それは、私がまだ大学生だった頃の夏休みのことだった。地元の小さな商店街をぶらぶらと歩いていると、一軒の古びた駄菓子屋が目に留まった。懐かしさを感じてふらりと中に入ってみると、店内は薄暗く、所狭しと駄菓子が並べられていた。そして、店の奥には小さなお婆さんがちょこんと座っていた。
「いらっしゃい」
掠れた声でそう言ったお婆さんは、背は小さく、顔には深い皺が刻まれていた。しかし、その服装はどこか幼く、フリルやレースの付いたワンピースを着て、頭には大きなリボンをつけていた。まるで、子供が無理をして大人びた服を着ているようにも見えた。
(なんだか不思議な人だな…)
そう思いながら、私は適当にいくつか駄菓子を選び、お婆さんの前に置いた。お婆さんはゆっくりとした手つきで計算をし、代金を告げた。その間、私は何気なくお婆さんの顔を見ていたのだが、ふと、その目に強い光が宿っていることに気づいた。それは、子供のような無邪気さとも、老人特有の達観とも違う、何とも形容しがたい、不思議な光だった。
お婆さんはそう言って、にこりと笑った。その笑顔は、皺くちゃの顔に似合わず、どこかあどけなかった。
「いえ、懐かしくてつい…」
私はそう答えた。すると、お婆さんは少し寂しそうな表情を浮かべ、
「昔はもっと賑やかだったんだけどねぇ…」
と呟いた。
それから、私はお婆さんと他愛のない話をするようになった。お婆さんは、昔この商店街がどれほど賑わっていたか、どんな子供たちが店に来ていたか、楽しそうに話してくれた。その話ぶりは、まるで子供の頃の思い出を語る少女のようだった。
話が弾むにつれ、私はお婆さんに興味を持つようになった。見た目はどう見てもお婆さんなのに、言動や表情はどこか子供っぽい。そのアンバランスさが、私には奇妙な魅力として感じられた。
「お婆さん、おいくつなんですか?」
思い切ってそう聞いてみると、お婆さんは少し戸惑った後、
「…ひ、秘密だよ」
と、照れ笑いを浮かべた。その仕草は、まさに年頃の女の子のようだった。
その時、私はふと、お婆さんのことを「ロリババア」という言葉で表現している自分に気づいた。ネットスラングで使われる、外見は幼い少女だが中身は年老いた女性を指す言葉だ。しかし、目の前にいるお婆さんは、まさにその言葉を体現しているようだった。
それから数日後、私は再びその駄菓子屋を訪れた。お婆さんはいつものように店の奥に座っていた。
「あら、また来てくれたんだね」
お婆さんは嬉しそうに言った。私はお婆さんの前に座り、また他愛のない話をした。その中で、私はお婆さんの過去について少しだけ聞くことができた。お婆さんは、若い頃はとても活発で、色々なことに挑戦していたらしい。しかし、ある出来事をきっかけに、心を閉ざしてしまったという。
「…昔の私は、今の私とは全然違ったんだよ」
お婆さんは遠い目をして言った。その表情は、先日のあどけなさとは打って変わって、深く悲しみに満ちていた。
私は、お婆さんの過去に何があったのか、深く詮索することはしなかった。ただ、お婆さんの背負ってきたものの重さを感じ、胸が締め付けられるような思いがした。
その後も、私は何度かその駄菓子屋を訪れた。お婆さんと話をしていると、心が安らいだ。お婆さんの子供のような無邪気さと、年老いた知恵が混ざり合った言葉は、私にとって不思議な癒しとなっていた。
しかし、夏休みが終わる頃、私は引っ越しのためにその街を離れることになった。最後に駄菓子屋を訪れた時、私はお婆さんに別れを告げた。
「お婆さん、今までありがとうございました」
私は頭を下げた。お婆さんは、少し寂しそうな顔で、
「元気でね」
とだけ言った。
それから数年後、私は偶然その街を訪れる機会があった。懐かしくなって、あの駄菓子屋に行ってみると、店は閉まっており、入り口には「閉店しました」という貼り紙が貼られていた。
私は、お婆さんがどうなったのか、気になったが、知る術はなかった。
今でも、私はあの駄菓子屋と、そこにいた不思議なお婆さんのことを時々思い出す。あの人は一体何者だったのだろうか。本当に「ロリババア」だったのだろうか。
今となっては、全ては夏の日の淡い記憶の中に閉じ込められている。しかし、あの時、確かに私は「本物のロリババア」に会ったのだと、今でもそう思っている。そして、その出会いは、私にとって忘れられない、特別な記憶として、心の中に深く刻まれている。
こんなゴミ箱じゃなくて小説サイトにでも投稿すればいいのに
まあ、なんだ。アップのつもりなんだよ、本人にとっては。ルーティーンを作っているのだ。