川内原発差し止め訴訟判決は、火山リスクで科学的検討深めず国の主張に“お墨付き” 住民側は「反論山ほど。このままでは終われない」

2025/02/24 06:00
判決を前に鹿児島地裁に向かう原告ら=21日午後、鹿児島市山下町(税所陸郎撮影)
判決を前に鹿児島地裁に向かう原告ら=21日午後、鹿児島市山下町(税所陸郎撮影)
 阿蘇、加久藤・小林、姶良、阿多、鬼界-。

 九州電力川内原発(薩摩川内市)への影響が懸念されている五つのカルデラである。活動に変化がないか、監視の対象になっている。桜島の大噴火に伴う降灰なども加え、火山のリスク評価は運転差し止め訴訟の注目の争点だった。

 差し止めを認めなかった判決は、住民側の「マグマだまりを把握するのは困難で、カルデラ噴火に周期性はなく予知できず危険だ」といった訴えを退けた。国・九電側の「運用期間中に破局的噴火が起きる可能性は極めて低い」とする主張に“お墨付き”を与えた形になった。

 判決は火山をはじめ争点に対し、積極的に科学的・専門技術的検討を深めるというよりも、国の基準などの合理性を全体的に認めた延長線で判断を下した。「不合理とはいえない」。これが提訴から13年近くを経ての着地点。住民側で火山を担当した大毛裕貴弁護士は「結論ありき。火山学を踏まえていない最低の判決だ」と言い切る。

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 川内原発を巡っては、火山リスクに特化して住民らが国に設置許可取り消しを求めた行政訴訟が福岡高裁で係争中だ。国側は両訴訟をにらんでか、今回の判決に向けては火山を「本訴訟における主要な争点」とあえて位置付けていた。

 一方、住民側。行政訴訟の原告でもある薩摩川内市の鳥原良子さん(76)は判決に落胆しつつ、国の不合理さを追及できたとして「行訴はいい感じにいくと思う」と期待をつなぐ。もちろん、「ほかの原発裁判に影響が出るのでは」との心配は尽きない。

 判決に駆け付けた玄海原発訴訟の住民側弁護団・東島浩幸弁護士も「九電側は今回の判決を玄海訴訟に使うだろう」と懸念する。「複合災害の時は逃げ場がないといった避難計画の不備を今後も訴えていく」と気を取り直した。

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 住民側は判決を不服として控訴する方針だ。2月、国は原発回帰が鮮明なエネルギー基本計画を閣議決定するなど、脱原発を取り巻く環境は厳しさを増している。それでも、弁護団の森雅美共同代表は全国で原発訴訟が続いていることを念頭に「壁を突き破るために続ける」と、腹をくくる。

 原告3036人が47都道府県に広がる意味も大きいとする。報告集会に参加した宮崎市の原告男性(72)は「ひとたび事故が起きれば、鹿児島だけでなく日本全体に影響しかねない。控訴審を注視したい」と語る。

 「3000人の原告たちが納得できる結果ではない。このままでは終われないという気持ちにさせられた」。白鳥努弁護士は続ける。「反論したいところは山ほどある。控訴の理由書は膨大な量になるだろう」

(連載「門前払いの衝撃~川内原発停止認めず」㊦より)

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