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インタビュー
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日本は地熱資源量が世界有数の2300万キロワットだが、この10年間で10万キロワットの増強にとどまる。数万キロワット級の大型発電所の稼働は21世紀に入って1件のみだ。国は30年度導入目標150万キロワットの実現に向け、「地熱フロンティアプロジェクト」として支援に乗り出した。 日本最大の地熱発電所は八丁原発電所(大分県九重町)で出力が11万キロワット、1号機は1977年に稼働した。国内では出力4万6199キロワットの山葵沢地熱発電所(秋田県湯沢市)が19年に運転を開始して以降、「1万5000キロワット以上(の地熱発電所)は作られていない」(日本地熱協会)。24年は熊本県小国町での4990キロワット、北海道函館市で6500キロワット、岩手県で1万4900キロワットの地熱発電所がそれぞれ運転を始めた。 東北自然エネルギー(仙台市青葉区)は日本最初の商用地熱発電で66年に運転を開始した松川地熱発電
世界初のモーターサイクル型の量産ストロングハイブリッドモデル(カワサキモータース調べ)として開発した。当社は電動化の要望を受け電気自動車(EV)モデルの「ニンジャe―1」も発売している。EVは都市部の移動ではメリットがあるものの、長距離ではまだ内燃機関が必要になってくる。今回のモデルはEVと内燃機関の良いところをとった。 2輪車のレイアウトは元々余裕があるわけではない。操縦性や軽快なハンドリングを考慮するとコンパクトにしていく必要があるが、そこにモーターやバッテリーを配置していくパッケージングに苦労した。モーターやエンジンを協調させながら制御する技術開発のほか、ヒートマネジメントなども大きな課題だった。エンジンやモーターの出力、重量のバランスを考慮し工夫しながら、サイズを通常の内燃機関と同等にすることができた。 2輪車でハイブリッドという新しいカテゴリーだが、カワサキのコンセプトである「F
車載半導体メーカーが人員削減に動き出した。背景にあるのは需要低迷により、在庫調整が長引いているためだ。電気自動車(EV)が急拡大すると車載半導体需要も伸びると見込み、各社はパワー半導体などで供給力強化を急いでいたが、EV市場の失速が大きな誤算となった。業界では車載半導体の需要回復時期が見通せず、影響がさらに長期化する懸念もある。(小林健人) ルネサスエレクトロニクスは全従業員の数%に当たる最大数百人規模の人員を削減する方針だ。2025年春に行う定期昇給も延期する方針で、実施されれば2年連続となる。同社の24年12月期連結決算は減収営業減益だった。 ある従業員は「会社からの説明は少ない」と不安を漏らす。また、2年連続の人員削減について「(人員削減を)慣例化しようとしているのではないか」と述べ、「『日本はまだ離職者が少ないが、待遇が悪ければ海外では次々に辞めている』と説明があった。嫌なら辞めれ
活性酸素種が“嫌い” 治療薬開発への応用期待 がんはなぜ転移するのか―。そんな根源的な問いに迫る研究成果が2月21日付の英科学誌ネイチャー・セル・バイオロジー電子版に掲載された。京都大学などの研究グループは、がん細胞が有害な活性酸素種から逃れるために転移の第一歩を踏み出していることを突き止めた。転移を抑える新たな治療薬の開発につながる可能性がある。(大阪・村田光矢) 日本人の死因の第1位であるがん。しかも死亡する原因の大半は、がんが最初にできたところ(原発巣)ではなく、転移したがんの影響だという。がんの転移という現象自体は広く知られているものの、なぜ転移するのかについてはよく分かっていなかった。 京大の高橋重成(のぶあき)准教授らの研究グループは過酸化水素(H2O2)などの活性酸素種に着目。腫瘍の内部は活性酸素種が蓄積しやすい環境にあると考えられているが、腫瘍内の活性酸素種を細胞レベルで直
