厚生労働省が10日発表した毎月勤労統計調査(従業員5人以上)によると、2025年1月の実質賃金が前年同月比で1.8%減少したことが明らかになった。物価上昇が賃金の伸びを上回ったことが主な原因としている。
実質賃金とは、名目賃金(現金給与総額)から物価変動の影響を除いた指標であり、労働者の購買力を示す重要な指標だ。1月の消費者物価指数(CPI)は、生鮮食品を除く総合指数(コアCPI)が前年同月比3.2%上昇し、物価上昇が加速している。特に食品価格の高騰が家計に大きな負担を与えており、生鮮食品以外の食料品やエネルギー価格の上昇が顕著だった。
一方で、名目賃金の伸びは限定的であり、物価上昇に追いついていない。2024年から続く円安や輸入コストの増加が国内物価を押し上げる一因となっており、これが実質賃金の低下に拍車をかけ、消費者心理に与える影響も懸念される。
また、2025年春闘では賃上げ率は高水準で維持される見通しだ。ブルームバーグによると、都内で開催した自民党大会であいさつした日本最大の労働組合の全国組織である連合の芳野友子会長は9日、2025年春闘について、物価高に負けない高水準の賃上げを求めていく考えを表明している。
その一方で、企業業績の伸びが2024年と比べて鈍化しており、企業の利益が伸び悩む中では、賃金を大幅に引き上げる余力が限られるため、賃上げ率が物価上昇率を大きく超えることは難しいとの見方もある。賃上げをして、企業の経営が苦しくなるようでは本末転倒だ。
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