最近、中国でインフルエンザの流行が発生し、米国のウイルス学専門家で、元米陸軍研究所のウイルス実験室主任を務めた林曉旭博士は、新唐人テレビの「健康1+1」という番組に出演し、インフルエンザウイルスの種類やその感染状況について詳しく解説しました。また、A型インフルエンザに分類される鳥インフルエンザウイルスの脅威を過小評価しないよう、視聴者に注意を呼びかけています。
A型インフルエンザの異常な高発生
中国では冬季に呼吸器系の疾患が増加しており、原因となるウイルスには、インフルエンザウイルス、呼吸器融合ウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ライノウイルス、そしてCOVID-19ウイルスなどがあります。中国共産党(中共)当局は、今年報告されたインフルエンザ症例の99%がA型で、そのうちH1N1型が主流であるとしています。
中国本土のソーシャルメディア「小紅書」では、不完全な統計によると、3週間の間に10例以上のネットユーザーが、家庭内で子供がインフルエンザに感染した後に急性壊死性脳症を発症したことを報告しています。これらの症例では、発症から死亡までの時間が非常に短く、わずか1~2日で命を落としたケースもありました。
林曉旭氏は、2023年の「神経学フロンティア」誌に掲載された、温州医科大学附属第二病院による後ろ向き研究について言及しました。この研究では、2020~23年の25例の小児急性壊死性脳症の症例を分析しています。結果として、42%の症例がCOVID-19ウイルスによるものであり、同じく42%の症例がA型インフルエンザに関連していることが分かりました。しかし、この研究では、A型インフルエンザに関連する症例が通常のA型インフルエンザによるものなのか、または同じA型インフルエンザに分類される鳥インフルエンザによるものなのかは、明確に区別されていませんでした。
林曉旭氏は、急性壊死性脳症は通常のA型インフルエンザ(H1N1)では比較的まれな合併症であり、高病原性の鳥インフルエンザがこのような重篤な症状を引き起こす可能性が高いと指摘しています。
中国本土の防疫作業員が「エポックタイムズ」に明かしたところによると、彼が接触したH5N1型鳥インフルエンザの症例はすでに100例を超えているとのことです。彼は、H5N1が将来的に非常に大きな脅威となるウイルス株になると考えています。
現在、中共当局のデータは不透明であり、当局が公衆に十分な情報を提供していないため、林曉旭氏は、人々が防御意識を高め、流行の潜在的なリスクに対して警戒することが非常に重要だと考えています。
通常のA型インフルエンザと鳥インフルエンザの区別
通常のA型インフルエンザにはH1N1とH3N2の2つのウイルス株があり、感染後の主な症状には、発熱、寒気、咳、のどの痛み、下痢、嘔吐、めまい、頭痛、脱力感、筋肉痛などがあります。
鳥インフルエンザウイルスがヒトに感染した場合、特に高病原性の鳥インフルエンザウイルスは、しばしばより深刻な症状を引き起こします。これには高熱、結膜炎、呼吸困難が含まれ、肺炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)などを引き起こす可能性があります。脳炎も一般的な症状で、ウイルスが脳に侵入すると、頭痛、めまい、バランスの悪さ、さらには意識の混濁などの症状を引き起こす可能性があります。特に子供や免疫系の弱い人々への影響が大きく、生命を脅かす可能性があります。
人々はどのように防御すべきか
●冬季は特に保温に注意し、できるだけ呼吸器感染を避けるようにしましょう。
●市場での生きた家禽との接触をできるだけ避けましょう。
●子供は重点的に保護する対象です。子供が通常のインフルエンザ症状よりも重度の高熱、呼吸困難、意識混濁などの症状を示した場合は、速やかに医療機関を受診してください。
●一般的に使用されるオセルタミビルに加えて、バロキサビルのような異なるウイルスタンパク質を標的とする薬物も準備する必要があります。これは、一部の鳥インフルエンザウイルスがすでにオセルタミビルに対する耐性を示しているためです。
鳥インフルエンザのヒトへの感染リスク
林曉旭氏は、鳥インフルエンザウイルスの遺伝子が大規模な変異を起こす可能性があり、その病原性と感染力を予測することが困難であると述べています。一部の鳥インフルエンザウイルスの表面にあるタンパク質は、ヒトの呼吸器表面の受容体と結合することができ、感染を引き起こす可能性があります。高病原性鳥インフルエンザウイルスに感染した場合、ヒトの死亡率は比較的高くなります。