出光興産は27日、全固体電池材料(固体電解質)の量産に向け、千葉事業所(千葉県市原市)に中間材料の「硫化リチウム=写真」の大型製造装置の建設を決定したと発表した。年産1000トンの設備を2027年6月に完成する。蓄電池換算で同3ギガワット時(ギガは10億)、電気自動車(EV)換算で同5万―6万台分の大規模なものとなる。全固体電池の実用化へ勝負に出る。 同社はトヨタ自動車と連携し、27、28年に全固体電池を搭載したEVの実用化を目指している。硫化リチウムから製造する硫化物系固体電解質も、25年度中に大型パイロット装置の建設を決定する。硫化リチウムの製造装置の総事業費は約213億円。最大71億円が助成される。出光の中本肇専務執行役員は「27、28年の実用化に全力で取り組む」と意気込みを語った。 全固体電池は現在のリチウムイオン電池に比べ、電池の長寿命化や充電時間の短縮、EVの航続距離の拡大が期
東京科学大学のザン・ズージュン特任助教、北野政明教授、細野秀雄特命教授らは、遷移金属を使わないケイ酸塩化合物をアンモニア合成触媒とすることに成功した。水素や窒素のマイナスイオン(アニオン)を反応に利用する。高価なルテニウムを用いなくても済む。単体ではルテニウム触媒に勝るが、ルテニウムと組み合わせると最高性能になった。触媒構成元素の選択肢が広がる。 ケイ酸バリウム化合物に水素や窒素のマイナスイオンを導入した混合アニオン化合物を開発した。結晶中の欠陥に電子が捕捉されており、欠陥に窒素分子が取り込まれると窒素原子と窒素原子の三重結合が切れやすくなる。三重結合の切断がアンモニア合成反応の最難関だった。 実験では混合アニオン化合物触媒は9気圧・300度Cの条件ではルテニウム触媒の10倍の活性を示すことが分かった。100時間以上安定して反応した。ルテニウムと組み合わせると、さらに100倍以上性能が向上
金沢大学の小林和樹大学院生と徳田規夫教授、産業技術総合研究所の牧野俊晴研究チーム長らは、ダイヤモンド金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)の電気抵抗を1ケタ下げることに成功した。金属酸化膜とダイヤモンド半導体層の界面を原子レベルで平坦にする。すると電子散乱などが抑えられ電流密度が12倍に向上した。ダイヤモンドパワー半導体の実現につながる。 窒素を添加したダイヤモンド半導体層の上にアルミニウム酸化物薄膜を形成する。まず高品質ダイヤモンドに凹凸を作り、横方向に結晶を成長させて原子レベルで段差のないダイヤモンド半導体表面を作る。この表面を水酸基で覆うなどの処理をしてアルミニウム酸化物薄膜を形成した。 ゲート電極などを形成してMOSFETを作ると、界面抵抗の低下でドレイン電流密度が12・5倍向上した。MOSFETとしての基本動作を確認した。チャネル部が原子レベルで平坦なデバイスは世界
米クオンティニュアム(コロラド州)と理化学研究所は、理研和光キャンパス(埼玉県和光市)にクオンティニュアム製のイオントラップ方式量子コンピューターの設置を完了させ、運用を始めた。量子ビットを物理的に移動させることが可能なユニークなアーキテクチャー(設計概念)を採用した最新機で、米国外に設置したのは初めて。「黎明(れいめい)」と命名した。 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業として、理研が2023年に発表したプロジェクト「量子・スパコン連携プラットフォームの研究開発」の一環。スーパーコンピューター「富岳」との連携が目玉となる。 同プロジェクトでは量子と古典の両コンピューターのハイブリッド化に対応するソフトウエアスタックを作り、その上でアプリケーションを開発して有効性を検証する。 ハードウエアの連携ではクオンティニュアム製以外に、米IBM製の超電導方式量子コンピューターを理
