C型肝炎の治療に貢献 ウイルス感染実験受けたチンパンジーに薬を
製薬会社や大学でC型肝炎ウイルスの医学実験に使われたチンパンジーたちがくらす施設が、熊本県宇城市にある。ここでウイルスの「持続感染」に苦しむ個体もいる。治療薬は高額で、施設はチンパンジーを救おうと現在、クラウドファンディング(CF)で購入費を募っている。
有明海を見下ろす山あいにある「京都大学野生動物研究センター熊本サンクチュアリ」。動物実験を受けたチンパンジーが余生を過ごすための国内唯一の施設だ。3棟ある飼育棟のひとつに近づくと、雄のムサシが近寄ってきて、「ブーブー」と鳴いた。注意を引きたいようだ。ムサシは、この施設内で、C型肝炎ウイルスの持続感染状態にある8頭のうちの1頭だ。
施設には現在、国内最多の47頭がいる。センターの平田聡教授によると、1970年代以降、日本や欧米各国で、肝炎の研究のために、チンパンジーにウイルスを接種して感染させるなどの実験が行われた。遺伝的にヒトに近く、マウスや他のサルでは感染しないヒトのウイルスへの感染が成立したからだという。
だが、絶滅危惧種であり、チンパンジーを実験に使うことは倫理的に不適切との観点から、2000年代に入り世界的にチンパンジーを使った医学研究はなくなった。
サンクチュアリの前身は製薬会社の飼育施設で、他の研究施設で実験動物としての役割を終えたチンパンジーも引き取ってきた。この製薬会社で実験にも関わった森裕介・特任研究員(61)は、「当時は、実験以外でチンパンジーの負担をいかに減らすかが仕事と思っていた」と話す。実験がなくなると聞いた時、心底うれしかったという。長い時間をかけてチンパンジーたちと信頼関係を築き、京大に移管された後もここに残る道を選んだ。「今は、愛情をかけたい放題です」
C型肝炎ウイルスの持続感染…
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