川内原発差し止め訴訟に鹿児島地裁、九電への請求を棄却、国への求めに「設置許可の取り消しにほかならぬ」と却下 住民側「断じて容認できない」と控訴の方針

2025/02/21 22:02
「不当判決」の紙を掲げる森永明子原告団長(左)ら=21日午後3時9分、鹿児島市山下町
「不当判決」の紙を掲げる森永明子原告団長(左)ら=21日午後3時9分、鹿児島市山下町
 九州電力川内原発1、2号機(薩摩川内市)の安全性は確保されておらず、運転は人格権や生存権を侵害しているとして、住民ら約3000人が国と九電を相手に運転差し止めを求めた訴訟の判決で、鹿児島地裁(窪田俊秀裁判長)は21日、九電への請求を棄却。国に対し、運転停止させる対応を取るよう求めた主張は「設置許可の取り消しにほかならず、民事上の請求として求めることはできない」として却下した。住民側は不服として福岡高裁宮崎支部に控訴する方針。

 福島第1原発事故の翌年、2012年5月に提訴。新規制基準下で全国初となった再稼働などを挟み13年近くにわたる係争だった。

 判決は地震や火山によって放射性物質が異常な水準で放出される事故の発生について「具体的危険性があるとは認められない」と断じた。原発が確保するべき安全性については「どの程度の危険を容認するか、社会通念を基準として判断すべき」との見解を示した。主な争点となった避難計画の実効性について、放射性物質の放出事故の発生を否定して踏み込まなかった。

 住民側が過小評価と主張していた基準地震動の合理性、危険性を訴えた火山の破局的噴火のリスク評価や重大事故対策はいずれも「不合理な点があるとは認められない」と判断。「人格権が侵害される具体的危険性があるとは認められない」と結論付けた。

 判決を受け、住民側弁護団の森雅美共同代表は「原告側が危険性を立証しない限り安全だと言い切っている。断じて容認できない」と反発した。

 提訴は第12次まであり、原告は最大で47都道府県の3060人(うち鹿児島1105人)に上った。一部が取り下げ最終的に同3036人(同1100人)。

 川内原発関連の司法判断は16年4月、住民らが再稼働差し止めの仮処分を求めた即時抗告審で、福岡高裁宮崎支部が申し立てを棄却して以来。福岡高裁では火山リスクに特化して住民らが控訴した設置許可の取り消し訴訟が続いている。

■安全確保に努める(塩田康一知事の話)
 判決を踏まえ九州電力には引き続き安全を期すように、原子力規制委員会には厳格な審査などしっかりと対応するようにお願いしたい。県としては、原子力専門委員会から安全性の確認など助言を得ながら、県民の安心安全の確保に努めていく。

■市民へ情報公開を(田中良二薩摩川内市長の話)
 判決の内容について詳細に把握しておらず、司法判断に関してのコメントは控える。九州電力に対して、引き続き安全な運転管理の徹底と、市民への情報公開、
丁寧な説明をお願いしたい。

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