ねこはまたさすらいのたびをつづけた。
そこにはもう、だれもあらそっていなかった。
おおきなきがあって、ふかふかのくさがしきつめられ、そよかぜがやさしくふいていた。
かわのほとりでは、きれいなねこたちがたのしそうにすごしている。
ねこはここでしばらくすごすことにきめた。
このくにではけんかもなかった。
みんなおおらかで、しあわせそうにみえた。
ねこは、ここであたらしいせいかつをはじめることにしたのです。
たべものも、すぐにあつまった。
みんなでいっしょにわけあって、たのしくすごした。
ねこは、ほんとうにほっとして、なんにちもそのちでゆったりとしたひをすごした。
そのうち、ねこはおもった。
「こんなにしあわせなくにがあったなんて。でも、なんだかひとつたりないきがする。」
ねこは、ふとしたひにくにのなかをさまよっていると、ひときわあたたかく、ここちよいばしょをみつけた。
それは、としょかんだった。
ねこはそのあたたかさにひかれて、ふらりととしょかんにあがりこんだ。
としょかんのなかは、すっかりあたたかく、まるでねこをむかえるためにあるようなかんきょうだった。
そのうち、ねこはそのとしょかんにあったほんをてにとってみることにした。
すると、びっくりしたことに、そこにあるほんはすべて、まったくおなじものだった。
ひとつもちがうほんがなかった。
ねこはそのほんをよみはじめた。
そのほんには、このくにやくらしかた、せいぎやしあわせについて、しっかりとしたきまりがかかれていた。しかし、ねこはそのほんをよんでも、どうしてもこころがうごかなかった。
ほんのなかには、みんながしあわせでくらすためのきまりがつづられていたが、それがねこにはどうしてもあわなかった。
「みんながこのほんをよんで、みんなおなじことをおもっている。それでほんとうにしあわせなんだろうか?」
ねこはふしぎにおもった。
くにのねこたちは、みんなそのほんをよみ、それしかよまないのでした。
みんな、そのほんにしたがって、しあわせにくらしているつもりだった。
「みんなおなじことをおもっているだけじゃ、ほんとうのしあわせなんてないんじゃないか?」
ねこはつぶやいた。
それでも、ねこはしばらくそのとしょかんにとどまってすごした。
けれど、やがてねこはきづいた。
このとしょかんも、ほんとうのじゆうやしあわせがあるばしょではないと。
ねこはふたたびそのまちをさすらうことにした。
しかし、ねこがねがったような、ばしょはみつかりませんでした。
「どこかに、ほんとうのしあわせがあるばしょがあるのかもしれない。」
どこまでも、どこまでも、またあたらしいばしょをめざして。
なくしたゆめはもどらない( ゚∀゚)o彡°