『源氏物語』には物の怪がたくさん出てきます。「物の怪」というと、いまの若い人たちの多くは宮崎駿のアニメを思い浮かべるかもしれません。でもあの映画でモノノケの正体ははっきり明かされていませんよね。 古い時代に「モノ」は神や霊をさしていたようです。『日本書紀』で「悉くに万物(よろずのもの)を生みたまふ」という場合の「物」は神を意味しました。ただし『古事記』などを見ると、三輪山の祭神「大物主大神」などは疫病の流行をもたらす疫神の性質をもっていたらしく、どちらかというと好ましくない神さまというか、負の力をもつ神や霊をさすことも多かったようです(小山聡子『もののけの日本史』)。 「鬼」という字も面白い。普通は「オニ」と読みますが、「九鬼文書(くかみもんじょ)」のように「カミ」と訓む場合もあります。「鬼」に「云」をつけると「魂」になります。「云」は「ウン」と呼んで雲の意味があります。雲のようにふわふわ
【縣居通信10月】「義之」をどう訓むか・・契沖・真淵・宣長の解釈 「余明軍(よのみやうぐん)の歌一首 標結(しめゆ)ひて 我(わ)が定めてし 住吉(すみのえ)の 浜の小松(こまつ)は 後(のち)もわが松」(『万葉集』巻三 394) (印を付けて自分のものと定めた住吉の浜の小松は、後々も私の松だ。) 「余明軍」は渡来人で百済(くだら)王族系の余氏と推定されます。大伴旅人(おおとものたびと)の従者(「資人」)を勤めました。旅人が死去したときの挽歌5首が『万葉集』に掲載されています。「標」は自分の所有を示すための目印。結婚の約束をすることを「標結ひて」と譬喩的に言っています。歌の訓と口語訳は、岩波文庫『万葉集』(2013年版)によりました。原文は次のようになっています。 印結而 我定義之 住吉乃 浜乃小松者 後毛吾松 (岩波文庫『原文万葉集』より) この原文に対して、古来、多くの歌人や学者が、様
棒手振—「ぼてふり」と読む。江戸の町を行き来していた行商人だ。『守貞漫稿』は棒手振に関して熱心に触れており、全35巻のうち1巻を丸々あてている。「三都(江戸・京都・大坂)ともに小民の生業に、売物を担い、あるいは背負い、市街を呼び巡るもの」とある。 幕府の弱者対策で許可証発行 棒手振は、天秤(てんびん)棒の両端に、商品の入った箱や籠を吊り下げ、棒を肩に担ぎ江戸や大坂で、魚・野菜など食材や食器、箒(ほうき)といった日用品を売り歩いた。 庶民が都市で簡単に営むことができる商いであり、万治2(1659)年、幕府が「振売札」(棒手振の許可証)を発行した時点で、江戸だけで約5900人いた。 5900人という数字は、実に曖昧(あいまい)だ。この時、幕府は商売にかかる税金を徴収したため、税金逃れのために振売札発行を求めなかった闇営業も多くいたと思われる。つまり、実際の人数は想像すらつかない。 棒手振は、何
── 2020年以降は、どのような動きがあったのでしょうか? 2020年にアラブ首長国連邦(UAE)とイスラエルが国交を正常化しました。これ以後、湾岸諸国やアラブ諸国の間でイスラエルとの関係を見直し、正常化に向かう動きが進みました。これをユダヤ教、キリスト教、イスラーム教に共通する預言者アブラハムにちなんでアブラハム合意と呼びます。アメリカのバイデン政権は、サウジアラビアとイスラエルの国交正常化に向けた交渉を仲介し、サウジアラビアがイスラエルとの国交を正常化すれば、アメリカはサウジアラビアの安全を保障すると確約していました。 サウジアラビアのサルマーン国王周辺は、1967年の戦争以前の国境での二国家共存によってパレスチナ問題を解決し、アラブ諸国がイスラエルを承認して国交正常化する、という2002年アラブ平和イニシアチブの原則に変わりがないことを一貫して明言しています。しかし、ムハンマド皇太