推進法の中に規制要素 日本でAI(人工知能)法の国会審議が始まる。法案作りで政府がこだわったのは罰則を盛り込んだ規制法にはしないという点だ。あくまでAIによるイノベーションや活用を促す推進法と位置付ける。そこで悪質事案を個々に国が調査し、迅速に対応する仕組みを採用する。この実行性と透明性を官民で作ることになる。AI法への意見公募(パブリックコメント)では4500件を超える声が集まった。声の中にはすぐに実行できるものが多く含まれる。民が試し、官が広げるモデルになり得る。(小寺貴之) 「世界各国が自国民の権利を守るために規制を進めているところ、日本は率先して世界に対して自国民の権利を差し出している」―。日本アニメフィルム文化連盟(NAFCA)の評価は手厳しい。内閣府AI制度研究会の中間とりまとめに意見を寄せた。この中間とりまとめをひな形に内閣府はAI新法の法案を作り、今通常国会で審議される。
中級品の拡充、普及のカギ 窓メーカー2社が高性能で環境対策を追求した木製窓の開発を強化している。YKK APは国産ヒノキの集成材を用いたトリプルガラス木製窓を2024年に発売。LIXILは国産の無垢材を使った同社初の木製窓を25年度に発売する。木材は意匠性や断熱性能が高い一方、従来のアルミニウムや樹脂の窓より高価格な点やメンテナンスの難しさが課題とされる。ボリュームゾーンとなる中級品の拡充が普及のカギを握る。(地主豊) 国土交通省が定める省エネルギー基準の断熱等性能は、新築住宅に対し「等級4」の適合が4月から義務化される。30年度には等級5となる予定で、断熱性能に対する要求が高まっている。住宅の高断熱化を背景に、窓メーカー各社は木製窓の開発を加速。環境に配慮しつつ品質を高め、顧客に新たな価値を提供する考えだ。 YKK AP、複層ガラス仕様 YKK APは木製窓を88―02年に3回投入したも
東京ガスはグリーン水素製造向けの水電解用触媒製品の開発で、希少金属のイリジウム(Ir)量を従来比5分の1以下に削減する技術にめどを付けた。現在、耐久性評価を行っている。同社はSCREENホールディングス(HD)と協力し、まず2025年秋にIr使用量を同3分の1とした製品の量産体制を整える計画。これに続き同5分の1の製品や非Ir製品の実用化を目指し、水素製造のコストを低減する。 東京ガスがSCREENHDと開発する固体高分子膜(PEM)型水電解向け「触媒層付き電解質膜(CCM)」は、電解質膜に触媒を塗布した製品。触媒を薄く塗布する技術や添加剤を使った触媒低減技術の組み合わせにより、欧州の30年目標値の3分の1のIr使用量を実現した。「PEXEM」のブランド名で事業化する。 これに新たな触媒低減技術を追加し、Ir使用量を欧州目標値の5分の1以下にする技術にめどを付けた。具体的な技術は非公表。水
TPRはカーボンナノチューブ(CNT)を添加し発電効率を高めた摩擦発電シートを開発した。シートの高誘電化・薄膜化により効率良く発電できる。自動車のエンジンやモーター、タイヤなど振動部で発生する未利用エネルギーを回収・発電できる。車載センサーの電源などでの活用を想定。環境負荷低減につながる技術として自動車メーカーなどに採用を働きかける。 摩擦発電シートは高い伸び率を持つCNTの特性を生かし、正極・負極の2種類のシート間の伸縮差による摩擦で発電する。今回、タイヤやホイールなど15―50ヘルツの高周波数域の振動エネルギーを回収しプラスマイナス50ボルト以上の電力を生成した。整流化して近距離無線通信規格「ブルートゥース」通信を可能にした。 発電シートは誘電率や面積が大きく、薄膜化するほど発電効率が高くなる。ゴム素材にCNTを配合することで厚さを約0・2ミリ―0・3ミリメートルと薄型化。高い耐久性を
