一瞬のきらめきを切り取って。「青春小説」特集

消毒液の匂いを嗅いで思い出すのは、学生時代の頃の思い出。保健室登校であったことからほとんど印象的な記憶がない私にも、唯一青春と呼べるような思い出があって……。クラスで一番影の薄い主人公・美姫が、ひょんなことから知り合った人気者の少女・光に青春を教えて貰う物語。

性格の異なるふたりが仲を縮めていく様子や、光との出会いによって主人公の世界が広がる展開に引き込まれます。青春を学んだ主人公の変化が分かるラストにも注目です！

主人公の久地君花は、高校の同級生である羽崎奈央に甘味処に誘われた。「ジミカ」と不躾なあだ名で呼んでくる彼女の内心を知るため、迷いながらも承諾をするが……。昔の楽しかった思い出やとある約束が織りなす、幼馴染ふたりの友情物語。

奈央の正体が分かったあとのテンポの良い会話に引き込まれます。小学校の頃の可愛らしいふたりの思い出の数々に、ほっこりすること間違いなしです！

現代国語は、私にとって特別な授業だった。なぜなら、クラスメイトの冬野くんの朗読を聴けるかもしれないから。彼に対して密かに想いを寄せる私は、友人の手助けによって花火大会を冬野くんと過ごすことになり……。声がきっかけで恋に落ちた主人公の、キュンとする恋愛物語。

徐々に二人が想いを通わせていく過程がとても可愛らしく、目が離せません！冬野くんの真っ直ぐな気持ちが伝わる台詞の数々に惹きつけられます。

ここ半年、思うように絵が描けない美大生の私。ある日の大学からアパートへの帰り道、民家の窓から優しい出汁のにおいが漂ってきて……。おいしい食事の香りでスランプを脱却する、主人公の穏やかな日常を描いたお話。

繊細な食事の描写に、思わずお腹が空いてしまう作品です。主人公が懐かしいお味噌汁の香りによって描きたい絵が思い浮かんでくるという展開に心温まります！