ガザのおかげでヨーロッパ哲学の倫理的破綻が露呈したハミッド・ダバシ(試訳=早尾貴紀) 2024年1月18日 もしイラン、シリア、レバノン、トルコが、ロシアと中国に全面的に支援され、武装し、外交的に保護されながら、テルアビブを現在のガザと同じように、3カ月間昼夜を問わず爆撃し、何万人ものイスラエル人を殺害し、数え切れないほどの負傷者を出し、何百万人もの家を失い、この都市を人が住めない瓦礫の山と化す、そのような意志とその実現手段があったとしたら、と想像してみてほしい。それから、イランとその同盟国が、テルアビブの人口の多い地域、病院、シナゴーグ、学校、大学、図書館、あるいは実際に住民のいるどんな場所であれ、そこを意図的に標的にし、民間人の犠牲者を確実に最大化するということがあり、そしてイランと同盟国が、「イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と彼の戦時内閣を探していただけだ」と世界に言ったとした
最近、冊子体の国語辞典なんていうものは、電子辞書やインターネットの普及で、使う人は少なくなりました。電子辞書やインターネットも同じものを載せているものもありますが、何故か紙に印刷されている方が、信頼性があるような気するのは私だけではないような気もしますが、いかがでしょうか。と言ったわけで重い『広辞苑』を紐解いてみますと、ロクジョウというのは ろく-じょう 【鹿茸】鹿の袋角。補精強壮薬とする。徒然草「-を鼻にあてて嗅ぐべからず。小さき虫ありて、鼻より入りて脳を食むといへり」なんて書いてあったりします。袋角を知っているということが前提になっています。でも、池袋は知っているけれど袋角は知らないという人のほうが多いわけです。そこで袋角を引くと次のように書いてあります。ふくろ-づの【袋角】(形が袋に似ているから)シカ科の動物の角で、毎年春に脱落後の再生したての時期のものを指す。骨の芯が裸出せず、皮膚
昨日かなり遅ればせながら、大河ドラマ「光る君へ」の第1回を観た。 力の入ったセットや小道具で、それらしい雰囲気が出ていてよかった。大筋で雰囲気が出ているから、細部にあるアナクロニズム(後の時代のものごとが紛れこむ時代錯誤)が、かえっておもしろい。 「光る君へ」の調度品のしくじりを発見。 藤原兼家の後ろの唐屏風に書かれている人物が明らかに清国人w(平安時代だったら宋代か唐代の人物のはずなのに)#光る君へ pic.twitter.com/zwc1jeaayX — 介 (@suke88887) January 7, 2024 視聴前にこのツイートを見ていたから、多少の先入観があったことは否定できない。けれども、過去を描くのにアナクロニズムはつきものだ。無毒なアナクロニズムなら、アナクロニズムとして美味しく楽しめばいい。 第1回は少女時代の紫式部の話。ちなみに「少女時代の紫式部」という表現もアナク
「もしもし私リカよ、お電話ありがとう」。このひと言から始まる電話の「リカちゃんでんわ」サービス。SNSが当たり前の今、国民的着せ替え人形「リカちゃん」と電話で話せるこのサービスは、アナログながらも昨年55周年を迎えました。 これまで「今どき電話なの?」という社内の声もあるなか、スマホと違って、子どもが自分の意思で手に取れる身近なメディアということで続けてきたそうです。株式会社タカラトミー マーケティングの沼田瑞穂さんと広報の柳寺薫乃さんにお話を伺いました。 ひとりの子どもの夢を叶えた社員 ──「リカちゃんでんわ」が始まったきっかけは? 沼田さん:リカちゃんを発売してまもなくの1967年当時のある日、ひとりのお子様から「リカちゃんはいますか?」と会社に電話が入り、その電話を受けた社員が機転を利かせて「こんにちは、私リカよ」と対応したそうなんです。すると、そのお子様が喜んでくださったと聞いてい
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日時:2012年10月12日 17時30分から 場所:18号館ホール(詳細はこちら) 講師:鈴木 啓二 東京大学大学院 総合文化研究科 地域文化研究専攻 <講義概要> 20世紀初め頃まで、フランス語のcultureという単語には、現在「文化」という語が持つ、「一社会、一国家における、文学・芸術・宗教・道徳などの精神的活動全体」という意味は含まれませんでした。当時フランスでもっぱら用いられていたのは、「文明」(civilisation)という語で、人々はこの一語で、文学・芸術・宗教・道徳から、産業・政治体制・社会制度・風俗習慣・科学的成果等に至る、広範な対象を指し示していました。現在でも、ソルボンヌ大学が外国人学生のために開いている語学・文学講座(1919年創設)は、「フランス文明講座」と名付けられています。 一方、隣国のドイツにおいては、早くから、文化(Kultur)と文明(Zivilis
