伊藤詩織さんの監督映画、映像許諾「抜け落ちた」と謝罪 一部修正へ

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編集委員・北野隆一
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 性被害を実名で訴えたジャーナリスト伊藤詩織さんが監督したドキュメンタリー映画に、映像や音声が許諾なく使われたと指摘された問題で、伊藤さんが20日、声明を発表。「承諾が抜け落ちた方々に心よりおわびします」と謝罪した。必要な修正を行い、「個人が特定できないよう対処する」としている。

 映画「Black Box Diaries」は米アカデミー賞のドキュメンタリー部門ノミネート5作品に選ばれたが、国内での配給は決まっていない。

 伊藤さんは、望まない性行為をされたとして元民放記者を準強姦(ごうかん)容疑で告訴したが、不起訴に。民事訴訟では「同意がない性行為」と認定され、元記者に賠償を命じた判決が確定した。

 映画については、民事訴訟の代理人だった西広陽子弁護士らが、「裁判以外で使わない」という約束でホテル側が民事訴訟の証拠として裁判所に提出した防犯カメラ映像や、警察官が内々に、元記者の逮捕が取りやめになった経緯など捜査の進捗(しんちょく)状況を伊藤さんに説明する電話の録音などを無断で使用したと指摘していた。

 西広さんは20日、東京都内の日本外国特派員協会で記者会見した。防犯カメラ映像については、使う場合は承諾を得るよう求め、伊藤さん側も対応するとしていたが、承諾を得ないまま使われていたという。また、自身との通話の無断録音の使用は昨年7月の映画の上映会で初めて知ったといい、「8年半もの間、彼女を必死に守ってきたのに、ズタズタにされた気持ちだった。説明責任を果たし、ルールやモラルを守ってほしい」と話した。

 西広さんの代理人の佃克彦弁護士は、それ以外にも「承諾なく映像が使われているという訴えが複数来た」として、問題ある場面の削除などを求めた。

 伊藤さんも20日に同協会で会見し、修正版を上映する予定だったが、「体調不良」を理由に直前に中止され、書面で声明を発表した。防犯カメラ映像については、「ホテルの承諾は得られていないが、外装、内装、タクシーの形などを変えて使用した。さまざまな批判があって当然だが、公益性を重視し、映画で使うと決めた。性加害の実態を伝えるため、どうしても必要だった」と説明。ほかの映像や音声などで本人への確認などが抜け落ちたことについては謝罪し、「今後の海外での上映についても、差し替えなどできる限り対応する」としている。

 西広さんとの通話音声については、代理人弁護士が「ミスで事前の確認が抜け落ちた。その部分は削除した」と文書でコメントした。

 映画をめぐっては、東京新聞

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この記事を書いた人
北野隆一
編集委員
専門・関心分野
北朝鮮拉致問題、人権・差別、ハンセン病、水俣病、皇室、現代史
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    仲岡しゅん
    (弁護士)
    2025年2月20日21時57分 投稿
    【視点】

    この件について、性暴力被害者の救済や人権問題に取り組んできた人たち同士、つまり本来なら決裂する必要性のないはずの人たちが決裂していく様子を目の当たりにし、何ともいたたまれない思いを抱えている。 私は当の作品を観ることができていないので、元

    …続きを読む
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    小熊英二
    (歴史社会学者)
    2025年2月21日9時54分 投稿
    【視点】

    映像の使用許諾を得ないで映画を製作したということに驚く。通常では考えにくいことである。 伊藤氏一人では映画は作れない。製作陣はいた。そのなかに、注意喚起する人がいなかったのか。あるいは、あえてそういう人を交えずに製作したのだろうか。またあ

    …続きを読む