中国当局が最近導入した「住宅検診」、「住宅養老金」および「住宅保険」の三つの制度は、広範な議論を引き起こしています。住宅養老金とは、住宅の将来の維持や修繕のために設立された資金を指します。複数の専門家は、これらの措置が実質的には資金を集めることが目的であり、不動産市場をさらに悪化させる可能性があると指摘しています。
中国の住宅都市農村建設部(以下、住建部)は8月23日、上海を含む22都市でこれら三つの制度を試行すると発表しました。これらの措置は一見有利なように見えますが、発表されるや否や、「資金の出どころ」に関する疑問が噴出し、世論の反発を招きました。住建部は8月24日と25日に連続して四つの公告を発表し、専門家の解説を通じて、世論を沈静化しようとしました。政府は、住宅養老金の公共口座は政府が設立し、国民に負担をかけず、また直接的な出費を求めないとしており、これは住宅の安全を保障するための制度であると説明しています。しかし、世間の反応は冷ややかで、多くのネットユーザーが、最終的には国民が費用を負担することになるのではないか、また制度設計や監督の詳細が不透明であることから、裏で何か不正が行われるのではないかと懸念しています。
これについて、米国の経済学者である黄大衛氏は、大紀元とのインタビューで、中国当局がこの三つの制度を導入する背後には四つの目的があると述べています。
第一に、中国は都市建設や住宅の安全に関する技術が比較的遅れており、多くの既存の住宅が既に、あるいは今後品質問題に直面する可能性が高いことです。当局はこれらの問題を解決する必要性に迫られており、これが主要な目的の一つです。
第二に、この三つの制度を通じて、中国当局は本来政府が負うべき建築設計や施工承認の責任を国民に転嫁しようとしています。現在、国民は保険制度を設立するかどうかを考えるだけでなく、どれだけの保険を購入すべきか、どのように住宅検診を行うべきか、また住宅養老金が十分であるかどうかを心配しなければならなくなっています。
第三に、当局は確かにこの制度を利用して、地方政府の経済収益を増やしたいと考えています。住宅検診、住宅養老金および住宅保険の導入は、実質的に地方政府に新しいインフラプロジェクトを提供しています。さらに、住宅養老金の管理そのものが利息収益を生み出し、住宅保険や検診の実行にも多くの利権が潜んでいます。
第四に、政府は利益を追求する一方で、徐々に責任を回避しようとしています。これは、中国の年金保険や医療保険と同様で、最初は政府が責任を持ちますが、次第に企業や個人に転嫁されていきます。
「国民にとって、過去の建築品質の問題は既に既成事実となっており、責任を追及することはできず、政府に何かを期待することもできません。今後、これらの問題を解決するための費用は国民が負担することになります。」
さらに、黄大衛氏は、政府が一時的に主導したり、表面的に資金を提供したりするかもしれませんが、政府自体が価値を創造せず、最終的にはこれらの費用が国民に転嫁される可能性が高いと指摘しています。
住宅養老金は中国独自の制度です。これについて、米サウスカロライナ大学エイキン校の謝田教授は、大紀元に対し、地方政府はかつて不動産財政を通じて多額の資金を稼ぎ、機関が急速に膨張したと述べています。現在、不動産財政のバブルが崩壊し、中国政府は本来、政府支出を削減するべきですが、不動産税を徴収する勇気がなく、代わりに住宅養老金制度を導入しようとしているようです。
上海市不動産科学研究院が8月26日に発表した統計によると、2007年以降、住宅購入者は住宅の平方メートルあたりの建設コストの5%から8%を「住宅特定修繕資金」として支払っており、団地の公共施設の修繕に充てています。しかし、これらの資金の利用率は極めて低く、全国で1兆元以上の資金が余っており、使用されたのはわずか10%程度です。
謝田氏は、国民が本来享受すべき住宅特定修繕基金は、申請手続きが煩雑で、承認も困難であり、実際に利用できるのはごくわずかだと指摘しています。
住建部は、既存の住宅のうち老朽化した物件の割合が約40%であり、その多くが修繕を必要としていると明らかにしました。また、『中国不動産金融』によると、2000年以前に建設された住宅の割合は約27.55%であり、今後、築年数30年以上の建物の割合が急増する見込みです。
謝田氏は、中国の住宅は70年の使用権しか持たないため、中共が土地を収用するときは、住宅と土地を一緒に収用することになると述べています。明らかに、中共は老朽化した住宅を収用するつもりはなく、住宅養老金制度を導入する目的は、国民の資金を利用してこれらの住宅の価値を維持することです。
中国当局が繰り返し住宅養老金は国民に出費を強いるものではないと主張しているにもかかわらず、ネットユーザーたちはこれがただの時間稼ぎではないかと疑問視しています。複数の専門家は大紀元に対し、制度が進むにつれて、個人負担を増やすためのさまざまな理由が出てくるだろうと述べています。中国の医療保険制度に似ており、公共口座の資金が不足した場合、個人口座の負担が大幅に増加するでしょう。
アメリカの財拡不動産投資会社の蒋品超総裁も、中共がさまざまな「制度」を通じて国民の財布の中身を自分の懐に入れようとしていると指摘しています。
彼は、中国の住宅権利は70年しかなく、通常の所有権とは異なるため、住宅所有権証書を持っている人は実際には長期借家人のようなものであり、家主は政府だと述べています。そのため、住宅検診の費用は本来政府が負担すべきだと考えています。
蒋品超氏は、将来的に住宅の売買取引において、当局が住宅検診を強制し、その費用を徴収する可能性があると予測しています。最終的には国民がこれらの費用を受け入れるしかない状況になるでしょう。
蒋品超氏はまた、これらの措置が最終的に中国の住宅市場をさらに悪化させると考えています。
「中国の不動産市場はまだ底を打っていません。当局が推進するさまざまな『制度』は、購買者に非常に悪い影響を与えるでしょう。国民は政府の行動を見て、より多くの財政的損失を被ることになると感じているため、購入意欲があってもそれを断念するかもしれません。また、住宅を所有している人々も、早急に住宅を市場に出すことを考えるでしょう。これにより、中国の不動産市場はさらに悪化するでしょう。」
(翻訳・吉原木子)