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寝るときに靴下を履くメリットとデメリット

「寝るときに靴下を履くのは良いのか?」— これは一見すると些細なことのようですが、実は意見が分かれる健康の話題です。靴下を履いて寝ると体に良く、眠りやすくなるという人もいれば、素足のほうが健康的だと考える人もいます。では、どちらのほうが本当に良いのでしょうか?

この記事では、東洋医学の知恵と最新の科学研究をもとに、具体的なデータや事例を交えながら、その答えを探ります。

靴下を履いて寝るメリット

東洋医学では、足は「経絡(けいらく)」が集まる場所とされています。経絡とは、体内のエネルギーが流れる通路のことで、特に足の裏はエネルギーが出入りする重要なポイントです。五臓六腑とも深く関わりがあり、健康に大きく影響を与えます。中でも「足少陰腎経(そくしょういんじんけい)」という経絡は、足の裏から始まり、脚や胴体を通って頭部やさまざまな臓器へとつながっています。これは腎臓と全身を結ぶ大切なルートであり、体のエネルギー調整や生命力の維持に欠かせません。

そのため、靴下を履くことで得られるメリットには、次のようなものがあります。

○冷えを防ぎ、体を温める

東洋医学では、「足が温まると全身が安定する」と考えられています。靴下を履いて寝ることで、足の冷えを防ぎ、体温を保ちやすくなります。特に、体が冷えやすい「陽虚(ようきょ)」の体質の人は、寒さを感じやすく、手足が冷たくなりがちです。こうした人にとって、靴下を履いて寝ることは、体を温めるのに効果的な方法の一つです。

○エネルギーの巡りを促進する

足を温めることで、体内のエネルギーや血流の流れがスムーズになり、特に末端の血行が改善されます。これにより、夜間の足のつり(こむら返り)のリスクを軽減することができます。足のつりは、多くの中高年にとって睡眠中の悩みの一つですが、靴下を履くことで予防につながる可能性があります。

ある研究では、靴下を履いて寝ることで睡眠の質が向上することが確認されています。具体的には、入眠までの時間が7分短縮し、総睡眠時間が32分延びました。さらに、夜中に目覚める回数が7回減少し、睡眠効率も7.6%向上したという結果が出ています。

靴下を履くことで足が温まり、血流が良くなります。その結果、血管が広がり、体の熱がスムーズに四肢へ移動し、体の中心部の温度が下がります。この体温の変化が自然な眠気を促し、より早く深く眠ることにつながります。

○末端の血行を改善する

高齢者や糖尿病の人は、末端の血行が悪くなりやすい傾向があります。靴下を履くことで、足の冷えやしびれを軽減し、睡眠の質を向上させる効果が期待できます。

ある65歳の女性の患者は、長年にわたって不眠に悩んでおり、手足の冷えも常に感じていました。東洋医学の治療を受けながら、寝るときに薄手の綿の靴下を履くようにしたところ、1か月後には睡眠の質が大幅に改善しました。

このケースからも、足を温めることが睡眠の質を向上させるのに有効であることがわかります。

 

靴下を履かないメリット

しかし、靴下を履くことがすべての人にとって良いわけではありません。東洋医学では、過度に体を温めるとかえって逆効果になることがあると考えられています。特に、陰虚(いんきょ)の体質の人には注意が必要です。陰虚体質とは、血液や体内の潤い(津液)が不足し、エネルギーのバランスを保てず、体内に余分な熱がこもりやすい状態を指します。

このような人は、のぼせやすく、手のひらや足の裏が熱くなりがちです。そのため、適度な涼しさが体の熱を逃がし、内熱がこもるのを防ぐのに役立ちます。もし通気性の悪い靴下や厚手の靴下を履くと、熱がこもって蒸れやすくなり、かえって睡眠の質を下げてしまう可能性があります。

現代の科学では、深い眠りに入るためには、体の中心部の温度を下げることが重要だと考えられています。体の深部温度が下がると、睡眠ホルモンとも呼ばれるメラトニンの分泌が増え、睡眠リズムが整いやすくなります。しかし、厚手の靴下を履くことで体の熱がこもると、この自然な体温調節が妨げられ、深い眠りの妨げになることがあります。

さらに、靴下を履かないことで足を乾燥した状態に保ち、真菌感染(いわゆる水虫)のリスクを減らすことができます。湿気の多い環境は真菌が繁殖しやすく、水虫などの皮膚病を引き起こしやすいため、通気性を保つことは重要です。

実際に、35歳の男性患者が、足のほてりによって毎晩途中で目が覚めてしまうという悩みを抱えていました。そこで、寝る前に足湯をし、その後は靴下を履かずに寝るようにしたところ、睡眠の質が大幅に改善したそうです。

このように、「温めて眠る」のが合う人もいれば、「熱を逃がして眠る」のが合う人もいるため、靴下を履くかどうかは体質に応じて選ぶことが大切です。特に冬場は、手足が冷えやすい人には靴下が有効ですが、手足が熱くなりやすい人には逆効果になることもあります。体質が中間的で特に問題がない場合は、自分が心地よいと感じるほうを選ぶのが良いでしょう。

 

靴下の選び方

靴下を選ぶ際は、通気性がありつつも保温性のあるものが理想的です。おすすめなのは、綿やウールなどの天然素材の靴下です。これらは柔らかく、通気性にも優れているため、快適に過ごせます。また、靴下のゴム口がきつすぎると血流を妨げる可能性があるため、締めつけの少ないものを選ぶことが大切です。

 

靴下の代わりとなる4つの方法

  1. 寝るときに靴下を履かない場合は、寝る前に足湯をしたり、湯たんぽで足を温めたりする方法がおすすめです。これなら足元の温かさを保ちつつ、自然な体温調節を妨げることなく快適に眠れます。
     
  2. 靴下を履いて寝るかどうか迷っている場合は、「一週間履く」「一週間履かない」という方法で睡眠の質を比べてみるのもよいでしょう。入眠までの時間、深い睡眠の長さ、朝起きたときのスッキリ感や快適さを記録し、自分に合うスタイルを見つけることが大切です。
     
  3. 「履くのと履かないの、両方のメリットを取り入れたい」という場合は、入眠前に靴下を履いて体が十分温まったら脱ぐという方法もあります。また、電気毛布や布団用のヒーターを利用することで、靴下なしでも足元を暖かく保つことができます。
     
  4. 足元だけ布団を軽く掛けることで、適度に温めつつ、熱がこもりすぎるのを防ぐことができます。これなら、冷えすぎを防ぎながらも、自然な体温調整ができるため、より快適な睡眠につながります。

結論として、寝るときに靴下を履くかどうかは、個人の体質や生活習慣によって異なります。

東洋医学では「人それぞれに合った方法を選ぶこと」が重要とされており、現代の科学でも、環境や年齢、健康状態に応じて調整することが推奨されています。

 

(翻訳編集 華山律)

杨景端
王佳宜