複数の人格すべてに人権認めて 別人のようになる症状への対し方

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聞き手・永田豊隆
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 子どものころの虐待などをきっかけに、ひとりの人に複数の人格が現れる解離性同一性障害(DID)。この疾患に詳しい精神科医の岡野憲一郎・京都大名誉教授は「見逃されがちだが、けっして珍しい病気ではない」と指摘します。どんな原因があり、どう治療すればよいのでしょうか。本人、そして身近な人はどう向き合えばよいのでしょうか。

 ――そもそも解離とは。

 ふつうは統合されている私たちの記憶・意識・感覚・運動などがバラバラになる状態です。パソコンに付属するキーボード、ディスプレー、スピーカーなどが勝手に動き出す状態を想像してください。ある部分だけ記憶を失う症状が典型的ですが、意識が遠のく、手足の感覚がなくなる、耳が聞こえなくなる、誰もいないのに声が聞こえる、など現れ方は多様です。

 ――解離性同一性障害(DID)とは。

 解離を起こす「解離性障害」の中で最も深刻で、かつては「多重人格障害」と呼ばれました。ひとりの人の中に複数の異なる人格が形成され、それぞれが自律的に行動を起こし、お互いの行動を記憶していないという状態が生じます。一つのパソコンにいくつもプログラムがインストールされ、交代しながら勝手に動き出すようなものです。

 人口の1%程度いるという説もあり、珍しい病気とはいえません。9割以上は女性です。

トラウマ体験 交代人格が背負う驚きや恐怖

 ――原因は何ですか。

 明確な原因は解明できていません。しかし、すべてではありませんが、長期にわたる身体的、ないしは性的虐待など幼少期の深刻なトラウマ体験が多くの方にみられ、当初から交代人格の存在がうかがわれることが注目されます。

 理解を超えた驚きや恐怖にさ…

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この記事を書いた人
永田豊隆
ネットワーク報道本部|大阪駐在
専門・関心分野
貧困問題、社会保障、精神科医療、依存症