・折りたたんでも9mm以下の超薄型ボディ
・超解像ズームが楽しいハッセルブラッド監修カメラ
・フォルダブルとしては破格の大容量バッテリーを搭載
オッポ「OPPO Find N5」。グローバルモデルは2025年2月28日発売(日本発売未定)。価格は2499シンガポールドル(約28万円)
オッポがグローバルで発表したフォルダブルスマートフォン「OPPO Find N5」の実機を入手。オッポの技術力が存分に発揮された超薄型ボディは閉じた状態でも厚みは9mm以下、フォルダブルスマートフォンの使い方を変えるインパクトだった。
まず、製品の概要を説明しよう。オッポは2021年に初のフォルダブルスマートフォン「OPPO Find N」を投入、今回の検証機「OPPO Find N5」は2025年モデルとして、中国本土版とグローバル版が2月下旬から発売されている。なお、日本での発売は予定されていないようだ。
折りたたみのインナーディスプレイは8.12インチで2480×2248表示に対応する。背面に備わるカバーディスプレイは6.62インチで2616×1140表示対応だ。いずれも120Hzのリフレッシュレートと最高240Hzのタッチサンプリングレート、HDR10やDolby Visonに対応している。
背面の様子。カバーディスプレイは、広げた状態では点灯しない
着信音、バイブ、サイレントの切り替えを行う「アラートスライダー」
サイズは、高さが160.87mm、閉じた状態の横幅は74.42mmで厚さは8.93mm。開いた状態だと横幅は146.58mmで厚さは4.21mmとなる。重量は229g。驚くのはその薄さ、閉じた状態でも9mm以下で、通常のストレート型スマートフォンと大差のないほどだ。ヒンジの剛性感も申し分ない。加えて、折り目が比較的目立ちにくいのも美点だろう。なお、IPX8・IPX9の防水仕様をクリアしている。スピーカーはステレオ対応、ヘッドホン端子は搭載されない。
ディスプレイの折り目が目立ちにくい。消灯状態なら折り目の存在がわかるが、画面を点灯した状態ではまず気にならないだろう
側面から見たところ。この角度だと薄さがわかりやすいだろう。なお、ヒンジは写真の角度までなら固定できる
インナーディスプレイは正方形に近い縦横比なので、動画の視聴では表示されない部分が出てくる。しかし、電子書籍やWebページのように横幅に応じて文字が大きくなるコンテンツなら非常に見やすい。
インナーディスプレイではPC用Webページを表示する
搭載されるSoCは「Snapdragon 8 Elite」で、16GBのメモリーと512GBのストレージを組み合わせる。メモリーカードスロットは非搭載だった。
ベンチマークテストの結果。左が「GeekBench 6(CPU)」、右は「3DMark(Wild Life Extreme)」のもの
「GeekBench 6」と「3DMark」を使い、ベンチマークテストを行った。「GeekBench 6」の結果はシングルコア2831、マルチコア7914。ゲームなどで重視されるグラフィック性能を計測する「3DMark(Wild Life Extreme)」の結果は5820だった。なお、同じSoCを搭載するゲーミングスマホ「REDMAGIC 10 Pro」のスコアは、「GeekBench 6」のシングルコアが2816でマルチコアは8796、「3DMark」のWild Life Extremeのスコアは6598となっており、本機はそれより下回っている。
フォルダブルスマートフォンは一般的に、ボディ内部の空間に制約が大きく放熱がネックになりやすい。そのため、同じSoCのストレート型スマートフォンと比べてピーク性能がやや劣る傾向がある。しかし、本機の場合、体感速度やゲームにおけるフレームレートの低下を感じ取ることは困難で、差が現れるのは高負荷のゲームを長時間継続してプレイするような状況に限定される。
搭載されるメインカメラは、広角カメラと望遠カメラがそれぞれ光学式手ブレ補正機構付きの約5000万画素、超広角カメラが約800万画素という組み合わせのハッセルブラッド監修のトリプルカメラだ。なお、インナーディスプレイ用とカバーディスプレイ用のフロントカメラはそれぞれ約800万画素。合計5台のカメラを搭載している。なお、メインカメラはいずれもDolby VisionによるHDR動画の撮影に対応している。
遠くに写る富士山を超広角カメラで撮影。周辺部までの画質がよく保たれている
青空の階調表現がとても自然。かすみのかかった春の空気感もよく再現されている
3倍のズームで富士山がわかりやすくなった。解像感が高く、広角カメラや超広角カメラとトーンの統一などさすがにハイエンドらしい作り込みだ
最大の倍率で撮影を行った。超解像技術によってディテールが補完されており、高倍率のデジタルズームとは思えない情報量だ
高感度撮影でもノイズや構図四隅の画質の流れが少なく、均一な画質は維持される。いっぽう拡大すると街灯の点光源がうまく処理できていない点など、下記の標準カメラとの違いも見られる
メインカメラとなる広角カメラを使用、駅舎のライトアップ部分の階調やレンガ、屋根瓦の質感もハイレベル。これだけの撮影が誰でも簡単に行えるのはさすがだ
ズームにもかかわらず手ブレが押さえ込まれており描写のレベルも広角カメラに近いクオリティだ。夜景でも手軽にズーム撮影を楽しめる
ハイエンドスマホらしく、気軽にきれいな写真が撮影できる。ハッセルブラッドの監修のおかげだろうか、どことなく雰囲気のある写真が撮れるのも魅力だ。総じてハイレベルなカメラだが特に超解像技術を組み合わせたデジタルズームは、従来のイメージを覆す画質で、高倍率のズーム撮影を手軽に楽しめるものだろう。
フォルダブルスマートフォンは上記の放熱問題と同じように、ボディ内部のスペースが限られるため搭載できるバッテリー容量が大きくしにくい点がある。実際、「Galaxy Z Fold 6」は4400mAh、「Google Pixel 9 Pro Fold」も4650mAhしかバッテリー容量がない。いっぽう「OPPO Find N5」は、5600mAhの容量が確保されている。カタログスペックでは25時間の連続動画視聴、8.6時間のWeb会議可能となっている。検証では1日に3時間ほどのペースで使用したところ2日ほどでバッテリーを使い果たした。消費電力の多い大画面ディスプレイやハイエンドSoCを搭載していることを考えれば、まずまずの結果だろう。
なお、オッポ独自の充電規格「80W SUPERVOOC」に対応しており約50分でフル充電が可能。またワイヤレス充電としてこちらもオッポ独自の「50W AIRVOOC」も使用できる。
日本で現在発売されている横折りタイプのフォルダブルスマートフォンは、折りたたみ時の厚さが12.1mmの「Galaxy Z Fold 6」と10.5mmの「Pixel 9 Pro Fold」がある。本機はそれらと比較して圧倒的に薄い8.93mmしかない。薄さのメリットは想像以上で、本機の持ちやすさは一般的な大型スマートフォンとさほど変わらない。基本性能もきわめて高く、ハッセルブラッド監修のカメラは超広角から望遠までをきれいに撮影できる。総じてスキのない完成度の高い製品だった。
冒頭で説明したように、日本市場への投入は予定されていない。しかし、国内では高コスパのイメージが強いオッポにはこれだけの技術力があることがわかったのは収穫と言えよう。仮に競合製品より安く日本市場に投入されることがあれば、強力なイメージリーダーとなるだろう。