はてなキーワード: CTIとは
フランスの就労指向型生活保護システムを絶賛するブクマカさんは
無知なのか、ダブスタなのか、欧米無条件礼賛思考なのか知らないが、フランスの実態をあまりに無視しすぎている
では、実際にフランスの生活保護の現場では何が起きているのか、見てみよう
https://www.jstage.jst.go.jp/article/spls/8/2/8_20/_pdf/-char/ja
ソーシャルワーカーにとって,担当する地区の労働市場の動向や,具体的な雇用政策の内容を十分に把握し,専門的に就労支援を行うことは困難である
筆者の調査時に開かれた CTI の議題は,「RSA 受給者への派遣業務提供事業をどのように効率よく実施していくか」ということであった。
すなわちパリは,今後2年間(当時)で,1000人分の派遣ポストを民間の派遣会社から購入することになっていた。行政が買い取った派遣ポストへ余すことなく RSA 受給者の就労先としてあてがう
この雇用政策が実施に移される段階で,ソーシャルワーカーは RSA 受給者との面談のなかで,派遣労働可能な RSA 受給者に対して,派遣先への就職を参入契約に盛りこむよう提案するのである。CTI では,当初5つの CTI に割り当てた派遣ポストが各 CTI 内で十分消化できているか監視する。不均衡が生じていれば,他の CTI との調整が行われ,こうして2年後にはパリが派遣会社から買い取ったポストが“無駄なく”そして“効率よく”消化されることを目指すのである
就労支援と言いつつ、実態は派遣会社から派遣枠を買う→それを「効率よく無駄なく消化」するために、生活保護受給者にあてがうべく調整が行われ、受給者は参入契約を盾にとられるので最終的に抗えない
この行政と民間斡旋業者の取引によって、さて何が起きるだろうか
条件の悪いブラックな派遣案件を扱う業者に公金が流れ、劣悪なブラック職場は温存され、労働市場全体の質が低く保たれるという弊害が起きてしまうのだ
他にも、上記リンクの寄稿では、このような興味深いことも書かれている
基礎 RSA では37%,そして活動RSA では12%が,フルタイム労働時間の半分に満たない超短時間労働に従事している状況である。
超短時間労働者率が全被用者の7%でしかないことにかんがみると,基礎 RSA の超短時間労働者は圧倒的に多いと言える。
しかもこのような短時間労働への従事が大半の場合,本人の希望に反してなされている。先のDARES 調査によれば,基礎 RSA の短時間労働の88%が,そして活動 RSA でも短時間労働者の74%の人が,「希望する労働時間よりも少ないためもっと働きたい」と望んでいるのである。
早い話が、自立できるようなまともな仕事は斡旋されず、スキマバイトの売れ残りのようなものを弱い立場の人に押し付ける、みたいな構図なのだ
さて、ここまで色々言ってきたが「受給者の分際で選り好みするな働け」という意見で一貫してるならまだいいのだ。一理はあるから否定はしない
しかし、だ。ここで思い出してほしいのだ。ブクマカによる大阪パソナ生活保護就職サポート大叩きを
https://b.hatena.ne.jp/entry/s/www.jcp.or.jp/akahata/aik24/2024-11-21/2024112101_02_0.html
失業で困窮して生活保護を申請した30代男性は「再スタートを決めて最後のライフライン(生活保護)に頼りました。派遣生活で疲れ果て、安定した正規雇用の職をじっくり探したいと伝えたのに、パソナの派遣職員に『何でもいいから』と言われました」と絶望。「このままでは生活保護を開始できないと言われ、生活できないので、希望とは違う会社にも応募。
なのだが
「邪悪な仕組み」「官製貧困ビジネス」だったわけだが、ここで改めてフランス生活保護の現実を振り返ってみよう
①『何でもいいから』と言われました」と絶望。「このままでは生活保護を開始できないと言われ、生活できないので、希望とは違う会社にも応募」
②「求職活動をしなければ保護が受けられなくなる」などの言葉で、利用者に「指導」を行う違法な事例も報告されている
フランスのRSAを日本で導入すると、少なくとも①と②は違法でも問題でもなくなるのだ
なにせフランスの就労指向型生活保護では①が合法的に行われており、②も首都パリで同様のことが行われていたのだから
「フランス素晴らしい!真似しよう」と主張するなら、大阪パソナの事例は当然導入後は叩けなくなる
また
③「就職サポートの支援ミスマッチは数字を見れば明らかで、ただの大手派遣企業のもうけ口になっている」
も、パリの事例と「基礎 RSA の短時間労働の88%が,そして活動 RSA でも短時間労働者の74%の人が,「希望する労働時間よりも少ないためもっと働きたい」と望んでいるデータがあることから
フランスのRSAでも起きていることであり、「フランス素晴らしい!真似しよう」と主張するなら(以下略
◆結論
まあ、結局「日本でもフランスでも制度理念や目的だけは素晴らしい制度ってあるんですよね、色々と。でもそれだけで良し悪しを判断したらダメだよね」ってことなのだ
散々揉めた高プロや裁量労働制だって、政府の主張する理念や目的だけを聞くと「全然悪くないもの」に聞こえなくもないのだ
でも、だ。こういう制度は「実際に社会にどう実装されて、どんな副作用が起きうるか」までしっかりみて検証しないと、良し悪しの判断なんて到底できない