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カナダ 自由党新党首にカーニー氏 米国との貿易摩擦・環境政策で舵取りへ

2025/03/10
更新: 2025/03/10

元カナダ中央銀行総裁のマーク・カーニー氏が自由党党首選で勝利し、次期カナダ首相に就任することが決まった。現職のジャスティン・トルドー首相との移行期間を経て、正式に首相に就任する予定だ。

カーニー氏は、元閣僚2人と元自由党議員を破り、圧倒的な支持を獲得。選挙戦では、対立候補同士の直接的な対立はほとんど見られず、主な論点は、トランプ米大統領と保守党のポワリエーヴル党首への批判に集中した。

カーニー氏は、自由党の閣僚や党員から最多の支持を受け、資金調達でも対立候補を大きく上回った。

トルドー首相は、今年1月、辞任の意向を表明。これに先立ち、党首選で大差の2位となったクリスティア・フリーランド氏が昨年12月に閣僚を辞任し、トルドー氏への退任圧力が高まっていた。

政治のアウトサイダー

カーニー氏は、国政選挙に出馬した経験がないまま、首相に就任するという異例のケースとなる。彼自身も「政治のアウトサイダー」としての立場を強調しており、これまで政治家として活動したことはなかった。

また、英国とアイルランドの市民権を持つ初のカナダ首相となる。カーニー氏は今年2月末、「すでに両国の市民権放棄の手続きを開始した」と述べた。

中央銀行総裁から国際金融界へ

カーニー氏は、教師の息子としてノースウエスト準州フォートスミスに生まれ、エドモントンで育った。
ハーバード大学で経済学の学士号(1988年)、オックスフォード大学で経済学の修士号(1993年)と博士号(1995年)を取得し、民間企業でキャリアをスタートさせた後、公務員となり、カナダ銀行の総裁(2007~2013年)に就任。その後、イングランド銀行総裁(2013~2020年)を務めた。

イングランド銀行を退任後は、民間企業の取締役や幹部を務めるとともに、気候変動対策や「ネットゼロ・エミッション(温室効果ガス排出実質ゼロ)」の推進に積極的に関与してきた。

これまでに、ブルックフィールド・アセット・マネジメント、Stripe、PIMCOといった金融企業の役員を歴任。また、ブルームバーグ・フィランソロピー、世界経済フォーラム(WEF)、国連気候変動対策・金融プログラムにも関与してきた。

カーニー氏は、今年1月に自由党党首選への立候補を正式表明する前に、これらの役職をすべて辞任したと述べている。しかし、保守党は、彼がブルックフィールド社の本社をカナダから米国へ移転させた際に経営陣の一員だったとして批判。カーニー氏は、当初「移転は自分が役職を離れた後に行われた」と述べたが、その後、「発言をもっと正確にすべきだった」と釈明した。

環境政策とカーボン税

カーニー氏は、気候変動対策を重視し、脱炭素社会の実現を目指す方針を掲げている。2021年のCOP26気候変動会議では、ネットゼロを推進するための国際金融連盟「グラスゴー金融同盟(GFANZ)」を共同設立した。

しかし、昨年11月のトランプ氏再選の可能性が高まると、米大手銀行が次々と同連盟を離脱し、今年に入ってカナダの主要銀行も脱退した。

カーニー氏は、ネットゼロの方針を維持する一方で、不評だった消費者向けのカーボン税を廃止し、代わりに奨励金制度を導入する考えを示している。また、その負担を大企業に移す方針だ。

「今のカナダ国民に負担を強いる形にはすべきではない」と述べた。

政策方針

カーニー氏は、2020年のコロナの経済対策に関し、非公式にトルドー政権を助言した。
同氏は、政府支出の削減と、経済成長を促す場合のみ新たな借入を行う方針を示している。また、中間層向けの減税や国際貿易の障壁撤廃も掲げる。

住宅政策では、新技術の活用による建設の加速、民間資本の活用、規制緩和を進める方針を示している。

文化面では、「アメリカでは『ウォーク(woke)文化』への対立が激化しているが、カナダは引き続き多様性を尊重する」と強調した。

対米政策では、アメリカの関税措置に対して「同額の報復関税」で対抗する方針を示し、国内投資と労働者支援を強化する考えを強調した。また、カナダの貿易相手国を、多様化する必要性も訴えている。

モントリオールを拠点とするエポックタイムズ記者。Twitter: @NChartierET
カナダ大紀元の記者。