がんの免疫療法「新たな抗加齢療法になる可能性」 老化細胞除減らす

瀬川茂子
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 加齢とともにさまざまな病気とかかわる「老化細胞」が増える。東京大の中西真教授らのグループは、がんの免疫療法と同じ方法で、老化細胞が蓄積したマウスの肝臓からこの細胞を取り除き、肝機能を改善させることができたと英科学誌ネイチャーに発表した。

 老化細胞はDNAが傷つくなどで、増えなくなった細胞だ。炎症を起こす物質を周辺にまき散らすため、蓄積すると、糖尿病やがん、動脈硬化などさまざまな病気の引き金になるとされる。そのため老化細胞を除く研究が進んでいる。

 一方で、正常な免疫が働いていれば、老化細胞の目印のようなものが認識されて排除される。がん細胞が免疫で除かれるのと同じ仕組みだ。

 グループが老化細胞を詳しく調べたところ、一部に、免疫にブレーキをかける分子が発現していることを見つけた。がん細胞が免疫を逃れる武器に使っているのと同じ分子だった。この分子が働いている老化細胞は、炎症を起こす物質をたくさんまき散らしていることもわかった。

 一方で、この分子は、免疫のブレーキを解除し、様々ながんの治療に使われる「免疫チェックポイント阻害剤」のターゲットでもある。そのため、チームは免疫チェックポイント阻害剤で、炎症を起こす老化細胞を除くことができるはずだと推定した、

 年をとったマウスで使ってみると、実際に老化細胞を減らすことに成功。さらに、老化細胞が蓄積している非アルコール性脂肪肝炎のマウスで、免疫チェックポイント阻害剤を与えると、老化細胞が除かれ、脂肪が付いたり、肝臓が硬くなったりすることが抑えられ、肝臓の機能が改善されたという。

 中西教授は「新たな抗加齢療法になる可能性がある」と話している。

 論文はサイト(https://doi.org/10.1038/s41586-022-05388-4別ウインドウで開きます)で読める。

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この記事を書いた人
瀬川茂子
科学みらい部|大阪駐在
専門・関心分野
生命科学、災害、科学全般