低侵襲的な食性解析を実現するため,飼育下ハンドウイルカ計21個体の糞,垢と母乳の濃縮係数(Δ13CとΔ15N)を算出した。採便個体には複数魚種を組み合わせて給餌し,垢と母乳採取個体には約2か月半,単一魚種を給餌した。糞,垢と母乳におけるΔ13CとΔ15Nはそれぞれ,0.43±0.64‰と−1.52±0.55‰,1.47±0.17‰と1.33±0.36‰,0.44±0.26‰と1.44±0.17‰と算出された。ばらつきはいずれの試料でも十分小さく,摂餌生態の解明に実用可能であると考えられた。
我々はこれまでに有害赤潮藻Karenia mikimotoiのクロロフィル蛍光スペクトルのピーク波長が他種より僅かに移動していること,さらにその移動の程度を表す指標FSI(Fluorescence spectral Shift Index)を用いた有害赤潮藻の存在検知法の有効性を報告した。本研究では,新たに考案した細胞密度推定法を現場観測データに適用した結果,K. mikimotoi細胞の存在を高い真陽性率で検出判定し,推定密度と検鏡密度の対数値間に有意な正相関が観察された。
日本各地で漁獲されたコモンフグにつき,マウス毒性試験で各部位の毒力を求めた。その結果,本種の毒性は,漁獲域により異なるものの,総じてきわめて高く,皮,肝臓,卵巣,精巣のいずれも‘猛毒’の個体が出現した。筋肉の毒力は,凍結魚または鮮魚では‘無毒’ないし‘弱毒’であったが,凍結解凍魚では‘強毒’の個体もみられた。筋肉の毒性に対する凍結解凍の影響について実験的な検証を行ったところ,凍結のみではほとんど影響はないが,解凍により有毒部位,特に皮から毒が溶出し,その一部が筋肉に移行することが示された。
小型ハクジラ類の鯨肉食品の付加価値向上を目指し,和歌山県太地町で水揚げされた5種を対象として,脂皮,筋肉,胸びれの一般栄養成分,脂肪酸組成,n-3系高度不飽和脂肪酸の含有量の分析を行った。脂皮の一般栄養成分には全ての項目において有意な種差が認められたが,筋肉と胸びれでは種差はほとんどなかった。脂肪酸では,すべての種および部位においてオレイン酸の含有率が最も高かった。ハナゴンドウの筋肉と脂皮における高度不飽和脂肪酸含有率は他種より高く,特に脂皮におけるDHA含有量は最も多かった。
富山湾で漁獲されるウマヅラハギの可食部(普通筋および血合筋)に占める血合筋の割合について,周年にわたり毎月調べ,雌雄を比較した。その結果,雄の血合筋の割合が周年,有意に高いことが明らかとなり,性的二型と考えられた。また,本種の産卵期(5–7月頃)は他の期間と比べ雌雄とも血合筋の割合が上昇した。さらに,血合筋の割合と生殖腺体指数との関係には,雄に正の相関(r=0.48)が認められ,雄の繁殖行動と関連する可能性があると考えられた。