落語をテーマにした映画「みんな笑え」が3月21日、墨田区のミニシアター「Stranger(ストレンジャー)」(墨田区菊川3)で上映される。
監督は「くそガキの告白」などを手がけた鈴木太一さん。50歳の2代目落語家・斎藤太紋(野辺富三さん)が、父であり師匠でもある先代・勘造(渡辺哲さん)を自宅で介護しながら、不器用ながらも演芸の世界で生きる姿を描く。落語と漫才、親子や師弟関係、介護問題、いびつな恋愛模様が交錯する人間ドラマ。
鈴木さんは「7代目・立川談志さんの言葉『落語とは人間の業の肯定』を軸に、どんなにしょうもない人間でも生きていれば小さな光が差し込むことを描きたかった」と振り返る。同作は、そうした「業を肯定する」作品として、落語と漫才を通じた人間模様に焦点を当てる。
鈴木さん自身、落語の世界を深く知る中で、寄席の笑いが「一瞬のものではなく、長い人生の流れの中でじわじわと効いてくるもの」であることを実感したという。「普段ミニシアターにあまり足を運ばない落語ファンや演芸ファンの皆さまにミニシアターという存在を知ってほしい。普段寄席に行かない映画ファンの方に落語というものを知ってほしい」と話す。
主演の野辺さんは、蜷川幸雄さん演出の舞台などで活躍してきた俳優。同作が映画初主演となる。撮影初日の浅草演芸ホールでの落語披露シーンに苦戦したが、撮影終盤には堂々とした落語家の姿に変わっていたという。共演には、映画「凪(なぎ)の憂鬱(ゆううつ)」で高崎映画祭最優秀新進俳優賞を受賞した辻凪子さんのほか、片岡礼子さん、渡辺哲さん、今野浩喜さんらが名を連ねる。
鈴木さんにとって、墨田区は2012(平成24)年に映画監督デビューを果たした「くそガキの告白」の舞台となった場所。「映画監督の自分は墨田区で生まれたような感覚がある。時代が変わっても、人間の本質は変わらない。そんな人間の本質を描いたこの映画を、里帰りのような気持ちで墨田区の皆さまに届けたい」と話す。
上映時間は未定。入場料は一般1,800円ほか。