ChatGPT自身に“推敲”させて精度を高める
次に試したのは、1回で出力できる文字数を多めに出し、1回で完成度の高い短編を一本書き上げる方法です。IT naviさんが提案されているシンプルなプロンプトを使うことで、o1の出力1回で、2万~2万5000文字といった出力を実現することが可能です。
ただし、概要を作成してそれらを参照するといった方法だと、拒否されたりもします。o1 Proのサービス開始直後の12月上旬は、比較的制限なく出力出来ていたのですが、12月下旬には一度の文字数の出力に制限がかかったようで、現在でも有効に出力するにはプロンプトを工夫する必要がある可能性があります。
今度はより精度の高い小説を書くためにo1 Proを使ってみました。
やはり、画像生成AIで作成したイラストを1枚読み込み、ストーリー案を考えさせます。その案を含めてプロンプトとして提案し、10章立て、各章を6000字、一度に書くようにという指定で出力させました。生成にかかったのは4分30秒で、o1の出力時の2倍以上の時間がかかりました。そして、出力されたのは約1万2000字。長文の物語の概要をプロンプトに含めて指定したので、文字数が少なく出ているのかもしれません。
物語は、「世界のバランスを保つ機械仕掛けの聖廟を守る魔法図書都市が、何らかの理由でバランスを崩し、多くのゾンビを引き寄せている崩壊の危機のなか、最後の生き残りの司書の魔法使いが隠された書物を使い秩序の復活を目指す」という短編です。
読んでみて抱いたのは「若干冗長だな」という感想でした。o1とo1 Proの出力する文章に劇的な違いを感じるほどではありません。通常の出力はo1で十分かもしれません。
そこで次は、o1 Pro自身に推敲をさせてみることにしました。ChatGPTは、すでにできあがっている文章を評価し、改善させるのが得意なことは知られていますが、それを長文でも実現できるかを試してみたのです。
総合的な評価は8.5点としてきました。
その上で、9点台のものにするにはどうすればいいかという改善点を上げさせたところ、5点の指摘がでました。
1. キャラクター描写の深化
2. ストーリー構成のさらなる緊張感とドラマ性
3. 世界観と設定のさらなる有機的な連動
4. テーマ性のさらなる突き詰め
5. 文体と表現の多彩化
それを反映させて、リライトの指示を出しました。
その結果、o1 Proによれば9点以上の評価となる物語になったというものになりました。文字数は1万9000字と若干絞られて、文体も変わり、全体的に締まった展開になっていました。特に、必ずどんでん返しをするようにと設定していましたが、その点の描写に変更が入りました。この物語では本がテーマになっているのですが、最後にこの小説そのものが、架空の歴史書であることが示されます。その結末が、元の案では、若干曖昧な描写になっていましたが、改善案では、この小説の読者にも語りかけるより直接的なものになり、叙情的な描写もあって余韻が強くなっています。
この後、第1章では状況説明とゾンビとの戦闘があるのですが、ボリュームが少ないと感じたので、その点を補足するように指示して全体の分量を増やしてみたりと、お話に微修正を加えていきました。結果、傑作とまでは言えませんが、かなり読める短編にはなったのではと思います。
短編小説の改善案。より叙情的な描写が増えている。「時計仕掛けの図書都市と炎の時読者(ときどくしゃ)」の全文1万7000字はnoteに公開中
この連載の記事
-
第98回
AI
動画生成AIの進化がすごい 「超リアル」「ローカルで動く」2つの方向に -
第97回
AI
AI法案、柔軟規制で国会審議へ 罰則なし“ソフトロー”の狙いは -
第96回
AI
AI生成の3Dデータが実用レベルに近づいてきた -
第95回
AI
月3万円で使えるOpenAIの「Deep Research」 驚異的だが、情報格差が広がる不安も感じた -
第94回
トピックス
1000円あればOpenAIレベルのAIが作れる DeepSeekで注目の「蒸留」とは -
第93回
AI
DeepSeek R1、無料で使えるAIとしては最強クラス -
第92回
AI
動画生成AI、ついにアダルトの扉が開く -
第90回
トピックス
画像生成AIで年賀状 リアルな人物も簡単に -
第89回
AI
OpenAI「Sora」残念な離陸 中国勢が飛躍する動画生成AI -
第88回
AI
1枚の画像から、歩き回れる“世界”ができる 来年のAIは「ワールドモデル」がやばい - この連載の一覧へ