ひょっとして →論理
倫理とは、
1、道徳、規範のこと。「もう十分でしょ。これ以上は倫理的に許されないわ。」「倫理観のない男」
2、倫理学。善とは何か、道徳とは何かを考える学問。「倫理学の単位を落としたぞ。」
3、社会科科目の一つ。「地理と倫理で受験する。」「倫理の授業は寝る。」
3は2の入門編である。
倫理(科目)
現代社会、政治経済と並んで社会科の公民科を構成する科目の一つ。主に哲学、宗教、政治思想、道徳などを扱う学問である。ソクラテスだとかアリストテレスだとか社会契約論だとか、名前だけなら聞いたことがあるのではないだろうか。そういった哲学、思想、宗教などの学問である。
ぶっちゃけ、形而上学的で、難解でとらえどころのない科目というイメージがあるので、人気は日本史世界史などに比べるとあまりない。(2chでも日本史世界史の話題はよくあがっても地理や倫理の話で盛り上がっているのはあまり見ないだろう?)ただ、センター試験においては平均点が高く、暗記量が少なく、一部は世界史と内容がかぶっているので有利であるという話もある。あと独立した授業はなくたいてい政経現社の先生が教えてる。
「世界史でキリスト教のことは聞いたけど、じゃあキリスト教って具体的にどんな思想なの?」「功利主義?センター試験ではよくわからないままミルとベンサムって名前だけ覚えたけどどういう思想?」といった学問である。
日本の学習指導要領では、倫理・道徳の科目として小学校では「道徳」、高等学校では「倫理」を学ぶ。
倫理学(学問)
善悪の判断基準(正義)を問う学問。「人や社会がどうあるべきか、どうするべきか」という方針を論じる。
例えば医療は様々な倫理的に迷う場面に出会うし、電気から食品まで扱う工業も技術者倫理が問われる。人生で重要な問題を熟慮するときや、法的な判断・法律づくり・政策づくりで何を目指すべきかを考えるときにも関わってくる。
人は誰でもその人なりに倫理思想を学び考えて持っているが、学問的な議論を学ぶことも、自分なりの考えを育てたり、迷いを整理したり、考えを人に伝えたりする上で、使える道具の1つになるかもしれない。
倫理学は「物事に対してどうするべきか」を問う、哲学の一分野である。哲学には他に「存在するとはどういうことか」を問う存在論、「知るとはどういうことか」を問う認識論、「美しい・醜いとはどういうことか」を問う美学、「科学的とはどういうことか」を問う科学哲学など様々な分野がある。
学問として、論理的一貫性・体系的に整理することを追求していく。ただし数学や物理学などとは違い、天才が常識を無視してでも社会から孤立した真理に到達する、といった学問ではない。あくまでも歴史的・普遍的に通用している考えとつながりを持ち、その背後に横たわる基本的な考えを明確にまとめていくものである。宗教や古典思想は、論理的一貫性と体系性を求める営みではないので倫理思想だが倫理学ではない。
倫理と道徳は同じだが、世界共通の指針を決めたり動物やロボットを扱うような普遍性を求めるときは倫理、特定の文化での考え方は道徳と使い分けたりすることもある。
倫理学は英語のethicsの訳語であり西洋哲学が軸にあるが、現在は世界中の研究者が参加できるし、倫理思想を参照するときユダヤ教、仏教、諸子百家(それぞれ中東、インド、中国)が引用されたりもする。
倫理学という技術
倫理学を含む哲学は、生活上の常識という自分たちの足元を、敢えて掘ってみるような営みである。
掘り進めるうちに自分の位置や方向性を見失ったり、有害なものが出てきて痛い目にあったり、崩落が起きて自分や仲間を危険にさらしてしまうこともある。しかし大地を掘ることで、これまで上で暮らしてきた地盤の重要性がわかったり、安全上必要・不要な条件が明確になって、見落としていた危険性に気づいたり、今まで無理だった建築ができるようになったりする。
たいていは「やっぱり昔ながらの常識は正しかった」と再認識することになるが、常識の本質を理解して洗練させることで、今までよりも丈夫かつ柔軟に(強靭でしなやかに)思考できるようになる。無知なままだと、固いのに脆い、つまり融通がきかないのに問題にぶつかると簡単に崩れてしまう。それを脱するには冒険して経験を重ねて本質を掘り出すことである。学問において冒険に当たるのが、常識への挑戦である。
だから、最先端の挑戦的な議論をそのまま実生活に採用してはいけない。それは冒険であって、もしかすると未知の有害性があったり、設計に致命的な欠陥があるかもしれない。ロケットに乗る前に、その技術は十分に検証され確立しているのかを確かめるべきなのと一緒である。逆にロケット開発者は、未確立な技術のリスクを説明せずに人を乗せてはならない。倫理学における主張も同じことである。
そして倫理学を学ぶことは、そのとき力のある考えに対し色々な角度から批判・検証するやり方を身につけ、軽々しく乗らないで自分なりの舵取りを保つという、思想への免疫力をつけることにもなる。そのような力がつかないような学び方は単なる受け売り・うのみであり、つねに様々な説への反論を学ぶ姿勢が重要だろう。
例えば「1人より5人を優先するのが正義」といった素朴な功利主義はよくあるが、臓器くじやトロッコ問題、ロールズの正義論
を知っていると問題点が認識できる。功利主義はヴィーガンの反種差別
のように論争を呼ぶ独特な立場へつながることもある。
なお「対話や検討による判断」と「自分が選ぶ価値」は区別するべきである。どういう生き方をしたいかという自分個人が尊ぶ価値について、人・社会・倫理学などは「選択肢とそれに結びつくもの」を広げて見せてくれるにとどまり、価値を選ぶにはその上であくまでも自分の好みによらねばならない。ただし自分の好みも孤立したものはありえず、色々なものに影響を受けつつ一生を通じて構築されていく。そして価値は自由に選ぶものだが、価値に基づいて具体的な大小の目標を立てて行為するときは人や社会と協調していく必要がある。
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