「日本ローマ字会」の看板が掲げられた事務局。今は看板が一部取り外されている(2019年4月撮影、京都市東山区三条通東大路西入ル) 日本語の表記をローマ字にしようと運動を展開してきた公益社団法人「日本ローマ字会」(京都市東山区)が今年3月に解散した。1921(大正10)年に設立され、民族学者の故・梅棹忠夫さんが第7代会長を務めた。会員の高齢化による減少のため、日本語改革を目指した全国組織が100年を超える歴史の幕を閉じた。 日本のローマ字運動は明治期に結成された団体「羅馬字会」から始まったとされる。その後、東京で「日本ローマ字会」が誕生し、物理学者で東京帝国大教授の田中舘愛橘(たなかだてあいきつ)(1856~1952年)が初代会長を務めた。機関誌を発行し、普及活動を展開した。 しかし、会が第2次世界大戦で財産を失ったため65年、本部を京都に移転した。会員は設立当初、全国に2千人を超えたという
去年10月7日にパレスチナのイスラム組織ハマスがイスラエルに大規模な襲撃を仕掛け、これに対してイスラエルがハマスの壊滅と人質の奪還を掲げてガザ地区への大規模な攻撃を始めてから1年。 ガザ地区は壊滅状態になり、死者は少なくとも4万1000人に上っていますが、激しい攻撃はいまも続いています。 さらに、イスラエルはハマスを支持する勢力を排除しようと隣国レバノンへの侵攻にも踏み切り、また長年対立してきたイランとの攻撃の応酬も繰り返して、中東全体が戦火に包まれる懸念が高まっています。 そもそも「世界で最も解決が困難」といわれてきたパレスチナ問題とは何なのか。 なぜイスラエルとパレスチナは凄惨な対立の歴史を繰り返してきたのか。 かつてエルサレムにも駐在し、この問題を取材し続けてきた鴨志田郷解説委員が分かりやすく解説します。 ※この記事はNHKのWEBサイト「大学生とつくる就活応援ニュースゼミ」の中で2
万物の黎明 人類史を根本からくつがえす (翻訳) 作者:デヴィッド・グレーバー,デヴィッド・ウェングロウ光文社Amazonこの『万物の黎明』は、世の中にはやってもやらなくてもいいようなクソどうでもいい仕事で溢れているのではないかと論を展開した『ブルシット・ジョブ』で知られるデヴィッド・グレーバーの最新作にして、遺作となった大作ノンフィクションである(単著ではなく、考古学の専門家デヴィッド・ウェングロウとの共著)。今回テーマになっているのは、サブタイトルに入っているように、「人類史」だ。 多くの(特に売れている)人類史本には、環境要因に注目したジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』や「虚構」をテーマにしたユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』のように「わかりやすい切り口」が存在するものだが、本書(『万物の黎明』)の特徴の一つは、数多語られてきた「わかりやすい切り口」の「ビッグ・ヒストリ
目次: 目次: はじめに 1. 『資本とイデオロギー』の概略 1.1 .『21世紀の資本』のあらすじ: 1.2. 『資本とイデオロギー』の全体的な話 1.3. 『資本とイデオロギー』のあらすじ 第I~II部:歴史上の格差レジーム/奴隷社会&植民地 第III部:20世紀の大転換 第IV部(その1):政治的対立の次元再考——問題編 第IV部(その2):政治的対立の次元再考——対策案 (第17章) 第IV部(その3):政治的対立の次元再考——対策案 (その他随所) 2. 通読する必要はないと思う 3. タイプ別読み方 『21世紀の資本』の続きとして読みたい人、つまり経済格差とその対応を知りたい人は…… 経済格差への対応を知りたい人は…… 世界各地の格差の変動プロセスの比較に興味ある人は…… 4. 最後に はじめに このたび、ついについに難産の子、ピケティ『資本とイデオロギー』が出ました。 資本と
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