いま生成AIが話題になっていますが、AI技術の一つである「プロシージャル生成」の考えも重要です。プロシージャルというのは数式や関数にもとづき3Dコンテンツを生成する手法で、「手続き型」とも言われます。自動的にデータを作り出すという側面から、生成AIとプロシージャル生成は混同されることがありますが、実はまったく違う背景を持つ技術です。Epic Gamesが新たにゲームエンジン「Unreal Engine 5.2」に搭載したプロシージャルコンテンツ生成機能(PCG)は驚くべきものでした。3月のGDCで発表されていたデモマップ「Electric Dream」が6月21日に公開されています。今回はこのデモマップを使って技術を紹介しながら、生成AIとの違いを見ていきます。
お待たせしました!
— アンリアルエンジン (@UnrealEngineJP) June 20, 2023
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最初は“置く”、次は“描く”、そして“自動生成”へ
まず、過去のゲームエンジン技術ではどうやって3Dコンテンツを作成していったのかというところからお話します。
たとえば「森を作りたいなあ」と思ったとき、2000年代初頭くらいはUnrealEngine上でマップを開いて、好きな木のモデルを配置していました。1本ずつ木のモデルを置いていって、サイズを変えて配置していくものでした。
下のアセットから配置したい木を選択し、それを画面内にドラックアンドドロップすることで、木を配置できる。サイズや角度を変えることで同じ木でもメリハリをつけられる。画面はUE5.2。当時のUIとはまったく違うので、あくまでもイメージ
その後、2014年のUnreal Engine 4世代から「フォリッジ(直訳すると「木の葉」)」機能が入りました。「1本ずつ木を置いていくのは面倒だから“木が出るペン”で描いてしまおう」といった機能。配置する木や草や石を選択して、何パーセントの確率で生成するかを指定しておくと、お絵描きソフトのブラシのように3Dマップ上に森を“描けて”しまうわけです。これもプロシージャルの一種です。
オープンワールドタイプのゲームが一般化すると、こういうした機能でベースを作り、ゲームの進行に合わせて登場するコンテンツを削ったり、追加したりというやり方で調整していくのが当たり前になりました。
地形も同じように、ブラシのようにして台地を盛り上げたり、川を作ったりと、色々なことができるようになりました。プロシージャルはまずは静的なデータを作成するためにどんどん取り込まれるようになりました。かつては自然物という複雑な世界をリアルタイムなゲーム世界で表現するのは大変だったのですが、むしろ現在では簡単になっています。もちろんこれらの背景には、ゲーム機にしても開発用のPCにしても、基本的な性能向上が続いたことで、容易に実現するようになったという面が大きいわけですが。
今回のUE 5.2で追加されたPCGは、ゲームエンジンレベルでプロシージャルのリアルタイム生成を組み込む仕組み。あらかじめコードを書いて設定することが必要ですが、パラメーターを変えるだけで、木を足したり減らしたり、地形を変更したりということがリアルタイムにできてしまいます。毎回、同じ構成要素を持ちながら違う構造のマップに行くといったことができるようになるのです。
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