空気の振動を一瞬で安定 研究され尽くしたと考えられてきた電磁バルブに革新が起きつつある。東京大学が10ミリ秒で目標流量を実現する精密流体制御技術を開発した。電磁弁を高速駆動して空気の振動を打ち消し、従来の約50分の1の時間で流量を安定させた。地味な成果だが応用は広い。半導体製造装置では原子一つ分の薄さで元素を積層し、免震装置ではわずかな振動を打ち消せると見込まれる。成熟した技術にもイノベーションの芽が眠っている。(小寺貴之) 「技術自体は奇抜な要素はないんです。たぶん、ここまで真面目にやった研究者がいなかったんだと思います」―。東大の服部光希大学院生は照れくさそうに笑う。電磁弁のソレノイド(電磁石機構)を高速駆動して流路内で発生する空気振動を打ち消す精密制御技術を開発した。ソレノイド自体は広く利用されてきた。ただ弁を高速で開閉しても、急な流れで空気が圧縮され、流路内で振動が生じてしまう。弁
トヨタ自動車は5日、中国・上海市に高級車ブランド「レクサス」の電気自動車(EV)を生産する新工場を建設すると発表した。併せて米国ノースカロライナ州で整備中の電池工場で4月に車載電池の出荷を開始すると明らかにした。自動車産業で核となる米中の2大市場で、現地ニーズに即した電動化対応を加速する。同社の一丁目一番地の戦略であり、地域のエネルギー需要に応じた車を提供する「マルチパスウェイ(全方位戦略)」の一層の強化につなげる。 上海市ではEVと電池を開発・生産する新会社を設立する。2027年以降に生産を開始する。生産能力は年約10万台で始動し段階的に拡大する。立ち上げ時点で新規に約1000人を雇用する。 これまで中国での生産は現地企業との合弁会社を設立する必要があった。今回は単独出資で対応する。中国はEVをはじめとした新エネルギー車(NEV)の比率が急拡大している。中国で企画から開発・生産まで一貫し
日本のパワー半導体メーカーに急ブレーキがかかっている。2023年は各社がシリコンや炭化ケイ素(SiC)のパワー半導体で増産投資を決めたものの、一転して24年は量産見送りなどが相次いだ。理由は電気自動車(EV)の成長鈍化に加え、中国勢の成長にある。EVで出遅れた国内自動車メーカーを主要顧客にする日本の半導体メーカーには逆風が吹く。(小林健人) 「量産時期は慎重に見極める必要があると考え、後ろ倒ししていく」。ルネサスエレクトロニクスの柴田英利社長は24年10月に開いた同年7―9月期の決算会見でパワー半導体の量産開始の先送りを表明した。ルネサスは当初25年から甲府工場(山梨県甲斐市)でシリコン、高崎工場(群馬県高崎市)でSiCのパワー半導体量産を始める計画だったが、これを見直した。現在、甲府工場は稼働しているが「試作品の生産だ」(関係者)。 25年3月期に12年ぶりの最終赤字を見込むロームはSi
東京科学大学の服部真史助教と原亨和教授らは、低温低圧で働くアンモニア合成触媒を開発した。性能は工業触媒の3倍弱。アンモニア製造のエネルギー収支は280%以上向上した。最新触媒は1200%以上増幅する見込み。民間に技術移転し、5年内にアンモニア製造を目指す。 鉄にアルミニウム水素化物を担持したヒドリド鉄触媒を開発した。従来研究の希少元素を用いる触媒は重量当たりの性能で工業鉄触媒を上回る値を出してきた。ただ容積当たりの性能では必ずしも勝らない。アンモニア合成プラントでは反応容器の大きさが生産能力を決めるため容積当たりの性能が重要になる。ヒドリド鉄触媒は3倍弱まで向上した。 ヒドリド鉄触媒は赤さびの酸化鉄にアルミニウムを溶かした硝酸水溶液をかけて乾かし、アンモニア合成条件に置くと生成される。一般に水素化物は合成が難しかったが、簡便な方法が確立して実用技術となった。 工業鉄触媒が400度Cで達成す
NTTデータグループは28日、生成人工知能(AI)が人の業務を自律的に支援・代行するAIエージェント関連事業で2027年度にグローバル全体で年間3000億円の売り上げを目指す方針を明らかにした。同日、都内で会見を開いた佐々木裕社長は「25年からAIエージェントの時代が始まる。社内の部署をAIが代替し、組織の生産性を大きく変えるだろう」と述べた。 同社は仕事の生産性を抜本的に向上させる生成AI活用のコンセプト「スマートエージェント」を掲げている。第1弾として営業領域の各種業務向けのAIエージェント「リトロンセールス」を提供中。佐々木社長は「AIエージェントを活用する際の全体設計ができるプレーヤーになりたい。低コストで最大のパフォーマンスを提供する」と競合との差別化戦略を話した。 【関連記事】 AIでコストの削減を支援する注目の企業
