ビジネスジャーナル > 企業ニュース > ベビーカー持ちは日本橋三越一択?

ベビーカー持ちなら「日本橋三越」一択、は本当?通路広い&人も少ないで天国

2025.03.20 2025.03.20 21:02 企業
ベビーカー持ちなら「日本橋三越」一択、は本当?通路広い&人も少ないで天国の画像1
日本橋三越本店

 少し前に「子どもがベビーカーのうちは、百貨店のショッピングは日本橋三越本店一択」といった内容のXの投稿が話題となっていた。反響を見ると「確かに平和」「落ち着いて買い物が楽しめる」「お客さんがやさしい」といった声が連なる。日本橋三越はベビーカーを使う方々にとって最適な百貨店なのか。店舗へ出掛けて調べてみた。

 ベビーカーを使って子どもと一緒にデパートや百貨店へショッピングに出かける。残念なことに、今のご時世、こんなごく普通のことを行うのが非常に難しくなっている。駅はエレベーター設置などバリアフリー化が進み、電車はベビーカーを置くスペースが増え、バスも床の低い車両が標準化。タクシーもベビーカーを乗せやすい天井の高いタイプの車が増えるなど、公共交通機関はベビーカーを使っても乗りやすい環境整備が進んでいる。だが、過度なストレスを抱える人が多いこの時代、車内には「混雑しているのにベビーカーで乗ってくるな!」「子どもがギャーギャー泣いてうるさい!」という理由で刺すような視線を向けてくる人がいる可能性があり、移動中は心が休まらない。

 また、東京都内の百貨店は海外からの観光客が多く、巨大なスーツケースを転がしながらショッピングを楽しんでいる人もいるため、ベビーカーとスーツケースがぶつかって子どもが泣き出してしまう可能性も高い。移動中も買い物中も120%気を張った状態でなければならないため、ショッピングを楽しむなんてことはできないというのが現状だ。

駅と百貨店は雨の日でも濡れることなく移動できる

 そうしたなかで話題になっている日本橋三越本店があるのは、日本の道路の起点となっている日本橋。その川の左岸にある店舗は、この地で呉服店を始めてから300年以上、1904 (明治37)年に「デパートメントストア宣言」をして百貨店としてスタートしてから120年以上の歴史を持つ建物。1935(昭和10)年に建てられた写真の本館は、6階に劇場が、建物内の中央の吹き抜けにパイプオルガンが組み込まれた建物で、国の重要文化財に指定されている。

 建物の地下は、地下鉄銀座線、半蔵門線の三越前駅、JR総武線快速の新日本橋駅とつながっており、駅と百貨店は雨の日でも濡れることなく移動できる。築100年以上の建物だが、エレベーターやスロープなどが整備されており、ベビーカーを利用しても店内の移動や店内から駅、店内から通り、店内から駐車場への移動はスムーズだ。

 1階から6階までは通路が広くとってありベビーカーを使っても移動はスムーズ。吹き抜けがある場所に休憩用の椅子が設置されているのもありがたい。7階は催事場があり混雑する場所。訪れた日も「あんこ博覧会」という全国のあんこのスイーツが人気の店がたくさん出店するイベントが行われ、多くの人が行き来していた。

 店を訪れる人を見ると、お孫さんがいるような世代の女性が中心で、海外の観光客は皆無。展示場の通路は他の売り場と比べ少々狭かったものの、スーツケースにぶつかる心配はなさそうだ。屋上は広々とした庭園。この日は風が強く寒かったので屋上に出る人はいなかったが、これから暖かくなっていけば、格好の休憩場所になるだろう。

海外の観光客は皆無

 続いては地下1階へ。移動のエレベーターは大型でベビーカーを乗せても安心のサイズだ。地下1階の食料品売り場、いわゆるデパ地下は、少々高級志向の店が並んでいる。関東でいうと成城石井や紀ノ国屋、関西でいうと、いかりスーパーの惣菜売り場に並ぶような商品が販売されている。

 こちらのフロアも海外の観光客は皆無。商品のラインナップもあってか、7階の催事場同様、心も懐も余裕のありそうなお孫さんのいるような雰囲気の女性が多かった。訪れた日はベビーカーを使った人はいなかったが、ベビーカーで移動したら乗っている小さな子どもにマダムたちが手を振ってくれる、そんな雰囲気のある売り場だった。

対照的な銀座三越

 続いては新館。本館は7階建て(地下1階)に対し、こちらは10階建て(地下2階)と高さはあるが床面積が狭くコンパクト。高級な飲食店やショップ、専門店が入るという特性からなのか、本館と比べると人が少なく、移動も快適だった。

 特筆すべきは6、7階に入っているビックカメラ。子どもを連れて行くのがピッタリなおもちゃ売り場があり、家電などの価格も他店と大差はないが、三越の中にあるからお値段も高級では、という心的なものがハードルになっているのか、訪れる人は少なめ。池袋の店にはたくさんいる海外の人たちも、ここには一人もいなかった。フロアのスペースの関係で、池袋ほど商品のラインナップは豊富ではないが、ゆっくり商品を見て選べる家電量販店というのは、ベビーカーを利用する家族にとってはありがたい存在だろう。

 この取材の後、銀座三越に足を運んでみたが、こちらは海外からの観光客でごった返していた。銀座の街全体も観光客で賑わっていたので、おそらく百貨店で買い物をする海外の人は銀座ですべてを済ませてしまうのだろう。また、日本橋という名前を知っていて、日本橋を観光する人でも「日本橋駅」を利用することから「三越前駅」直結の日本橋三越に立ち寄る人が少ないのかもしれない。

 日本人の利用者もいろんな面で余裕のありそうなシニア世代が多く、高級車で来店する人も多くみられ、仕事で疲れ果て、ストレスを鬼のように抱えているといった雰囲気の人は見られなかった。そんな外国人観光客が見落としてしまいそうな立地と、心に余裕がありそうな客層が中心の日本橋三越はXに投稿された通り、ベビーカーで訪れても安心してショッピングが楽しめる百貨店といえるだろう。

(文=渡辺雅史/ライター)