中国は過去に何度も異なる鳥インフルエンザウイルス株の発生を経験しており、H5N1、H5N6、H7N9、H3N8、H9N2、H10N3、H2N2などが含まれます。鳥インフルエンザウイルスはまだヒトからヒトへの持続的な伝播を実現していませんが、その変異傾向は科学界から大きな注目を集めています。
さらに、中共の研究者たちは、鳥インフルエンザウイルスに対して高リスクの機能獲得研究を続けています。1月6日、中国農業科学院長春獣医研究所の研究報告が「越境および新興疾患」(Transboundary and Emerging Diseases)誌に掲載されました。この研究の責任著者である趙宗正氏は、軍の背景を持っており、吉林農業大学動物医学院に所属する一方で、軍事科学院軍事医学研究院軍事獣医研究所でも勤務しています。
研究者たちは、家禽から再構成されたH5N6型鳥インフルエンザウイルスを分離しました。このウイルスは、鳥類および人間の受容体と結合することができ、病原性と伝播性が非常に強いものでした。実験では、このウイルスに感染したマウスが全て1週間以内に死亡しました。さらに、このウイルスは直接接触だけでなく、エアロゾル(空気中の微粒子)を通じても伝播することができ、今後、人間の健康に対してさらに大きな脅威をもたらす可能性があります。
林曉旭氏は、鳥インフルエンザが過去にヒト集団で持続的に伝播することが困難だった主な理由は、ウイルスのエアロゾルによる伝播能力が限られていたためだと述べています。新しいウイルス変異株がこの障壁を突破した場合、ヒト集団でより急速に伝播するリスクが高まる可能性があります。
今回のインフルエンザ流行に何か異常はあるのか?
中国の実際の感染データを得ることは難しいですが、林曉旭氏は、当局が実施している一部の措置から、今回のインフルエンザの流行が通常とは異なることがうかがえると観察しています。
まず、一部の地域で生きた家禽の売買に制限を設けています。上海市政府は2025年から3年間、生きた家禽の取引を一時停止すると発表しました。広東省江門市新会区政府は、2025年から5年間、特定の地域で生きた家禽の取引を禁止する通知を発表しました。林曉旭氏は、この現象が非常に異常であり、政府部門の観点からすれば、状況が特に深刻でない限り、このような措置を取る必要はないと考えています。
さらに、中国本土の当局は、過去のインフルエンザシーズンよりも、発症後48時間以内の「ゴールデンタイム」での治療を強調しています。林曉旭氏は、これが現在のインフルエンザ流行の深刻さが通常のインフルエンザを超えている可能性を示唆していると述べています。
アメリカの鳥インフルエンザの現状
昨年以来、アメリカの多くの州で養殖場の牛がH5N1ウイルスに感染する事例が報告されています。H5N1ウイルスが生乳や牛肉製品の中で生存する可能性があるとの報告があり、そのため、人々は十分に加熱してから食べるべきだとされています。
現在までに、アメリカではH5N1ウイルスによるヒト感染例が累計67件報告されており、そのうち1件が死亡しています。カリフォルニア州が最も深刻な影響を受けており、38件の感染例があります。同州はすでにウイルスの伝播リスクを減らすために、生きた家禽の展示を禁止しています。林曉旭氏は、他の州もカリフォルニア州の防疫措置に倣うべきだと呼びかけており、特に流行が上昇しているワシントン州のような地域では重要だと述べています。
さらに、林曉旭氏は、地方政府が鳥インフルエンザの検査能力を向上させ、アメリカ疾病管理予防センター(CDC)の検査にのみ依存せず、特に養殖業の流行状況に注意を払うべきだと提案しています。
免疫力を高めて流行に備える
林曉旭氏は、鳥インフルエンザウイルス株が絶えず変異しており、高病原性の鳥インフルエンザウイルスが徐々に種の障壁を越えて、ヒトへの感染の可能性が高まっていると警告しています。現在のところ、ウイルスがヒトからヒトへの感染能力を持っているという証拠はありませんが、将来的にウイルスがエアロゾル(空気中の微粒子)を通じて伝播し、高い病原性を持つ場合、ウイルスが急速にヒトに適応し、ヒト間での感染拡大が加速する可能性があり、これは深刻な結果を招く恐れがあります。
彼は、流行の展開がまだ不明確であるものの、事前の準備が非常に重要だと強調しています。特に、個人の体質や免疫力を高めることに注力し、ウイルスに対する抵抗力を強化することが大切だと述べています。
混沌とした現代においても、健康を守るための方法を心に留めておきましょう。
(翻訳編集 里見雨禾)
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