住友化学はアクリル樹脂(PMMA)を自動車向けに提案する活動に乗り出す。同社のアクリル樹脂は塗装レスや、傷が付きにくく耐候性が高いといった特徴がある。鉄の代替として、自動車のボディー部品での採用を目指す。リサイクル性の高さを生かし、欧州で検討されている自動車に関するリサイクルに関する規制などの実施を見越した対応を進める構えだ。 住友化学のアクリル樹脂は傷が付きにくく、衝撃を与えても割れにくくする工夫を施しているという。MMA事業部マーケティング部の山崎和広主席部員は「開発品は室温やマイナス30度Cでも割れない。剛性では、曲げに対するたわみ具合に対しても約2倍上がっている」と説明する。 アクリル樹脂は鉄では必要な塗装が要らず、二酸化炭素(CO2)排出量の削減に加え車体の軽量化にも貢献する。耐候性の高さも特徴だ。今後は自動車の骨格部品ではない、ドア周辺などの外装部品向けでの採用を狙う。 アクリ
遊星型ボールミルを用いたメカノケミカル反応による水素生成の模式図。右は水の相図(状態図)(広島大学提供) 広島大学の山本拓哉大学院生と芦田翔大学院生、齋藤健一教授らは、室温で金属粉末と水から水素を生成する技術を開発した。ボールミルの衝撃を利用して化学反応を起こし、純度99%の水素が得られた。従来は600―2000度Cの高温が必要だった。水は海水や河川水を利用できる。金属粉末がエネルギー媒体となり、既存の精錬施設が蓄エネルギーインフラとして機能する。分散型水素供給技術へ発展させる。 金属粉末と水をボールミルにかけると水素が発生する。ボールに打ち付けられる衝撃で超臨界状態の水が局所的に発生する。3000個のボールが連続的に超臨界状態を作り、高温が必要だった熱化学反応を起こす。 金属粉末は水に酸化されて水素が生じる。酸化金属はボールミルの容器のタングステンに酸素を奪われ、再び水と反応する。酸化還
東京大学の小西邦昭准教授と山田涼平特任研究員(研究当時)らはJSRと共同で、半導体露光プロセスで平面レンズを量産する手法を開発した。レジストで同心円状のパターンを作り、特定の波長の光を回折させる。平面レンズで光を1・1マイクロメートル(マイクロは100万分の1)まで集光できた。安価な光学部品の製造法として提案していく。 JSRのカラーレジストに半導体露光装置で紫外線を照射して平面レンズ用の同心円パターンを形成する。カラーレジストは特定の波長の光を吸収して遮断する。すると同心円パターンで回折が起こり、通常のレンズのように集光できる。 従来は成膜装置やエッチング装置など、複数の工程が必要だったが、露光装置だけで生産できるようになる。実験では8インチのガラス基板上に平面レンズを作製し、波長450ナノメートルと550ナノメートル、650ナノメートル(ナノは10億分の1)の集光に成功した。同心円パタ
安全に水分解、海水も利用 カーボンニュートラル(CN、温室効果ガス排出量実質ゼロ)の実現に向け、大規模な水素供給が求められている。水素の製造法は3種に大別される。福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)のように太陽電池と水電解装置を組み合わせる方式と光電気化学反応を利用する方式、水分解光触媒を用いた方式があり、競い合うように技術を開発してきた。 光触媒方式に求められるのは圧倒的なコスト競争力だ。触媒の粉末に水をかけて光を当てれば水素が発生するため、装置が単純で安価に供給できると期待されてきた。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の人工光合成プロジェクトでも「破壊的に安価なグリーン水素製造」が掲げられている。 経済産業省とNEDOは2012―21年の10年間で約150億円を投じ、人工光合成技術を育ててきた。参加した研究者の総数は約150人。信州大学の堂免一成特別特任教授らが光触
