大平元首相から受け継いだ「田園」 国民民主・玉木代表の強さの秘密
「今日、私はあえて申し上げる。私は良い意味で権力が欲しい。貪欲(どんよく)に権力が欲しい」
高松市の会議場。衆院選が間近に迫った10月中旬、集まった数百人の支持者を前に、国民民主党代表の玉木雄一郎氏(52)は語気を強めた。
玉木氏は語る。国民民主は新型コロナウイルス対策の一律10万円給付などの政策を次々と提案してきた。だが、与党はそのたびに国民民主の案を鼻で笑い、いつも数カ月経ってから与党の政策として実行した――。
「私が大臣なら、あるいは総理大臣なら、6カ月かかったものを3カ月で、3カ月かかったものを1カ月でできたかもしれない。もっと言えば、失われなくて良い命が守れたかもしれない」
その中で出てきたのが、冒頭の「権力」発言だ。その意味について「自分や党のためではない。国民の命と暮らしを守る力を与えてもらいたい」と支持者に説明した。
地元では、「早く大臣に」「総理になって欲しい」という期待の声は少なくない。
「玉木雄一郎は、日本が国難にいたったときに、政治のトップリーダーとして国を救う。令和は玉木雄一郎の時代だと思っています」
衆院選期間中の集会で後援会長は言い切った。集会ではいたるところに、「日本の宝 玉木雄一郎」などと書かれた手作りの看板が並んだ。
玉木氏は2009年の衆院選香川2区に、当時の民主党から立候補し、自民党の前職に3万票あまりの差をつけて初当選。民主が政権を明け渡した12年にも、議席を死守した。この年、小選挙区で勝利した民主候補は、中四国・九州で玉木氏1人だった。
「所属政党は玉木党」
その後の2回の選挙でも自民候補相手に2万票以上の差をつけて快勝。党首として県外への応援で地元にほとんど戻らなかった今回は差を約4万票に広げて大勝した。同じ野党党首でも、約6千票差で辛勝した立憲民主党の枝野幸男氏とは対照的な結果だった。
玉木氏の選挙を支えるのは、地元での強力な支持者たち「玉木党」だ。
この言葉は、単に熱狂的な支持者というだけでなく、リベラルから保守まで「元々の支持政党を超えて玉木氏個人を応援する人の集まり」というニュアンスが含まれている。
実際、朝日新聞社が今回の衆院選投開票日に実施した出口調査では、玉木氏は自民支持層の4割、公明支持層の半数以上の支持も取り付けていた。
過去の選挙戦では、自民に籍を置く選挙区内の首長が「身分は自民党員、所属政党は玉木党」と発言し、自民県連から除名処分を受ける出来事もあった。
当初は民主党から立候補した玉木氏が、なぜ保守層からも支持されるのか。
自他ともに「大平元首相」の後継
一つは、香川出身の元首相で自民の大物だった大平正芳(1910~80)の意志を継ぐ「3代目」と自他共に認めていることが大きい。
大平は中選挙区時代の香川2…
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