数字で見る気候変動と健康リスク 「みどりの医師」が知らせたいこと
気候変動の話をしよう⑪ 総合診療医 横田啓さん
気候変動の問題に対し、ヘルスケアの面からアプローチする取り組みが日本でも広がりつつあります。その活動を続ける一般社団法人「みどりのドクターズ」メンバーで医師の横田啓さん(41)に気候変動と健康リスク、医療分野でできることについて聞きました。
気候変動への危機感を共有し、多くの人たちのアクションにつなげていく。そのためのコミュニケーションのあり方について、様々な立場の方から、意見を聞くシリーズです。
――横田さんが医療、健康面から気候変動を考えるようになったきっかけは?
私は、自治医科大学を卒業して、へき地医療と総合医療を専門にする医師です。気候変動の問題について興味・関心はありましたが、冷房や暖房をできるだけ控えるといった程度でした。何かしなければとは思いつつ、目の前の患者さんに向き合うことしかできていませんでした。
気候変動と医療がつながることを認識したのは2022年春。総合診療に関わる医師、看護師、薬剤師などで構成される日本プライマリ・ケア連合学会で、「気候変動と医療」という勉強会に初めて参加したことでした。
気候変動により熱中症などのリスクが増え、健康に大きな影響があること。
気温上昇につながるCO2排出量でみると、医療分野からが5%ほどを占めること。
医療従事者からの情報発信は信頼してもらいやすく、情報が錯綜(さくそう)する分断の時代にあって、アドボカシーの観点からの私たちの役割と可能性があること。
そうしたことを知ったのです。
その後、この分野の先進国であるイギリスで、環境的に負荷の少ない医療をどう実践するかというオンライン研修も受けました。その後、日本でも気候危機にアクションをする医療従事者を中心とする一般社団法人を仲間と作りました。
それが22年に発足した「みどりのドクターズ」。当初は医師中心で10人弱でしたが、現在では80人ほどに増えました。薬剤師、看護師、弁護士、一般市民の人も加わっています。
――どんな活動をしていますか?
まず「伝える」こと。気候変動と命の関係について、学会や医療現場などで医療従事者を中心に講演しています。
そして、「備える」を意識しています。例えば、熱中症。救急搬送数が今後も増え続けることが予測されるなかで、熱中症の予防や啓発活動をしています。より具体的な例を挙げると、生活保護の患者を対象にした冷房費助成について、所属する岡山協立病院長名で岡山市に請願することもしました。
そして三つ目は「減らす」。産業界で温室効果ガス排出量が5番目に多いのが医療介護分野です。日本でこの分野は、削減に向けたアクションが乏しい。先進事例としてイギリスでは、医療サービスの事業者自体が温室効果ガスの排出を2040年までにゼロとすることに取り組んでいます。ヘルスケア領域では日本はまだ目標を示しておらず、先進国に倣う必要があります。
呼吸器疾患も増える
――具体的には、気候変動による環境悪化と健康リスクはどんなところに表れるのですか?
先に例に挙げた熱中症だけで…
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