50代独身男性、手を繋ぐのがやっとという高校時代を経て、人並みの恋愛を覚えた大学時代を送る。
転勤、転居、転職、慌ただしい日々の中で婚期を逃しこの年に至る。
40代最終盤あたりから徐々に性欲は衰え、孔子はそんなつもりで言ったんじゃないと思うが、女性に対して惑うことない立派な紳士にようやくなれたと思っていた。
昨年の秋に仕事の打ち上げで行ったキャバクラで知り合ったA子、スレンダーな身体とコロコロと笑う姿が印象的だった彼女とは、三度目に会った日にアフターに誘われ、そのまま身体を重ねた。
そんなA子とバレンタイン(には少し早いが)ということで先週温泉地に行ってみた。
お酒の勢いもあった前回とは異なりコップ一杯程度のお酒しか入ってないし歌舞伎町の夜に比べて絶対的に時刻が早い。
二度果てた後の私にしな垂れかかり更なる奮起を促すA子。
その巧みさに引き起こされ再度夜の闇に堕ちていく。
翌日は普通に観光し、帰りの高速道路を降りた後、目の前のラブホテルに車を滑り込ませた。
「昨日、あんなにしたのに まだするの」
コロコロとした笑い顔が印象的だったはずなのに、その笑みが蠱惑的に思えた。
相性なんていう互恵関係ではなく、一方的に欲を掻き立てられ、導かれ、溶けていく。
A子の横に座って華やかな空間とお酒を平常心で楽しめるだろうか。
今日も仕事で、明日は出張の前乗りで大阪移動、平日も忙しく、A子と距離を取れることにやや安堵している。
ただ、ふとした瞬間にあの夜を思い出し、脳が溶けるような感覚になる。
老いらくの恋とも少し違うが、同様に退廃的な終わりしか想像できない。
さて昼食を作ろう。