「ガザに生まれたのが罪なのか」イスラエル軍迫るラファ、限界の日常

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パレスチナ自治区ガザ地区南部ラファ=ムハンマド・マンスール エルサレム=高久潤
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 パレスチナ自治区ガザ地区への侵攻を続けるイスラエル軍は、最南部ラファへの攻撃を本格化させており、地上部隊も派遣する方針だ。戦闘開始から7日で4カ月となるなか、ラファにはガザの人口230万の半数以上が避難しているとされ、民間人の犠牲の急増が懸念されている。人々はいま、どのような状況に置かれているのか。ラファ在住のムハンマド・マンスール朝日新聞通信員が報告する。

【動画】イスラエル軍が迫るラファ。人々の限界の暮らし=ムハンマド・マンスール撮影

 ラファでは、「家」に住んでいる人はもうほとんどいない。何とか探し出した破壊を免れている場所に、多くの避難民がひしめいている。

 その瞳は一様に暗い。

 ニダル・サリハさん(50)は、南部ハンユニスの自宅を追われ、ラファへ逃げてきた。厳しい寒さの中、入れる避難所は見つからなかった。しかたなく、妻とともに路上にとめられたすすけた乗用車の陰にうずくまり、風をしのいでいる。

 サリハさんは「一瞬一瞬、すべてが苦しい」と語る。

 冬の刺すような寒さが、追い打ちをかけるように降ってくる雨が、苦しい。

 仮設のトイレを探して長蛇の列に並ぶのも、疲れ果てて地面に身を横たえるたび、敷物の下の小石がゴツゴツと体中に刺さるのも、苦しい。

 「苦しみが止まらない」と言う。

 同じくハンユニス出身のイヤド・シャアルさん(45)は、目の前でイスラエル軍に自宅を打ち壊され、暮らしていた街一帯を焼かれたという。

 戦闘が始まってから4カ月。シャアルさんも子どもたちも、豆の缶詰やチーズを食べてしのいできた。汚れた水を飲み、蔓延(まんえん)する感染症におびえながら、爆撃音の恐怖に身を寄せ合って耐える。

 こうした限界の状況が、ガザではすっかり日常になってしまった。

失うものも、差し出せるものもない

 悲劇は特定の不運な誰かだけ…

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この記事を書いた人
高久潤
エルサレム支局長
専門・関心分野
グローバリゼーション、民主主義、文化、芸術
イスラエル・パレスチナ問題

イスラエル・パレスチナ問題

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