最近、中国の公式発表により、中国国内で高病原性鳥インフルエンザ(人が感染する鳥インフルエンザ)の発生が確認されたことが明らかになりました。また、一部の病院では、感染した患者に対し、過去10日間に家禽との接触があったかを申告するよう求める注意書きが掲示されているとの報道もあります。専門家は、中国当局がこれまで感染状況を隠蔽しようとしてきたものの、もはや事態を覆い隠すことは不可能になったと分析しています。
2月27日、中国の公式メディア『北京日報』が報じたところによると、中国国務院の感染症対策チームは、全国各地に対し春季の感染症対策を事前に準備するよう通達を出しました。この通達では、急性呼吸器感染症の監視体制の強化や、新型コロナウイルスの多角的な監視を進めるよう求めています。また、ノロウイルスが一部地域や特定の施設で集団感染を引き起こしていることに言及するとともに、初めてサル痘や鳥インフルエンザといった新たな感染症の発生を認めました。ただし、これらの感染症は「散発的で、発生頻度は低い」と強調しています。
元米陸軍研究所のウイルス学研究員である林暁旭博士は、『大紀元』の取材に対し、「国務院の感染症対策チームが春季の感染症対策を『事前に』準備するよう求めたこと自体が、すでに感染症の広がりを示唆している」と指摘しました。しかし、政府の発表は依然として曖昧で、状況の深刻さを矮小化していると述べています。政府は、鳥インフルエンザの感染が発生していることを認めつつも、「散発的で偶発的なもの」と説明するにとどまり、具体的な感染者数、重症者数、死亡者数を公表していません。さらに、どの地域で感染が確認されているのか、どの地域が高リスクなのかについても詳細を明かしておらず、情報の不透明性が極めて無責任であると批判しました。
一方、上海の病院では、すでに患者に対して家禽との接触歴の報告を求めています。ある患者がSNSで投稿した内容によると、2月16日に病院の救急外来を訪れた際、受付に注意喚起の掲示がありました。
また、広西チワン族自治区・南寧市のネットユーザーは、地元の病院で鳥インフルエンザのヒト-ヒト感染が確認されたと投稿し、すでに患者の治療が行われていることを明かしました。
2月28日、湖南省懐化市の公式メディアは、2月23日から25日にかけて市内で「2025年衛生緊急対応能力向上および呼吸器感染症対策研修会」が開催されたと報じました。この研修には、市・県レベルの疾病管理センターから140人以上が参加し、インフルエンザ、新型コロナウイルス、鳥インフルエンザなど呼吸器感染症の対策について学びました。
これについて、林暁旭博士は、「政府は複数の感染症が同時に発生しているかのような印象を与えることで、鳥インフルエンザに対する国民の関心を逸らそうとしている」と分析しました。実際、過去1年間で中東ではMERS(中東呼吸器症候群)、東南アジアや南アジアではデング熱、アフガニスタンやパキスタンでは麻疹の流行が報告されています。しかし、これらの感染症は緊急の防疫演習を必要とするレベルには達していません。
さらに、上海の病院が患者に家禽との接触歴や渡航歴の報告を求めていることからも、当局が最も懸念しているのは鳥インフルエンザの拡大であることが分かります。
ある鳥インフルエンザ感染者の家族は、『大紀元』の取材に対し、家族が最初は咳や発熱の症状があり、普通の風邪と誤診されたが、最終的にH5N1型鳥インフルエンザに感染していたことが確認されたと明かしました。最初に診察を受けた病院ではH5N1ウイルスを特定できず、患者は数日間の入院治療を経て一度帰宅しました。しかし、症状が急激に悪化し、再び入院することになり、最終的に人工肺(ECMO)治療を受ける事態にまで至りました。その後、上級の疾病管理センターでの検査によってH5N1型鳥インフルエンザの感染が確定し、さらに国家疾病管理センターもこれを確認しました。多額の医療費を費やしたものの、最終的に患者は多臓器不全により死亡しました。
また、ある患者の親が投稿した内容によると、現在病院で行われている「呼吸器系ウイルス6項目PCR検査」の費用は400元(約8,000円)にもなり、患者や家族が自ら希望しない限り、病院側はこの検査を実施せず、基本的な血液検査のみで診断を行っているとのことです。この親は「昨年、子どもが百日咳に感染した際、医師は最初、検査をしたがらなかった。なぜなら、もし陽性と判明すれば、疾病管理センターに報告義務が生じるためだ」とも指摘しています。結局、強く要求した結果、ようやく検査が実施され、百日咳と診断されました。
中国当局はH5N1型鳥インフルエンザの感染拡大を隠蔽しながら、各地で大規模な隔離施設を極秘裏に設置しています。公開情報によれば、昨年以降、中国各地の疾病管理センターは何度も感染症防疫演習を実施しており、その主な対象となっているのがH5N1型鳥インフルエンザです。
現在、中国当局は鳥インフルエンザの発生を低調に認めているものの、具体的な感染者数や重症者数、感染の深刻度についての詳細な情報は公表していません。しかし、病院ではすでに患者の家禽との接触歴を厳しく確認し始めており、一部地域ではヒト-ヒト感染の疑いも出てきています。専門家は、政府の情報隠蔽が極めて危険な行為であると警告しており、国民は警戒を怠らず、感染防止に努めるべきだと呼びかけています。
(翻訳・吉原希子)