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新清士の「メタバース・プレゼンス」 第91回

AIの書いた小説が普通に面白い ChatGPT「o1」驚きの文章力

2025年01月20日 07時00分更新

文● 新清士

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ChatGPT自身に“推敲”させて精度を高める

 次に試したのは、1回で出力できる文字数を多めに出し、1回で完成度の高い短編を一本書き上げる方法です。IT naviさんが提案されているシンプルなプロンプトを使うことで、o1の出力1回で、2万~2万5000文字といった出力を実現することが可能です。

 ただし、概要を作成してそれらを参照するといった方法だと、拒否されたりもします。o1 Proのサービス開始直後の12月上旬は、比較的制限なく出力出来ていたのですが、12月下旬には一度の文字数の出力に制限がかかったようで、現在でも有効に出力するにはプロンプトを工夫する必要がある可能性があります。

o1 Proによる短編小説『時計仕掛けの図書都市と炎の時読者(ときどくしゃ)』のイメージアート(midjouneryで作成)

 今度はより精度の高い小説を書くためにo1 Proを使ってみました。

 やはり、画像生成AIで作成したイラストを1枚読み込み、ストーリー案を考えさせます。その案を含めてプロンプトとして提案し、10章立て、各章を6000字、一度に書くようにという指定で出力させました。生成にかかったのは4分30秒で、o1の出力時の2倍以上の時間がかかりました。そして、出力されたのは約1万2000字。長文の物語の概要をプロンプトに含めて指定したので、文字数が少なく出ているのかもしれません。

 物語は、「世界のバランスを保つ機械仕掛けの聖廟を守る魔法図書都市が、何らかの理由でバランスを崩し、多くのゾンビを引き寄せている崩壊の危機のなか、最後の生き残りの司書の魔法使いが隠された書物を使い秩序の復活を目指す」という短編です。

 読んでみて抱いたのは「若干冗長だな」という感想でした。o1とo1 Proの出力する文章に劇的な違いを感じるほどではありません。通常の出力はo1で十分かもしれません。

 そこで次は、o1 Pro自身に推敲をさせてみることにしました。ChatGPTは、すでにできあがっている文章を評価し、改善させるのが得意なことは知られていますが、それを長文でも実現できるかを試してみたのです。

 総合的な評価は8.5点としてきました。

o1 Proによる短編への評価

 その上で、9点台のものにするにはどうすればいいかという改善点を上げさせたところ、5点の指摘がでました。

1. キャラクター描写の深化

2. ストーリー構成のさらなる緊張感とドラマ性

3. 世界観と設定のさらなる有機的な連動

4. テーマ性のさらなる突き詰め

5. 文体と表現の多彩化

 それを反映させて、リライトの指示を出しました。

o1 Proに改善案を執筆させた後、それをさらにレビューさせた結果

 その結果、o1 Proによれば9点以上の評価となる物語になったというものになりました。文字数は1万9000字と若干絞られて、文体も変わり、全体的に締まった展開になっていました。特に、必ずどんでん返しをするようにと設定していましたが、その点の描写に変更が入りました。この物語では本がテーマになっているのですが、最後にこの小説そのものが、架空の歴史書であることが示されます。その結末が、元の案では、若干曖昧な描写になっていましたが、改善案では、この小説の読者にも語りかけるより直接的なものになり、叙情的な描写もあって余韻が強くなっています。

 この後、第1章では状況説明とゾンビとの戦闘があるのですが、ボリュームが少ないと感じたので、その点を補足するように指示して全体の分量を増やしてみたりと、お話に微修正を加えていきました。結果、傑作とまでは言えませんが、かなり読める短編にはなったのではと思います。

短編小説のオリジナル

短編小説の改善案。より叙情的な描写が増えている。「時計仕掛けの図書都市と炎の時読者(ときどくしゃ)」の全文1万7000字はnoteに公開中

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