モータースポーツの現場でトヨタ自動車のモノづくりが飛躍を遂げている。2021年から取り組む水素エンジン車の各種機能はもちろん、溶接で新工法を考案・実践するなど伝統的な技術も進化させている。過酷な環境への適応と十分な安全性の確保を両立する必要があるモータースポーツの課題を解決することで、これまでにない改善が見込める。「もっといいクルマ」を実現するために「もっといいモノづくり」を追い求める。(名古屋・川口拓洋) モータースポーツにおいてドライバーの安全を守りながら、車両の剛性を高める機能を持つ部品「ロールケージ」。ジャングルジムのような見た目で、複数のパイプを組み合わせ、ボディーと車両内部をつなぐ。 このロールケージを搭載するには、熟練した溶接工が熱による歪みを考慮しながら1本1本手作業で溶接・組み合わせるため、1台当たり約2週間という非常に長いリードタイムが必要になる。ラリーやレースなどのモ
カーボンニュートラル(CN、温室効果ガス排出量実質ゼロ)の実現に向け、安価な水素の大規模供給が渇望されている。水素は燃料として使えるだけでなく、二酸化炭素(CO2)と反応させればプラスチックを製造できる。炭素を環境に排出せず、繰り返し使うことが可能だ。この水素の価格破壊を起こすと期待されるのが光触媒。粉を水にといて光を当てると水素が得られる。日本にはノーベル賞級とされる研究者がいる。(3回連載) 「正直、あと2―3年待ってほしかった。もう少しで実用レベルに到達する」―。英調査会社クラリベイトの2024年の引用栄誉賞を受賞し、堂免一成信州大学特別特任教授は苦笑いした。同賞はノーベル賞の前哨戦にも位置付けられる。水分解光触媒は実用化まであと数歩のところまできている。 光触媒研究は光の吸収波長を広げ、水の分解効率を高める。この二つを両立させる必要がある。太陽光のすべての波長を触媒が吸収できれば、
第三の磁性体「交替磁性体」が次世代メモリーの有望候補として注目されている。磁気抵抗メモリー(MRAM)に比べて応答速度や集積密度が100倍になると期待される。交替磁性体は日本で理論が提唱され、実際に室温で機能する物質が見つかった。メモリー開発にはMRAMの知見を生かせる。MRAM自体も日本がけん引してきた分野だ。実用化に向け最短距離を走る準備は整っている。負けられない戦いが始まる。(小寺貴之) 「温泉で湧いている黄色いもそもそが原料になるかもしれませんね」―。東京大学の関真一郎教授は困った顔で笑う。記者会見での1コマだ。硫化鉄が室温で読み書き可能な交替磁性体になることを実証した。鉄も硫黄も埋蔵量が多く資源リスクが小さい。マンガン・テルルなどの物質が探索されてきたが、答えはありふれた元素の組み合わせだった。 交替磁性体は物質全体の磁化はゼロにもかかわらず仮想的な磁場を持つ。硫化鉄の場合は、鉄
IT産業の歴史は半導体の技術革新と重なり、最前線では半導体プロセッサーが活躍し、世の中を変えてきた。今は生成人工知能(AI)の登場で画像処理プロセッサー(GPU)が主役に躍り出た格好だが、AIの社会実装が進む中でデータセンター(DC)からエッジ(現場)まで、さまざまな形で多様な計算処理が求められるのは必須。これを見据え、国産の次世代プロセッサーの開発も進む。にっぽん・プラスXの先駆けとなりそうだ。(編集委員・斉藤実) 生成AIは大規模言語モデル(LLM)がカギとなり、その学習には膨大な計算パワーが必要となる。そこで一躍脚光を浴びたのは並列処理に強い米エヌビディアのGPUであり、当面、GPUの需要は揺るぎない。 一方で、米グーグルの「TPU(テンソル・プロセッシング・ユニット)」など、AIに特化した専用プロセッサーが続々と登場している。GPUを含め、これらAIの専用プロセッサーが担う役割は学
