ある日、一匹の犬が、干し草でいっぱいの*「かいばおけ」の中でぐっすり眠っていました。 そのころ、畑仕事でとても疲れ、お腹をすかせた牛たちが、ごはんを求めてやってきました。 そして、犬は牛たちに起こされました。
しかし、犬は牛たちを「かいばおけ」に近づけませんでした。犬は「かいばおけ」の中に自分の大好きな肉や骨が入っているかのように、うなり声を上げて牛たちをこわがらせました。まるでその干し草がすべて自分のものだと思っているようでした。
牛たちは犬を見て、いやな気持ちを持ちました。
「なんてわがままな犬なんだ!」と一頭が言いました。「犬は干し草を食べることができないのに。私たちはお腹がすいているのに、近づくのを許さないなんて!」
そこへ農業をしているおじさんが入ってきました。おじさんは犬の様子を見て、優しくけれどもしっかりと犬を*「うまや」の外に連れ出しました。
このお話から、私たちが学べることは、
『自分が使わないものでも、ほかの人が使うのをじゃましない』
だから、「自分に必要ないものは、必要な人にゆずる心」 をもつことが大切です。
このお話を思い出して、「やさしく思いやりのある心」 を大切にしてくださいね!
~せつめい~
*1 「かいばおけ」とは、牛や馬などの動物にえさを入れる木製の容器のことです。
*2 「うまや」は馬の家です。ここで馬はねたり、ごはんを食べます。
この物語は『イソップ物語』(1919年)から抜粋されたものです。
イソップ(紀元前620年頃–紀元前564年頃)は、ギリシャの物語作家であり、「イソップ寓話」として知られる多くの寓話を残した人物です。彼の物語はその道徳的価値を通じて、長い間、私たちの文化や文明に影響を与えてきました。これらの話は、子どもたちの教育や道徳的な人格形成に貢献しただけでなく、普遍的な魅力を持ち、大人たちがその中にある美徳や警告に耳を傾けたりすることで、自己反省にも繋がっています。
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