンツを閲覧しているから、類似の広告が表示されるというわけではない」「積極的にネットワーク広告を踏まないユーザほど、不適切な広告が表示されやすい」と解説する。料理レシピサイト「クラシル」でも同様の事象が起こり運営元のdelyが釈明コメントを出しているが、なぜ生活情報をメインとするサイトで、こうした問題が生じているのか。
ネットワーク広告とは、そのウェブページを閲覧しているユーザの属性に合った広告を自動で表示するサービスだといわれているが、どのような仕組みなのか。インターネット広告業界関係者はいう。
「広告を出したい企業=広告主が広告代理店を通じてネットワーク広告配信プラットフォーマーに広告を出稿し、その広告配信会社が契約している各サイト上に、閲覧しているユーザの属性や過去の行動などに基づいて、複数の広告のなかから選んで表示させるという仕組みです。仕組みが複雑で広告の配信先が多岐にわたるため、ほとんどの広告主は自社の広告がどのサイトのどのユーザに届いたのかを把握していないのが実情です。
『オレンジページnet』のようなサイトは、できるだけ広告を分別して健全な広告だけを表示させたいと考えているでしょうし、広告配信会社もその点は意識して審査・選別をしているでしょうが、“とにかく誰でも良いから広告を表示させたい”と考える不適切な広告の出稿主企業は、あの手この手でレギュレーションをかいくぐろうとしているためイタチごっこの状態となっています。
どの程度の広告であれば許容するのかという基準は広告配信会社によって差があり、たとえばゲーム系サイトと取引の多い広告配信会社であれば、どうしても肌の露出の占める割合が高い広告も扱わざるを得なくなりますが、広告配信会社としてはビジネスとして売上を上げていく必要があるため、不適切な広告を完全に排除するというのはなかなか難しいのが現実です」
不適切な広告が表示されやすくなる理由
よくいわれるのが、普段から不適切なコンテンツを閲覧している人ほど、類似の広告が表示されやすいということだが、これは事実ではないという。
「たとえば育児中の女性向けアプリやサイトの場合、ユーザの属性やニーズが極めて限定され、広告を出すことによって購入につながる確率が高くなるため、ベビー用品のメーカーや育児中の人向けのサービスを提供する企業などはこぞって出稿したがり、高くなる傾向があります。一方、広告のクリック履歴が少ない“正体不明”のユーザの場合、広告主側は広告を表示させても効果があるのかどうかわからないため、広告を出したいと考える企業は少なくなります。そのような“誰も手を上げない”広告枠には、“誰が相手でもよいので、とにかく広告を出したい”と考える不特定多数を対象とする企業が広告を出すことになります。よって、日頃からネット広告を踏まない人ほど、不適切な広告が表示されやすくなると考えられます」
今回のケースのように、健全なサイトでもしばしば不適切な広告が表示されてしまうのは、出稿する企業が単価を高く設定しているため、広告ネットワーク配信会社が優先的に表示させようとするためではないか、という説明も聞かれるが、実際のところ、どうなのか。
「前述したとおり、ユーザの属性がより明確なほど広告枠の競争率が高まり、単価が高くなります。逆にユーザの属性が不明確だと競争率が低くなり、そういう枠に不特定多数のユーザを対象とする企業が広告を出すことになるため、不適切な広告の単価が高くなるという傾向にはなりにくいのではないでしょうか」
では、見たくない広告を表示させない、もしくは頻度を減らす方法というのは、あるのか。
「たとえばマンションや高級腕時計、自動車といった高額な商品の広告にジャンルを絞って日頃から意識して頻繁に踏むようにしていれば、類似の広告が優先的に表示されるようになり、不適切な広告が表示されにくくなると考えられます」
不適切なネット広告をめぐっては、法律的に一定の規制やルールを定める必要性も指摘されている。昨年9月9日には政府の「こども政策推進会議」が「青少年インターネット環境整備基本計画(第6次)」を策定し、「フィルタリング利用率の向上に向けた青少年インターネット環境整備法上の義務の徹底」や「青少年が青少年有害情報に触れないようにするための取組の推進」「容易な設定が可能なフィルタリングの『カスタマイズ機能』や、『ペアレンタルコントロール機能』の普及推進」を行うとしている。
(文=Business Journal編集部)