41年前、多摩川沿いに並ぶ住宅の一軒。 横山家で最初に異変に気づいたのは、部活の合宿で地方に出かけようとしていた大学生の長女だった。 この日は日曜日。 大学で日本史を教えている一家の主の十四男さん、高校に通う次女も家にいた。 長女の話を聞いて少し気になった母・理子さんが二階から多摩川を見てみると、確かに水量が多かった。 横山さんの家は東京都狛江市の多摩川沿いに建てられていた。 ちょうど川に背を向けるように玄関があり、家の背後には、本堤防と呼ばれる高さ3メートルほどの土で出来た堤防があった。 そして、テニスコートなどが広がる河川敷を挟んで、内堤防が設けられており、その先に多摩川があった。 川沿いの家はこの、本堤防と内堤防、二つの堤防にって洪水から守られていた。 普段、多摩川は この宿河原堰で、ある程度水の流れをせき止められている。 これにより用水路に水を導き、農業用水や工業用水として利用する