東北大学が国際卓越研究大学として認められた。卓越大の公募が始まったのは2022年の12月。2年かけてようやく出発点に立った。24年度内に154億円が振り込まれ、新しい大学像を作っていく。課題は極めて高いKPI(重要業績評価指標)設定だ。無理に達成しようとすると学術を歪(ゆが)める可能性さえある。卓越大は次回公募が始まった。丁寧な検証が必要になる。 「トップ10%論文に関しては本当に頭を悩ませている。ただ基本は良い論文を書くこと。本当に研究力を高めることが王道だと考えている」―。東北大の冨永悌二総長は説明する。KPIの一つに若手研究者のトップ10%論文割合を25%に引き上げるという目標がある。トップ10%論文とは被引用数の多い上位10%の論文を指し、この数が研究力を表すと考えられてきた。 世界と同水準で研究し、自然に任せていると10%になる。だが日本は5・1%。13・0%の英国や11・6%の
国際ロボット連盟(IFR)がまとめた調査によると、2023年のロボット密度(従業員1万人当たりの導入台数)で、中国がドイツと日本を追い抜いて世界3位になった。中国は約3700万人の製造業労働人口を持つが、自動化技術への大規模投資を継続している。また23年のロボット密度の世界平均は162台で、7年前の74台と比べて2倍以上に伸長した。 中国の従業員1万人当たりの産業用ロボット台数は470台で、この4年間でロボット密度は倍増した。 世界首位は韓国で同1012台だった。韓国のロボット密度は18年以降、年平均5%のペースで上昇。電子と自動車産業が産業用ロボット需要を支えている。 2位は同770台のシンガポール。4位はドイツの同429台で、日本は同419台で5位となった。自動化投資に期待がかかる米国は10位だった。今後も製造業における自動化の進展に期待がかかる。
東海理化はバッテリー容量が現行比2倍以上となる革新的なリチウムイオン電池(LiB)の社会実装を支援する。同技術を手がける名古屋大学発のベンチャー、NU―Rei(エヌユーレイ、名古屋市千種区)に出資した。電気自動車(EV)など向けに技術供与を狙う。東海理化が開発を進める家庭用蓄電池システムにも同技術を活用して小型化し、普及を加速する。 NU―Reiと名古屋大の低温プラズマ科学研究センターが共同開発したLiBは、従来のグラファイト負極材の代わりにプラズマで生成したナノグラフェンを使用。これにより容量を向上できる。 東海理化の長尾貴史技術開発センター長は「全固体電池よりも上を行く技術」と期待する。発火リスクが低い、充電が早い、自然放電が少ないなどの特徴がある。 バッテリーメーカーへの技術供与によりロイヤルティー(使用料)を得るビジネスモデルを検討。また東海理化が開発中の蓄電池システムに使用するこ
2024年の自動車業界はコロナ禍や半導体不足が緩和し総じて好調だった23年から一転し、厳しい環境となった。要因の一つが中国市場の苦境だ。新エネルギー車(NEV)が急伸し、ガソリン車中心の日系各社の販売は低迷。事業再構築も迫られた。中国メーカーの猛威はやまず、世界市場にも影響を及ぼしている。 中国市場は政府の消費振興策や自動車各社の新車投入などにより需要は堅調だ。けん引役は電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)などのNEV。中国メーカーが伸長する中、日系メーカーは苦戦した。 マークラインズによると日系各社の1―10月の中国累計販売台数はトヨタ自動車が前年同期比9・3%減、ホンダが同31・0%減、日産自動車が同10・0%減。トヨタとホンダは9カ月連続、日産は7カ月連続で減少し低迷が続いた。 一方で比亜迪(BYD)をはじめとする中国メーカーは躍進が続く。1―10月の市場シェアは中
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