故郷に帰る「約束の日」まで20年 「除染土」再生利用への現在地
廃炉が続く東京電力福島第一原発から南に3キロほど。周囲の住宅は取り壊され、草木が茂る。放射線量が高く、人の姿が消えた福島県大熊町の県道沿いに、腰の高さほどの黒い石碑が立ち、「想帰郷(そうききょう) 我が帰郷日 2045年3月12日」と刻まれる。その主で、かつてここに自宅があった赤井俊治さん(68)は「国との約束だ」と話す。
隣の双葉町にもまたがる中間貯蔵施設で、原発事故で汚染された表土をはぎ取るなどした除染で出た土(除染土)を保管する。1600ヘクタールの敷地に東京ドーム11個分の土が古墳のような盛り土となって点在する。
政府は行き場を失い、県内各地で復興の妨げとなっていた土の受け入れを、原発が立地する2町と県に求めた。地元は「県外での最終処分」を条件に受け入れ、その期限は45年3月と法律で決まった。
土地の提供を求められた地権者は約2千人。赤井さんもその一人だ。家族や愛犬と暮らした100坪の土地を、売らずに貸すことを苦渋の思いで決め、家を解体した。だから、貸した土地は戻す契約で、碑には88歳でむかえる返還日を刻んだ。
土が運び込まれて10年となるが、搬出先は全くの白紙のまま。県外での最終処分の期限まで12日で20年となる中、歯車を動かそうと、地元側が一石を投じた。
「福島のゴミを持ってくるな」理解と関心深まらず
2月下旬、福島県双葉町の伊…
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