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日本学術会議 特殊法人化へ 2026年10月移行の法案を閣議決定

2025/03/07
更新: 2025/03/07

政府は2025年3月7日、日本学術会議を2026年10月に「国の特別機関」から「特殊法人」へ移行させる新しい日本学術会議法案を閣議決定した。この法案は、学術会議の独立性と透明性の向上を目指すものだが、一部で懸念の声も上がっている。

法案の主な内容は以下の通りである。まず、学術会議を国内外に向けた日本の科学者の代表機関と位置づけ、その運営について国は「自主性および自律性に常に配慮しなければならない」と明記した。会員の選考方法も大きく変更され、首相による任命制度を廃止し、学術会議総会の決議で選任する仕組みに改める。

会員数は現行の210人から250人に増員される。任期は現在と同じ6年だが、再任を1回まで認めることになった。また、定年年齢は70歳から75歳に引き上げられる。

一方で、運営の透明性を高めるため、新たに「監事」や「評価委員会」を設置する。監事は首相が任命し、業務や財務を監査する役割を担う。内閣府に設置される評価委員会は、学術会議の活動計画や実績を評価する。

この法案の背景には、2020年に当時の菅義偉首相が学術会議の推薦した会員候補6人の任命を拒否した問題がある。これを機に組織の見直しが始まり、今回の法案につながった。

2020年の任命拒否問題

2020年、菅義偉首相(当時)が日本学術会議の新会員候補6人の任命を拒否した。菅首相は明確な理由を述べていないが、「総合的、俯瞰的な活動を確保する観点から判断した」と説明している。任命拒否された6名の研究者は、過去に安全保障関連法案、特定秘密保護法案、共謀罪の創設を含む組織的犯罪処罰法改正案などに反対の立場を表明してきた点が共通しているとの指摘がある。

政府は、日本学術会議が内閣総理大臣の所管であり、首相が会員の人事等を通じて一定の監督権を行使することは法律上可能であるとの立場をとっている。

反対の声

光石衛学術会議会長は2025年2月27日の談話で、新法人の独立性などへの懸念を表明している。会員選考の自主性や安定的な財政基盤について、懸念が払拭されていないと指摘している。

2025年2月18日には、日本学術会議の歴代会長6人が、政府の特殊法人化法案に対して強い懸念を表明し、その撤回を求める声明を発表した。声明を発表したのは、吉川弘之、黒川清、広渡清吾、大西隆、山極寿一、梶田隆章の6氏である。これらの歴代会長は、政府が今通常国会に提出を目指している、日本学術会議を「国の特別機関」から「特殊法人」に移行させる法案について、「政府からの独立性と自主性を損なうことを強く懸念せざるを得ない」と述べている。

政府は今国会での法案成立を目指している。成立すれば、日本の科学者コミュニティの在り方に大きな変化をもたらす可能性がある。今後の国会審議や学術界の反応が注目される。

エポックタイムズ記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。