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胃腸と肺を守る漢方茶

漢方茶で整える、蛇年の風による胃腸と肺の不調

今年の春は風が強く、胃腸の調子を崩しやすいと感じている人が多いかもしれません。それは、2025年が「乙巳(きのとみ)年」、つまり蛇年だからです。

『黄帝内経』によると、自然界の四季の変化は「木・火・土・金・水」の五行が交互に主導することで生じます。乙巳年の五行の特徴として、金の力が弱く、木の力が強いため、今年は一年を通して木の気(風の気)が気候を支配します。そのため、例年よりも風が強く、特に上半期にその傾向が顕著になります。

もともと春は木の気が優勢な季節であり、風が多いものです。しかし、今年は年間を通じて木の気が強く、さらに木の気を抑える金の気が弱いため、春の風は例年以上に勢いを増しています。特に日本は東に位置し、東は五行で木の気に属するため、これらの要因が重なり、今年の日本の春は特に風が強くなると考えられます。

『内経』では、人間の体も小宇宙であり、五行の仕組みによって調整されていると考えます。五臓の背後には経絡の流れがあり、その気の巡りが人体の四季の変化を生み出します。つまり、病気とは人体の「気候バランスの乱れ」であり、五行のエネルギーが崩れた結果として生じるのです。肝経は木の気に属し、外界とのつながりを持っています。

そのため、地球全体の木の気が強まり風が激しくなると、人体の肝の気も過剰に活発になり、バランスを崩します。五行の理論では「木は土を剋(こく)する」とされ、脾胃(ひい:消化器系)は土の気に属するため、肝の木の気が強くなると脾胃が抑え込まれ、消化機能が乱れやすくなります。その結果、胃腸の不調を訴える人が増え、痛風やリウマチなど、風に関係する症状も悪化しやすくなります。

また、今年は金の気が弱いため、木の気を抑える力が働かず、逆に木の気が金の気を抑え込んでしまいます。人体では肺が金の気に属しているため、肺の機能が低下し、ウイルスや細菌に感染しやすくなります。その結果、呼吸器系の病気や皮膚のトラブルが増え、花粉症などのアレルギー症状も例年より悪化しやすく、長引く可能性があります。

つまり、今年は肝の気が過剰になり、風邪(ふうじゃ)が体内に入り込み、脾胃や肺が影響を受けやすい年です。そのため、胃腸の不調、気血不足、めまい、不眠、関節や筋肉の痛み、アレルギー、風邪、肺の病気などが起こりやすくなります。これを予防するためには、漢方茶を取り入れて、風の気を流し肝の働きを整え、脾を強め肺を養い、気血を補うことが大切です。五行のバランスを整えることで、さまざまな病気を防ぐことができるでしょう。

健脾護胃茶(風の気による脾胃の負担を和らげ、消化機能を整える)

適した人:脾胃(ひい)が弱い(胃腸が弱い)、食欲不振、水分代謝が悪くむくみやすい、下痢しやすい、疲れやすい人

主な効果:脾を強め、気を補う。胃を落ち着かせ、下痢を抑える。体の余分な湿気を取り除き、むくみを防ぐ

材料:

  • 炒薏米(はとむぎ) 10g 【脾を強め、湿気を取り除く】
  • 陳皮(ちんぴ:乾燥させたみかんの皮) 5g 【気の巡りを良くし、脾を助ける】
  • 白朮(びゃくじゅつ) 3g 【脾を強め、気を補う】
  • 黄耆(おうぎ) 5g 【気を補い、体の抵抗力を高める】
  • 水 500ml

作り方:

材料をすべて鍋に入れ、水500mlを加える。

弱火で15分煮る。煮出したお茶を飲む。2~3回ほどお湯を足して繰り返し飲める。

はとむぎには、脾を強め、湿気を取り除く作用があります(Shutterstock)

~説明~

春は風の気(木の気)が強くなり、脾胃(胃腸)がダメージを受けやすくなります。白朮と黄耆が気を補い、脾胃を強めて保護し、湿気による消化不良を防ぎます。また、陳皮は気の巡りを良くし、炒薏米は余分な水分を排出して、脾虚(脾の弱り)によるむくみや疲労を防ぎます。

 

平肝養肺茶(風邪の影響を和らげ、肺を守り、アレルギーや呼吸器トラブルを防ぐ)

適した人:花粉症、鼻炎、咳が出やすい、喉のかゆみがある、肺が弱い人

主な効果:肝を鎮め、肺を養う(春の肝の過剰な働きを抑え、肺を潤す)。熱を下げ、風邪を和らげる(体内の余分な熱を取り除き、風邪の影響を軽減)。アレルギー症状の軽減

材料:

