人を見下す態度と自尊感情、少数派への非寛容が動かした選挙結果
昨年の東京都知事選と兵庫県知事選の結果を読み解くため、ウェブ調査を実施した立教大学教授の木村忠正さんは、マスコミを「日本社会における既得権益の代表」とみなす強い批判的意見が選挙結果に大きく影響したと語る。それはさらに、「被害者ビジネス」「公金チューチュー」といったネット上の攻撃的な言葉とつながっているという。その理路について、後編でさらに深掘りする。
「ネット世論」研究者・木村忠正さんインタビュー【後編】
あの二つの知事選の結果には、「人を見下す態度」や「自分の属する集団に服従して裏切り者への制裁を求める傾向」といった心理が深くかかわっているーー。さらにディープな分析へと潜っていきます。
――昨年の二つの知事選を動かした「マスコミ既得権益」批判の背後には、「仮想型有能感」、そして「自尊感情」と「他者軽視」という心理がかかわっていたと前編で述べられました。それは、どういう意味ですか?
この関係は複雑で、詳細な議論は拙著(近刊の『ネット世論の構造』)を読んでいただきたいのですが、私の解釈を簡単にお話しします。1990年代以降の「失われた30年」のあいだ、日本社会の少子化が進展する中で子どもへの投資に積極的な世帯が相対的に増え、高学歴で先進情報技術に適応力が高いデジタルネイティブ世代が積み重なっています。
80年代前後生まれ以降は、バブル崩壊後の就職氷河期によって非正規雇用が拡大したロストジェネレーションも含んでいる。そんな人たちが、実質賃金が横ばいを続けるなかで上の世代や既得権益層に対する不満を高め、他者を見下す態度と全能型の自尊感情を強めているのだと私は解釈しています。
調査結果では、それが石丸氏や安野貴博氏(都知事選で得票数5位の15万4638票)を支持する20~40代に特に表れていると考えられる。そして、この他者軽視と全能型自尊感情が「非マイノリティポリティクス」という社会心理とも結びついていると私は分析しています。
外国人、生活保護受給者、ベビーカーを押す母親への非寛容
――改めて、非マイノリティポリティクスとは何でしょうか?
自分たちはマジョリティとし…
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- 【視点】
「非マイノリティポリティクス」と「仮想型有能感」!! この言葉で、2000年台の公務員バッシングや12年からの生活保護バッシング、その後の貧困バッシングや子連れヘイト、障害者・高齢者ヘイト、はたまた昨今のクルド人ヘイトなどいろいろなことが
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