2025-03-06

ねこ独立国家を作った話③

ねこはまたさすらいのたびをつづけた。

あるひ、ねこはひときわきれいなばしょにたどりついた。

そこにはもう、だれもあらそっていなかった。

おおきなきがあって、ふかふかのくさがしきつめられ、そよかぜがやさしくふいていた。

かわのほとりでは、きれいなねこたちがたのしそうにすごしている。

ねこはここでしばらくすごすことにきめた。

このくにではけんかもなかった。

みんなおおらかで、しあわせそうにみえた。

ねこは、ここであたらしいせいかつをはじめることにしたのです。

たべものも、すぐにあつまった。

みんなでいっしょにわけあって、たのしくすごした。

ねこは、ほんとうにほっとして、なんにちもそのちでゆったりとしたひをすごした。

そのうち、ねこはおもった。

「こんなにしあわせなくにがあったなんて。でも、なんだかひとつたりないきがする。」

ねこは、ふとしたひにくにのなかをさまよっていると、ひときわあたたかく、ここちよいばしょをみつけた。

それは、としょかんだった。

ねこはそのあたたかさにひかれて、ふらりととしょかんにあがりこんだ。

としょかんのなかは、すっかりあたたかく、まるでねこをむかえるためにあるようなかんきょうだった。

ねこはしばらくそこでゆっくりすごすことにした。

そのうち、ねこはそのとしょかんにあったほんをてにとってみることにした。

すると、びっくりしたことに、そこにあるほんはすべて、まったくおなじものだった。

ひとつもちがうほんがなかった。

ねこはそのほんをよみはじめた。

そのほんには、このくにやくらしかた、せいぎやしあわせについて、しっかりとしたきまりがかかれていた。しかし、ねこはそのほんをよんでも、どうしてもこころうごかなかった。

ほんのなかには、みんながしあわせでくらすためのきまりがつづられていたが、それがねこにはどうしてもあわなかった。

「みんながこのほんをよんで、みんなおなじことをおもっている。それでほんとうにしあわせなんだろうか?」

ねこはふしぎにおもった。

ねこはそのほんがたったいっさつしかないことにきづいた。

にのねこたちは、みんなそのほんをよみ、それしかよまないのでした。

それが、ねこたちのしあわせやせいぎのすべてになっていた。

みんな、そのほんにしたがって、しあわせにくらしているつもりだった。

しかし、ねこはそのほんがあまりすきになれなかった。

「みんなおなじことをおもっているだけじゃ、ほんとうのしあわせなんてないんじゃないか?」

ねこはつぶやいた。

それでも、ねこはしばらくそのとしょかんにとどまってすごした。

けれど、やがてねこはきづいた。

このとしょかんも、ほんとうのじゆうやしあわせがあるばしょではないと。

ねこはふたたびそのまちをさすらうことにした。

しかし、ねこがねがったような、ばしょはみつかりませんでした。

「どこかに、ほんとうのしあわせがあるばしょがあるのかもしれない。」

ねこつぶやきまたたびをはじめた。

どこまでも、どこまでも、またあたらしいばしょをめざして。

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