  • 菊花(きくのはな) 5g 【肝の熱を取り、目の疲れを和らげる】
  • 桑葉(くわのは) 5g 【肺を潤し、乾燥を防ぐ】
  • 枸杞(くこの実) 5g 【肝を養い、潤いを補う】
  • 蘆根(ろこん) 3g 【熱を冷まし、潤いを与える】
  • 熱湯 500ml

作り方:

材料をすべてカップに入れ、熱湯を注ぐ。10分ほど蒸らしてから飲む。

1~2回お湯を足して飲める。味が薄くなったら少量の蜂蜜を加えてもOK。

菊の花とクコの実は、肝臓に良いとされる食材です(Shutterstock)

~説明~

春は風邪(ふうじゃ)が強く、肺の気(金の気)が弱まりやすいため、アレルギーや乾燥による咳が起こりやすくなります。桑葉と蘆根が肺の熱を冷まし、乾燥を防いで喉や呼吸器を守ります。 また、菊花と枸杞が肝の働きを調整し、目の乾燥やイライラを和らげます。

 

益気防風茶(免疫力を高め、風邪の侵入を防ぐ)

適した人:免疫力が低い、風邪をひきやすい、気虚(ききょ:エネルギー不足)で疲れやすい人

主な効果:気を補い、バリア機能を強化(外部からの風邪(ふうじゃ)を防ぐ)。免疫力を高める。風寒を追い払い、風邪を予防する

材料:

  • 黄耆(おうぎ) 5g 【気を補い、体表の防御力を強化】
  • 防風(ぼうふう) 3g 【風邪を取り除き、体を守る】
  • 紅棗(なつめ) 2個(種を除く)【気を補い、血を養う】
  • 水 500ml

作り方:

材料をすべて鍋に入れ、水500mlを加える。

弱火で15分煮る。煮出したお茶を飲む。1回お湯を足して繰り返し飲める。

なつめは、血の巡りを良くするとされる食材です(Shutterstock)

~説明~

今年は風邪(ふうじゃ)が強く、風邪をひきやすかったり、疲れがたまりやすかったりします。黄耆と防風を組み合わせることで、体の防御力を高め、風邪の侵入を防ぎます。 また、紅棗は気と血を補い、風邪によるエネルギー消耗を防いで体力を維持します。

 

養血安神茶(春のイライラを鎮め、ストレスを和らげ、安眠を助ける)

適した人:眠りが浅い、ストレスが多い、気持ちが落ち着かずイライラしやすい人

主な効果:血を養い、心を落ち着かせる(リラックス効果、安眠のサポート)肝の気を整え、情緒を安定させる。脾の働きを助け、不安感や消化不良を防ぐ

材料:

  • 百合(ゆりの根) 5g 【心を落ち着かせ、眠りを深くする】
  • 茯苓(ぶくりょう) 5g 【脾の働きを助け、心を安定させる】
  • 酸棗仁(さんそうにん) 3g 【血を養い、神経を落ち着かせる】
  • 水 500ml

作り方:

材料をすべて鍋に入れ、水500mlを加える。

弱火で10~15分煮る。煮出したお茶を飲む。1回お湯を足して繰り返し飲める。

ゆりの根は、心を落ち着かせ、安眠を助ける食材です(Shutterstock)

~説明~

春は風の気(木の気)が強まり、気持ちが不安定になったり、イライラしたりしやすい時期です。これが原因で眠れなくなったり、ストレスを感じやすくなったりすることもあります。酸棗仁と百合が神経を落ち着かせ、リラックスしやすい状態を作り、安眠をサポートします。また、茯苓は脾を強め、肝の過剰な働きによる不安感や消化不良を防ぎます。

 

禁忌事項

健脾護胃茶:適量に飲むこと。過剰に摂取すると体調を崩す可能性がある。

平肝養肺茶:体が冷えやすい人や脾胃(胃腸)が弱い人は、長期間または過剰に飲むことを避ける。胃の不調を引き起こす可能性があるため。妊娠中・授乳中の方は、医師の指導のもとで使用すること。

益気防風茶:風邪の発熱時、外からの寒気による風邪、急性疾患がある場合は飲まないこと。腎虚(腎の機能が弱い)やアレルギーの既往がある人は慎重に使用すること。

養血安神茶:体が冷えやすい人、脾胃が弱い人は慎重に飲むこと。胃腸の不調がひどい場合は、過剰に飲まないようにすること。

 

妊娠中・授乳中の方、慢性疾患(糖尿病、高血圧など)がある方は、飲用前に医師や漢方専門家に相談すること。

体質が弱い方や、薬を服用中の方は、長期間の飲用を避けること。特に、薬との相互作用に注意すること。

 

(翻訳編集 華山律)

白玉煕
文化面担当の編集者。中国の古典的な医療や漢方に深い見識があり、『黄帝内経』や『傷寒論』、『神農本草経』などの古文書を研究している。人体は小さな宇宙であるという中国古来の理論に基づき、漢方の奥深さをわかりやすく伝えている。